香料について
About fragrance
「香料」は、天然香料と合成香料の2種類に分類できます。
また、その使用目的によって、フレグランスとフレーバーに区別することができます。
このページでは、香料の種類や名前、それぞれの製造方法などを、香料の全体像が把握できるように詳しく解説していきます。
また、香料をうまくブレンドするコツや手順、レシピもあわせてご紹介します。
*「香り植物・ハーブ図鑑」では、個々の植物の香りについて、使い方やブレンドのコツを紹介しています。
https://fragranceplant.com/cyclo/
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香料の安全性
天然・合成問わず、化学物質である香料は、取り扱いや使用に際して注意が必要なものもあります。
香料の安全性については、IFRA(国際香粧品香料協会)が規定している「IFRAスタンダード」を参照することができます。
IFRAスタンダード
香料素材の規制は3種類に分かれています。
①「prohibition/使用禁止」
②「restriction/使用制限(最終製品中での最大使用量の指定)」
③「specification/規格設定(純度や製法などの指定)」
[IFRA Standards Library] https://ifrafragrance.org/safe-use/library
精油の取り扱いに関しては、アロマテラピーのページを参考にしてください。
香料の種類
香料
「香料」には、天然香料と合成香料の2種類があります。
植物の香りの場合、
植物から採取した香料=天然香料です。
植物の香りを模倣してつくった香料=合成香料です。
- 天然香料
植物や動物から採取した香料。
天然香料のうち、植物から採取したものは植物性香料、動物から採取したものは動物性香料といいます。
植物性香料は、植物が生産する香気成分をさまざまな方法で抽出します。
動物性香料は、動物の分泌物などを加工したものです。 - 合成香料
人工的に製造した香料。
調合香料
天然香料や合成香料を複数ブレンドしたものは、調合香料といいます。
調合香料は、フレグランスとフレーバーの2種類に大別されます。
どちらも、製品ごとに付香しやすい形状に加工して使用します。
- フレグランス(fragrance)
香粧品香料。口に入れない香料。
・香水、化粧品、石けん、シャンプー、洗剤、芳香剤、キャンドルなどに使用されます。 - フレーバー(flavour)
食品香料。口に入れる香料。
・加工食品、洋酒、歯みがき、マウスウォッシュ、タバコ、医薬品などに使用されます。
・嗅覚だけではなく味覚の要素も重要になります。
・食品としての安全性も求められます。
香料の基礎知識
香料の製造方法
香料をどうやって製造するかは、原料の性質によって決まります。
原料によっては、高温になると香りが壊れたり変質してしまうものもありますし、特定の方法でなければ十分な量が得られないものもあります。
そのため、それぞれに適した、より多くより効率的に採油できる方法が選ばれます。
また、同じ原料でも、製造法によって得られる成分は変わってきます。
ニュアンスの異なる香り(=異なる成分構成)の香料を得るために、複数の方法で採油されることもあります。
- 圧搾法(expression)
柑橘果皮の油細胞を押しつぶして採油します。
*残留農薬が懸念されるため、オーガニック原料であることが重視されます。 - 水蒸気蒸留法(steam distillation)
原料を入れた釜に加熱した水蒸気を吹き込み、香気成分を水蒸気とともに蒸発させます。
これを冷却すると水と油に分離するため、油の部分を採取します。
*もっともメジャーな製造法で、天然香料の約90%はこの方法で得られます。 - 水蒸留法(water distillation)
原料と水をいっしょに釜に入れて沸騰させ、香気成分を水蒸気とともに蒸発させます。
これを冷却すると水と油に分離するため、油の部分を採取します。 - 溶剤抽出法(solvent extraction)
原料に有機溶剤を注いで香気成分を溶出させたあと、溶剤を除去してペースト状の物質を得ます。
*蒸留法の熱には耐えられない原料に使用されます。 - 超臨界抽出法(supercritical fluid extraction)
