ハーブを料理に使うには?
About cooking
香り豊かな植物は、美味しい料理のためになくてはならないものです。
「ハーブ」「スパイス」として世界中の料理に使用され、それぞれに個性的で豊かな風味を与えています。
ハーブ・スパイスは、料理をする楽しみを大きく広げてくれます。
しかしその一方で、使い慣れないと量の加減がむずかしかったり、加えるタイミングがよくわからなかったりすることもあるのではないでしょうか?
このページでは、ハーブ・スパイスを料理に使うために知っておきたい基礎知識をまとめました。
作り置きレシピも、簡単にできて常備しておくと便利なものをいくつか紹介します。
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ハーブ・スパイスとは?
「ハーブ」と「スパイス」の境界線はあいまいですが、料理用ハーブ・スパイスの区別としては、ざっくり分けると次のようになります。
- ハーブ
主に、葉を生のまま、または乾燥させたもの。
「香草」ともいう。 - スパイス
主に、根や種子、果実、つぼみ、樹皮などを乾燥させたもの。
「香辛料」ともいう。
どちらも、植物の「香りが強い部分」を使用します。
どこの部分がいちばん香りが強いかは、植物によって異なります。
ハーブ・スパイスの形状
ハーブ・スパイスは、生のまま使うもの(フレッシュ)と乾燥させて使うもの(ドライ)があります。
主に、乾燥させると風味が飛んでしまうものは、フレッシュハーブで使用します。
反対に、乾燥させたほうが風味が強まるもの・長期保存が必要なものは、ドライハーブ・スパイスとして使用します。
さらに、調理の目的にあわせて、それぞれ使いやすいようにさまざまな形に加工されます。
フレッシュハーブの形状
生の状態で使う「スパイス」もありますが、フレッシュで使うものの多くは「ハーブ」です。
フレッシュハーブは、ほとんどの場合そのままの形、もしくは食べやすい大きさにちぎって使います。
やわらかくて水分を多く含むため、ペースト状にすることもできます。
水分を多く含むということは、長期保存や作り置きの材料としてはあまり向いていません。
- ホール(フレッシュ)
原料そのままの形。収穫したままの何も手を加えていない状態。
料理の仕上げとして全体にまぜたり、トッピングに使うことが多いです。 - ペースト
原料をすりつぶしたもの。
食材に塗ったり、液状のものにまぜたりできます。
ドライハーブ・スパイスの形状
乾燥させたハーブ・スパイスは長期保存ができるため、1年中好きなときに使うことができます。
水分が抜けているため、やわらかい原料なら簡単に砕いたり粉状にしたりできます。
硬い原料をこまかくしたいときは、すり鉢などを使うか、粉砕されている市販品を利用しましょう。
- ホール(ドライ)
原料そのままの形。収穫したままの姿で乾燥させたもの。
ゆっくり穏やかに香りを出しつづけるため、長時間加熱したり漬け込んだりする、液状の料理に適しています。
または、炒め物の油に香りをうつすために使用することもあります。
調理後に取り除くものが多いです。
香りが抜けにくいため、もっとも長期保存に適しています。 - 粗挽き
原料を粗く砕いたもの。
ホールより香りが出やすく、パウダーよりは穏やかなので、使い勝手がよいです。 - パウダー
原料をこまかい粉状にしたもの。
料理に加えると瞬時に香りが出ますが、風味が強いため、ひかえめに使います。
素材にまぶしたり混ぜ込んだり、下ごしらえに使うことが多いです。
または、仕上げに振りかけることもあります。
