Cassie
カッシー
学名 | ・Acacia farnesiana Willd. ・Vachellia farnesiana Wight & Arn. |
科名 | マメ科 |
別名 | スイートアカシア、金合歓(キンゴウカン) |
原産地 | 中央アメリカ |
主産地 | 南フランス、モロッコ、エジプト |
採油部位 | 花 |
採油法 | 溶剤抽出 / Cassie abs. |
採油率 | 花からのコンクリート収率は0.5~0.7%、コンクリートからのアブソリュート収率は30~35% |
性状 | 黄色~濃い褐色、粘りけがある半固体 |
主な成分 | サリチル酸メチル、ベンジルアルコール、ファルネソール、ゲラニオール、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、イオノン、クマリン、ネロリドール、3-メチル-3-デセノール |
香り | 温かみのある複雑なフローラル ウッディ、パウダリー、スパイシー、グリーンのニュアンスがある |
揮発性 | ミドルノート |
香り強度 | 強い |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | フレッシュ感も持続性もあわせもつミドルノート |
主な 使用法 | オリエンタルやフローラルノートに厚みや広がりを出す ウッディパウダリーな香調に深みを加える |
使用量 | 基本的に、ごく少量を効果的に使う |
注意 | ─ |
カッシーの花から採れるアブソリュートは、揮発成分を約25%含む半固体の物質です。
この25%の成分が、カッシーの香りをつくっています。
残りの約75%はほとんどが脂質(ワックスなど)で、香りもありません。
カッシーの香りは、同じAcacia属のミモザとよく似ています。
カッシーのほうが甘さ控えめで、パウダリースパイシーなニュアンスがより強いのが特徴です。
カッシーとミモザは、おたがいの香りに深みを出すためにいっしょに使われることもよくあります。
香りの成り立ち
カッシーアブソリュートの主香成分は、サリチル酸メチル、ベンジルアルコール、ファルネソール、ゲラニオール。
これらの成分がカッシーのフローラルノートをつくっています。
- サリチル酸メチル
独特の薬っぽい甘さ。
フルーツタイプや歯みがきのフレーバーにも使用される成分です。- ウインターグリーンの主成分で、バーチ、イランイラン、チュベローズアブソリュートにも含まれています。
- ベンジルアルコール
甘いバルサミックフローラル。
ジャスミン系の調合にもよく使用されます。- バルサム・トルーやベンゾイン、アブソリュートではヒヤシンス、ナルシス、バイオレットリーフなどに含まれています。
- ファルネソール
フレッシュなグリーンフローラル。リリーオブザバレー様。- アンブレットシードの主成分で、ローズ、ジャスミン、イランイラン、ネロリ、パルマローザなどフローラル系精油にも含まれています。
- ゲラニオール
エレガントなローズ様フローラル。シトラスのニュアンスがあります。- パルマローザ、ゼラニウム、シトロネラ、ローズ、メリッサ、レモングラスなどに含まれています。
そのほかに少しずつ含まれる成分が、カッシーの香りに独特のニュアンスや個性を与えています。
- アニスアルデヒド
アニスやミモザ調のウッディパウダリー。- アニスやシナモン・カッシア(リーフ)に含まれている成分です。
- ベンズアルデヒド
やや薬っぽいアーモンドの香り。- アーモンド・ビターの主成分。
シナモン・カッシア(リーフ/バーク)、シナモンバーク、シスタスなどにも含まれています。
- アーモンド・ビターの主成分。
- α-およびβ-イオノン
シダーウッド様のウッディな香りで、希釈するとバイオレット様。- オスマンサス、ボロニアなどのアブソリュートにも含まれています。
- クマリン
甘いカラメル様のスパイシーパウダリー。- トンカビーンズの主成分。
シナモン・カッシア(リーフ/バーク)やナルシスアブソリュートにも含まれています。
- トンカビーンズの主成分。
- ネロリドール
グリーン、ウッディを感じるフローラル。- ニアウリ、ネロリ、カルダモン、スパイクナード、バルサム・ペルー、ハニーサックルアブソリュートなどに含まれています。
そのほかカッシー固有の成分として、3-メチル-3-デセノール、3-メチル-3-デセン酸、3-メチル-4-デセン酸などがあります。
これらはごく微量しか含まれていませんが、カッシーの香りを特徴づける重要な成分です。
相性のよい香り
- ほとんどのフローラル、ウッディ系の香りとよく調和します。
- とくにバイオレットやオリスとは香りのニュアンスに似たところがあり、よく調和します。
カッシーはこれらの香りに温かみや重厚感を与えます。 - ほかにもミモザ、オレンジフラワー、ローズ、ジャスミン、イランイランともよくあいます。
- ラベンダーが主役のブレンドに少量加えると、香りに深みが出ます。