原料に流体(超臨界状態の二酸化炭素など)を注いで香気成分を溶出させたあと、流体は気化して目的の香気成分を回収します。
*熱を一切使わないため、実際の植物の香りにより近い高品質な精油が得られます。
*薬品を使わないため、溶剤抽出よりも安全性が高いです。
*フレーバーへの用途が多いです。 - 浸出法(percolation)
原料をアルコールに浸し、香気成分を浸出させます。 - 温浸法(maceration)
加熱した牛豚脂に花を入れて撹拌し、脂肪に香気成分を吸着させます。
*高温に耐えられる丈夫な花に用いられます。 - 冷浸法(enfleurage)
ガラス板に塗った牛豚脂の上に花を並べ、脂肪に香気成分を吸着させます。
これを成分が飽和するまで、花を取り替えながら繰り返します。
*熱で傷みやすい繊細な花にも用いることができます。
香料の名前
上記「香料の製造法」によって、それぞれ形状や性質の異なる香料が得られます。
それぞれに違う名前がついていて、区別して使用されます。
*上記「香料の製造法」の番号
- 精油(essential oil)
①②③⑤*で得たオイル。
①で得たオイルは、正確には「エッセンス(essence)」といいます。
⑤で得たオイルは、正確には「CO2エキストラクト(CO2extract)」といいます。
②③で油を採取したあとの水の部分が、「芳香蒸留水」です。 - コンクリート(concrete)
花を原料として、④で得た半固体(ワックスを含む)。
多くの場合、香料として使用するにはアブソリュートに加工する必要があります。 - アブソリュート(absolute)
④で得た半固体(=コンクリート)から、ワックスを取り除いたもの。粘稠性の液体。
コンクリートをアルコールに溶解させたあと冷却すると、アルコールに溶けないワックス(無香部分)が沈殿します。
これを濾過して取り除き、最後にアルコールを除去します。 - レジノイド(resinoid)
花以外を原料として、④で得た半固体(樹脂を含む)。
または⑥で得たアルコール溶液(=チンキ)から、アルコールを除去したもの。
主にフレグランスに用いられます。 - オレオレジン(oleoresin)
花以外を原料として、④で得た半固体(樹脂を含む)。
または⑥で得たアルコール溶液(=チンキ)から、アルコールを除去したもの。
主にフレーバーに用いられます。 - チンキ(tincture)
⑥で得たアルコール溶液。
香気成分がアルコールに溶けている状態。 - ポマード(pomade)
⑦⑧で得た脂肪。
ポマードから脂肪分を取り除いたものは、「アブソリュートフロムポマード(absolute from pomade)」といいます。
(アブソリュートへの加工方法は、コンクリートと同じ)
アブソリュートフロムポマードは、香水や革手袋の香りづけに、昔よく使用されていました。 - バルサム(balsam)
天然の樹液。これを加熱、濾過、精製などします。
アルコールに溶けるため、そのまま香料として使えます。
香料の成り立ち
ひとつひとつの香料素材(ラベンダー精油、ローズアブソリュートなど)は、多種多様の香気成分が集まった化学物質です。
どんな成分で構成されているかを知ることは、その香りの特徴や傾向を知ることになります。
たとえば、持続力のある重い香気成分がたくさん含まれていたら、その香料はベースノートの傾向が強いことがわかります。
フローラル系の香料にペッパーと同じ成分も含まれていたら、それは「ピリッとスパイシーなニュアンスを持つフローラル香」だということがわかります。
また、共通する成分を含む香料同士は、ブレンドの相性がよいことが多いです。
このように含まれている成分を分析すれば、効果的な使い方や相性のよい香りなども予想できるようになります。
構成成分は調香のヒント!
例)イランイラン精油に含まれる成分は、酢酸ベンジル、リナロール、β-カリオフィレン・・・
- 酢酸ベンジル (ジャスミン調)
→ 同じ成分を含むジャスミンをブレンドすれば、華やかなフローラル感をより強調できる! - リナロール (フレッシュ、ナチュラル)
→ イランイランの濃厚な香りをやわらげるためには、フレッシュなリナロールを共通して含むラベンダーをブレンドするのが効果的! - カリオフィレン(ウッディ)
→サンダルウッドやシダーウッドをブレンドすれば、イランイランの甘さに隠れたこのウッディなニュアンスをもっと引き出せる!