塩や砂糖と混ぜたり、ブレンドもしやすいです。
香りが抜けやすいため、長期保存には適しません。
ハーブ・スパイスの保存方法については、「ハーブを育てるには?」のページにまとめています。
ハーブ・スパイスの風味
ハーブ・スパイスの風味でいちばん重要なのは、まぎれもなく「香り」です。
この「香り」は、原料の植物に含まれている香り成分によるもの。
ハーブ・スパイスを効果的に使いこなすためには、香り成分の特徴をよく理解しておきましょう。
ハーブ・スパイスの香り成分
香り成分には、主に3つの特徴があります。
香り成分の特徴
- 植物の細胞を壊すことで放出される
料理する前に砕いたり、すりつぶしたり、加熱したりすると効果的です。 - 揮発性のため、時間とともに失われていく
いったん空気中に放出されると、時間とともに弱くなり、消えていきます。
できるだけホールに近い(放出させない)かたちで保管し、こまかくしたり粉状にする場合は使用直前に行うのが理想です。
長時間加熱する際はフタをして、香り成分を逃がさないようにします。 - 油溶性の成分が多い
炒め油に香りをうつしたり、脂肪分の多い食材といっしょに調理すると、有効に風味を引き出せます。
フレッシュハーブの風味
同じ植物でも、フレッシュとドライでは風味が違ってきます。
これは、乾燥させるときに香り成分が変化するからです。
フレッシュハーブは、ドライハーブにはない、みずみずしいはじけるような風味があります。
この風味は、主に揮発性の高い香り成分によるものです。
香り立ちがよくインパクトがありますが、持続力はありません。
摘みたての新鮮なハーブは、料理の仕上げや食べる直前に加えることで、その鮮やかな風味を思いきり活かすことができます。
フレッシュハーブの風味
- 味よりも香りを強く感じる
- 口に入れたときにパッと香り立つような風味をもたらす
- 料理の第一印象に影響する
- 大量に使うと、青くささなどの雑味が出やすい
- 加熱による風味の変化が起こりやすい
- 長時間加熱すると風味がとんでしまうので、調理の最後のほうで加える
ドライハーブ・スパイスの風味
乾燥・保存しているハーブやスパイスは、揮発性の高い成分を失っていることが多いです。
そのため、基本的にフレッシュよりもドライのほうが香り立ちは弱くなります。
そのかわり、揮発性の高くない(香りの持続力が強い)香り成分は、凝縮されて残っています。
また、成分が変化することによって、乾燥させたほうが風味が強まるものもあります。
ドライハーブ・スパイスの香り成分は比較的熱にも強いので、時間をかけた煮込み料理やオーブン調理など、じっくりと深い味を出したい料理に向いています。
ドライハーブ・スパイスの風味
- 香りよりも味を強く感じる
- 口の中でじんわりと香りつづけるような風味をもたらす
- 料理の後味に影響する
- 雑味は出にくい
- 加熱による風味の変化が起こりにくい
- 長時間加熱するような料理に向いている
エディブルフラワー
「エディブルフラワー(edible flower)」というのは、食べられる花のこと。
色とりどりの美しい花を料理やドリンクに飾って、ドラマティックな演出をすることができます。
たとえば次のようなアイディアはいかがでしょうか??
- 製氷皿の水に入れて凍らせ、フラワーアイスキューブをつくる。
ドリンクに入れると、華やかさとほんのりした風味を与えることができます。 - 砂糖漬けにする。
花びらについた砂糖がキラキラしてきれい!
ホットドリンクに入れたり、デザートに添えたりして使います。 - サラダに散らす。
サラダのグリーンに映えて、一気に鮮やかに!
