植物の学名に関するルール
Scientific Name
1つ1つの植物は、それぞれ固有の「学名」を持っています。
植物によっては、国や地域で名前が違ったり、通称やニックネームが数限りなくあったり、ぜんぜん似ていないのに同じ名前でよばれたりすることもあります。
そのため、なにかの植物について調べたり情報を得たいときには、一般名ではなく学名を確認することが必要です。
このページでは、学名の書き方のルールを説明します。
─ PR ─
植物の学名とは?
「学名」は、世界共通の名前です。
名前のつけ方にもキッチリとしたルールがあり、違う植物とかぶることも使う場面や状況によって変わることもありません。
とくに精油やハーブなど、原料植物を明確にすることが求められるときには、学名の確認が必須です。
自分で記載するときも、学名に関してはルールを守って正確に表記することが大事です。
独断でかってに表記を変更したり足したり抜いたりしてはいけません。
いろいろな書き方があっては学名の意味がないからです。
基本の表記
学名は基本的に「属名」+「種小名」+「命名者名」から成り立っています。
─ 例 ─
Lavandula
属名
angustifolia
種小名
Mill.
命名者
- 属名
属の名前。
属は、[種は異なるけれども基本的な構造は同じ植物]をまとめたグループ。
ラテン語の名詞で表します。
イタリック体の小文字で表記し、頭文字を大文字にします。- 同属の学名を並べて書くときは、属名を省略形にしてもよいことになっています。
(例/ Lavandula angustifolia, L.latifolia, L.stoechas)
- 同属の学名を並べて書くときは、属名を省略形にしてもよいことになっています。
- 種小名
種の名前。
種は、[同じ特徴をもつ植物]をまとめたグループ。
その特徴をラテン語の形容詞で表します。たとえば「angustifolia」は「狭い葉の」という意味です。
イタリック体の小文字で表記します。- 種小名を特定しない(できない)場合、単数なら「sp.」複数なら「spp.」と表します。
(「sp.」は「species/種」の省略形)
ローマン体の小文字で表記します。
(例/ Lavandula sp. → Lavandula属の1種)
(例/ Lavandula spp. → Lavandula属の複数種)
- 種小名を特定しない(できない)場合、単数なら「sp.」複数なら「spp.」と表します。
- 命名者
学名の命名者の名前。
省略形になっていることもあります。たとえば「Mill.」は「Miller」の略。
ローマン体で表記します。- 命名者は省いてもよいことになっていますが、同じ学名(属名+種小名)でも命名者によって異なる植物を指す場合があります。
亜種
Daucus carota subsp. sativus
亜種は、種をさらにこまかく分類したもの。
主に生育地の違いから起こった変異体で、基本種とのはっきりとした違いがあります。
種小名のあとに「subsp.」+「亜種名」と表記します。
- 「subsp.」は「subspecies/下位の種」の省略形。
さらに省略して「ssp.」と書くこともあります。
ローマン体の小文字で表記します。 - 「亜種名」は、イタリック体の小文字で表記します。
変種
Foeniculum vulgare var. dulce
変種は、種をさらにこまかく分類したもの。
自然に起こった変異体で、基本種との違いは亜種よりも小さいです。
種小名の後に「var.」+「変種名」と表記します。
- 「var.」は「varietas/変種」の省略形。
ローマン体の小文字で表記します。 - 「変種名」は、イタリック体の小文字で表記します。
品種
Mentha aquatica f. citrata
品種は、種をさらにこまかく分類したもの。
自然に起こった変異体で、基本種との違いは変種よりも小さいです。
種小名の後に「f.」+「品種名」と表記します。
- 「f.」は「forma/形・型」の省略形。
ローマン体の小文字で表記します。 - 「品種名」は、イタリック体の小文字で表記します。
栽培品種(園芸品種)
Chamaemelum nobile ‘Flore Pleno’
栽培品種(園芸品種)は、人為的につくり出した変異体です。
種小名の後に「栽培品種名」を「‘ ’」(一重引用符)で囲んで表記します。
- 「栽培品種名」は、ローマン体の大文字と小文字で表記します。
雑種
Rosa × damascena
雑種は、異なる種の交配によって生まれた植物種です。
交配した種が同属の場合、属名と種小名のあいだに「×」を表記します。
異名
Prunus amygdalus,
syn. Amygdalus communis
異なる学名を複数個もっている植物があります。
本来1植物につき1学名であるはずなのに、なぜこんなことが起こるかというと…
・分類体系の見直しがあって改名されたため、過去の名前と現在の名前が存在する。
・命名時の認識とは異なる事実が判明したため、命名しなおした。
・植物学者のAさんとBさんが、同じ植物に違う名前をつけてしまった。
などの原因が考えられます。
異名は「シノニム」ともよばれ、「synonym」または省略形の「syn.」と表記します。
- 「synonym」「syn.」は、ローマン体の小文字で表記します。
まとめ
学名に関するルールは、以上です。
「あるハーブの話をしていたら、自分と相手がまったく別の植物のことを話していた」
「欲しかった精油と違うものを買ってしまったようで、求めていた香りとまったく違う」
「タネを植えたら、知らない植物が生えてきた」
…などとならないよう、必要なときにはしっかりと学名を確認しましょう。
─ PR ─