柑橘系をいくつか加えて、軽めのコロン調にすると◎。 - サンダルウッド、パチュリ、フランキンセンスなど、ずっしりしたウッディ系の香りをあわせるとエキゾチックな雰囲気がつくれます。
- シナモンやシナモン・カッシアは、カッシーのスパイシーパウダリーな面を強調します。
- コリアンダーやカルダモンなど、フローラルなニュアンスを持つスパイスとも相性がよいです。
ブレンドテクニック
- オリエンタルやフローラル、アルデヒドなどさまざまなフレグランスタイプに使用されます。
- 香水のメインとしてスポットライトを浴びることは稀で、基本的にほかのフローラル香とあわせて少量だけを使用します。
- とくに、バイオレット-オリスノートが中心になっているブレンドによく配合され、気品のあるパウダリーフローラルな印象を効果的に引き立てます。
- カッシーはしみとおるようなフレッシュノートを持っているため、香水のトップ~ミドルにインパクトを与える目的で使用されることも多いです。
- 少し薬品っぽいツンとした香りがあるので、親しみやすい柑橘系をブレンドして香り立ちの印象を変えるとよいです。
合成香料
カッシーアブソリュートは、ミモザ、バイオレット、ジョンキルなどのフローラルやフローラルブーケの香りをつくるときに、その材料として加えられます。
ほかにも、チュベローズ、シクラメン、スイートピー、リンデンブロッサム、レセダなどの構成要素として使われることもあります。
カッシーの香りを再現した「カッシー調合香料」もつくられています。
- 一般的なカッシー調合香料は、ジャスミン、ローズ、バイオレット調にサリチル酸メチルを組みあわせた香りが基礎になっています。
- カッシー香をつくるためには、とくにバイオレットノートが重要な役割を果たします。
- カッシーの特徴を出すために、アニスやクミン調のスパイシーノート、リリーオブザバレーやライラック調のフローラルノートなどが少量加えられます。
- 天然香料で加えられる可能性があるものは、イランイラン、ネロリ、プチグレン、ガイヤックウッド、シスタス、ヘリクリサムなど。
- フレッシュ感を出すためには、ベルガモットやオレンジ・スイートの精油が加えられます。
- 保留剤には合成シベットや合成アンバーグリス、スチラックスなどが使用されます。
使用されている香水
- Apres l’Ondee/アプレロンデ(Guerlain、1906)
カッシーアブソリュートがはじめて使用された香水。
トップノートはアニス、ミドルノートはバイオレットやカーネーション、ベースノートはオリス、バニラ、ヘリオトロープなどで構成されています。
雨上がりをイメージした、甘くパウダリーな香りです。 - Farnesiana/ファルネシアナ(Caron、1947)
カッシーを主役に据えためずらしい香水。
干し草やブラックカラント、バニラ、オポポナックス、ムスクなどによって、グリーン、パウダリー、クリーミーな香調になっています。 - Bal à Versailles/バラ・ベルサイユ(Jean Desprez、1962)
300種の天然香料のみでできているという、ぜいたくの極みのような香水。
カッシー、ジャスミン、ローズなどのアブソリュートにパチュリ、サンダルウッド、フランキンセンス、バニラなど深いオリエンタルノートが配合された、中世の舞踏会をイメージさせる重厚な香り。 - Une Fleur de Cassie/ユヌフルールドカッシー(Frederic Malle、2000)
全体のほぼ4%にも及ぶ量のカッシーアブソリュートを配合した大胆で斬新な香水。
より甘くパウダリーなミモザもあわせて使用することで、カッシーの香りをより深く魅力的にしています。
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香料としての歴史と活用法
カッシーアブソリュートが使えるようになる前は、マセレーション(温浸法)やアンフルラージュ(冷浸法)によって「カッシーポマード」がつくられ、フレグランス製品に使用されていました。
芳香ポマードをつくるときには豚脂が使われましたが、代わりにオリーブオイルやアーモンドオイルを使って芳香オイルが製造されることもあったようです。
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Herb therapy ハーブセラピー
ハーブとしての歴史と伝承
- カッシーの樹皮とさやは、のど、皮膚、目のいろいろな症状に使用されてきました。
- 中国では、樹皮の煎剤を収れん、止血に利用します。
根の煎剤は、リウマチ性関節炎に用いられます。 - インドでは、水出しでつくった葉の浸剤を淋病に使います。
木からにじみ出るガムは乾燥させたあと粉末にし、下痢止めにします。
のどが痛いときは根を噛みます。 - モロッコでは昔、カッシーの花を衣類の虫よけにしていました。
- 花の浸剤は、肌を美しくしたりよい香りにしたりするための入浴剤として使われていました。