花の美しさを活かすために、ドレッシングをかけた後で散らしましょう。
ほかにも、ゼリーやアイスクリームに入れたり、バターにまぜたり、さまざまな使い方が考えられます。
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作り置きレシピ
ハーブ・スパイスを使って調味料などを作り置きしておけば、いつでも手軽にその風味を楽しめます。
作り置きに使う材料は、洗ったあとよく水気をきり、乾かしてから使いましょう。
フレッシュとドライでは、フレッシュを使ったほうが保存期間は短くなります。
保存期間は、冷暗所で保存した場合の目安です。
(原料の水分含有量などにより、大きく変わります)
── 材料について ──
レシピで使用しているガラス瓶の大きさは、500mlくらいを想定しています。
ガラス瓶に入れるハーブの量は、フレッシュなら瓶いっぱい、ドライなら瓶の1/3です。
保存容器は、使うまえに殺菌消毒をしましょう。
ビネガー
ドレッシングやソースに使ったり、炭酸水で割って飲んだりもできます。
水でうすめて、ヘアリンスにしてもよいです。
*保存期間は、3~6ヵ月。
- ガラス瓶につぶしたハーブ・スパイスを入れ、白ワインビネガー(orアップルビネガー)を注ぐ。
- フタをして、2週間置く。毎日振る。
- 濾す。
オイル
調理オイルとして使うほか、ドレッシングにしたりパンにつけたりもできます。
*保存期間は、2週間~1ヵ月。
- ガラス瓶につぶしたハーブ・スパイスを入れ、オリーブオイルを注ぐ。
- フタをして、2週間置く。毎日振る。
- 濾す。分離して下に沈んだ水分は除く。
バター
好きな形に切り分けたり、型抜きを使ってもよいです。
*保存期間は2週間。(冷凍すれば3ヵ月)
- やわらかくしたバターに、刻んだハーブやスパイスをまぜる。
- 冷やして固める。
マヨネーズ
サラダにかけたりソースの材料にしたり、通常のマヨネーズ同様に使えます。
*保存期間は、1週間。
- ボウルに卵1個、白ワインビネガー大さじ1、マスタード小さじ1を入れ、泡立てる。
- まぜながらオリーブオイル1カップを少しずつ加える。
- 刻んだハーブ・スパイスをまぜる。
ハニー
ドレッシングやドリンクに入れたり、パンに塗ったり、デザートにかけたりできます。
ワインに混ぜてもおいしいです。
*保存期間は、半年。
- ハチミツを湯せんにかけてハーブ・スパイスを混ぜ、そのまま弱火で15分温める。
- 密閉容器に入れ、1週間置く。
- 再び湯せんで溶かし、濾す。
シュガー(砂糖漬け)
クリスタリゼともいいます。
ミントなどのハーブや、エディブルフラワーなどでつくります。
デザートの飾りに使ったり、紅茶やハーブティーに入れて楽しみます。
*保存期間は、1ヵ月。乾燥剤を入れるとよいです。
- 花びらや葉に、溶いた卵白を刷毛で塗る。(裏表まんべんなく)
- グラニュー糖を全体にまぶす。
- かさならないように並べ、パリパリになるまで乾燥させる。
ハーブ・スパイスシュガー
砂糖の中にハーブ・スパイスを埋めて密閉しておけば、砂糖そのものに香りをうつすことができます。
大きなもの(ホールスパイスなど)はそのまま、小さなものはお茶パックなどに入れて砂糖の中へ。
ドライハーブ・スパイスを使用します。
砂糖全体に香りがつくように、ときどき振ってまぜましょう。
シロップ
コーディアルともいいます。
水や炭酸水でうすめて飲んだり、デザートの材料に使ったりします。
砂糖の割合を増やすと、より日持ちします。
*保存期間は、2週間~1ヵ月。
- 水と砂糖1:1を火にかけて、シロップをつくる。
- ガラス瓶につぶしたハーブ・スパイスを入れ、熱いシロップを注ぐ。
- フタをして2時間置き、濾す。
アルコール
水や炭酸水で割ったり、カクテルに使ったりできます。
ハーブ成分をしっかり抽出するために、アルコール度数の高い蒸留酒を使いましょう。
最適なのは、ハーブやスパイスの風味をじゃましないウォッカ。
*保存期間は、半年~1年。
- ガラス瓶につぶしたハーブ・スパイスを入れ、アルコールを注ぐ。
- フタをして、2週間置く。毎日振る。
- 濾す。
*「香り植物・ハーブ図鑑」の料理コーナーでは、ハーブ別に使い方のコツ、アイディアなどを紹介しています。
香り植物・ハーブ図鑑
フレーバー
フレーバーとは、加工食品やドリンクなどに風味をつけるための香料です。
食べ物以外に、歯みがきやタバコなどにも使用されています。
目的にあわせて香料を調合し、風味をつける対象に適した形状(水溶性のエッセンス、油溶性のオイル、乳化状のエマルジョン、粉末状のパウダーなど)に加工して使用します。
フレーバーとフレグランスの違いや香料の分類などは、「香料について」を参照してください。