- カッシーアブソリュートは高価で稀少なためアロマテラピーで使用されることはほぼありませんが、収れん、消炎、鎮痛作用などがあります。
蚊などの虫よけにも使えます。
Cooking 料理
カッシーの花や果実のさやは、食用にされることがあります。
木からにじみ出るガムはときどき集められて、ほかの「アカシアゴム」といっしょに売られることもあります。
これは、製菓に使用されます。
いずれもあまり一般的ではなく、ガムもほかのアカシア属から良質なものがとれるため重要視されていません。
カッシーはもっぱら花の香りに価値があり、食品フレーバーとしても活用されています。
Gardening 園芸
種類 | 落葉性の小低木 |
背丈 | 3~9m |
環境 | 日あたりがよく暖かい場所、乾燥した土 |
STORY
青空に映える黄色いカッシーの花は、地中海やプロヴァンス地方ならではのイメージがありますが、カッシーはもともと中央アメリカ原産の植物です。
ヨーロッパには17世紀に輸入され、花の甘い芳香が人気になって広く栽培されるようになりました。
ビゼーのオペラ『カルメン』にも出てきます。
カルメンとドン・ホセが出会うドラマチックなシーン。
カルメンは誘惑の歌を歌い、その標的であるドン・ホセに香りの強いカッシーの花を投げつけます。
カッシーの花言葉は「秘密の恋」。
原作のメリメの小説『カルメン』では、カッシーの花を弾丸みたいに彼の眉間に投げつけたということなので、すごいですね。
カッシーは20世紀はじめまで地中海全域で栽培されていましたが、第二次世界大戦によって荒廃し、生産は減少してしまいました。
現在は、北アフリカのエジプトやモロッコ、南アフリカなどで栽培されています。
姿かたち
- ミモザに似ていますが、ミモザよりも小さい木です。
- 小さなボール型の黄色い花を咲かせます。
ミモザのように房にはならず、1個ずつ分かれてつきます。 - 葉は羽根のようなかたちをしています。
- 枝は細くて垂れ下がり、葉のつけ根に2~5cmのトゲがついています。
- 樹皮は白っぽい灰色で、ガムがにじみ出ます。
- 果実のさやはこげ茶色。中に種子が入っています。
栽培と収穫
- 世界中の熱帯・温帯地域に野生しています。
オーストラリア、ニューカレドニア、インド、アフリカ、中国南部、アンティル諸島など。 - 繊細な性質の木で、とくに霜や寒さは大の苦手。
零下4度以下になると枯れてしまいます。 - 強い風にも注意が必要。栽培地では、防風のためにまわりを壁でかこみます。
ただし通気性も大事で、木のまわりは十分に空気の流れをよくする必要があります。 - 乾燥した環境が好きで、水やりもほとんどしなくて大丈夫。
- 植えてから3年経つと、秋に花を咲かせます。
- 花の収穫期は、9月はじめ~11月末まで。
- 何本も並べて、庭の生け垣にすることもあります。
様々な用途
- ほかのアカシア属と同じようにカッシーの樹皮・さやもタンニンを多く含むため、皮なめしに利用されてきました。
- 樹皮は、黒い染料としても使用されます。
名前の由来・伝説
- フランス語の名前が「Cassie/カッシー」、英語の名前は「Sweet acacia/スイートアカシア」です。
香料のことをいうときは、カッシーのほうがよく使われます。 - 種小名の「falnesiana/ファルネシアナ」は、イタリアのローマにあるファルネーゼ庭園からつけられました。
カリブ海のドミニカ共和国からはじめて輸入されたカッシーの種は、ここで栽培されました。
近縁種・間違いやすい品種
カッシーと名前が似ている植物に「シナモン・カッシア(Cinnamomum cassia)」があります。
この植物はよく「Cassia/カッシア」とよばれるのでまぎらわしいですが、カッシーとはまったく別の植物です。
シナモンの仲間で、樹皮や葉が香料として利用されます。
フレグランス製品に用いられる「カッシー」には、2種類の品種があります。
- Acacia farnesiana
通常、「カッシー」といえばこちらを指します。
2種類を区別するために「Cassie ancienne/カッシー・アンシェンヌ(昔ながらのカッシー)」とよばれることがあります。 - Acacia cavenia
2種類を区別するために「Cassie romaine/カッシー・ロマーヌ(ローマのカッシー)」とよばれることがあります。
20世紀はじめの頃はどちらも地中海沿岸諸国で栽培されていましたが、②A. caveniaのほうは花が少なく香りの評価も劣るため、あまり香料用には使用されなくなりました。
Roman cassie/ローマンカッシー
学名 | ・Acacia cavenia Hook. & Arn. ・Vachellia caven Seigler & Ebinger |
科名 | マメ科 |
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