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調香の基礎知識
香料を調合(ブレンド)することを「調香」といいます。
「香りのブレンド」というと、むずかしい専門知識やセンスが必要なイメージがありますが、いくつかのコツをつかんでおけば大丈夫!
ディフューザーで香りを焚いたり、好きな香りで香水を手作りしたり。自分で香りをブレンドできるようになると、世界がぐっと広がります。
そこで、複数の香料をブレンドするときに知っておくと役に立つ基本の知識がいくつかあります。
そのなかでも特に重要なのが「揮発性」と「香り強度」。
組み合わせる香りを選ぶときに注目するのは、それぞれの香料の「揮発性」
組みあわせる香りの割合を決めるときに注目するのは、それぞれの香料の「香り強度」
何と何をブレンドする?
→「揮発性」で選ぶ
何を何滴ブレンドする?
→「香り強度」で決める
揮発性
「揮発性」とは、液体がどれだけ気化しやすいかを表したものです。
香料の場合、揮発速度が速い(気化しやすい)ほうから順に、トップノート/ミドルノート/ベースノートと3種類に分けて表します。
複数の香料をブレンドするときは、この3種類をバランスよく組みあわせます。
このバランスが悪いと、拡散性あるいは持続性が不足した香りになりやすいです。
たとえば、トップノートの香料ばかりをブレンドした場合、つけた瞬間はパッと香り立ちますが、あとに残らずすぐに消えてしまいます。
一方でベースノートの香料ばかりをブレンドすれば、空気中に香りが拡散しにくいため、香り立ちが弱く、あまり香りを感じることができません。
また、揮発速度の異なる香りを組みあわせることで「時間の経過による香りの変化を楽しめる」というメリットもあります。
この変化を計算してブレンドを考えるのも、調香の楽しみの1つ。
ちなみに、ひとつの香料素材もさまざまな揮発性の成分で構成されているため、揮発のはじまりと終わりでは香りの印象が異なります。
香り強度
香料によって、香りの強さはまったく違います。
なぜなら、含んでいる成分によって、香りの閾値(香りを感じるために必要な最少量)が違ってくるからです。
香料をブレンドするときは、この香りの強弱をふまえてそれぞれの配合量を決めます。
同じ「1滴」でも、ほかの香りをかき消してしまう強い香りもあれば、ほとんど影響を与えないような弱い香りもあります。
このような香料を1:1でブレンドしても、同量の効果を与えることにはなりません。
強い香りはひかえめに(場合によってはアルコールやキャリアオイルでうすめたものを)使わないと、何に加えても同じ香りになってしまいます。
弱い香りを主張させたいときには、ほかの香りより多めに加えることが必要です。
ほかの香りを引き立てる隠し味のような使い方をしてもよいでしょう。
*香り植物・ハーブ図鑑の「精油DATA」では、各香料の香り強度を「かなり強い」「強い」「中程度」「弱い」の4段階で表しています。
https://fragranceplant.com/cyclo/
ブレンドの構成要素
ブレンドに使用する香料の役割としては、主に以下のようなものがあります。
- 基調剤(base)
ブレンドの骨格となる香り、またはその組みあわせ。 - 調和剤(harmonizer)
違和感のある香り同士を調和させ、なじませる香り。
点で存在している香りをつなげて線にするイメージ。
香りになめらかさや幅、広がりを与えます。 - 変調剤(modifier)
基調剤と相反するような異質の香り。少量だけ使用します。
単調な香りに変化を与え、奥行きや立体感を演出します。
香りが強いものは、アルコールなどで希釈して加えるとよいです。 - 保留剤(fixative)
全体の揮散を抑え、長持ちさせるための香り。または溶剤。
市販品では、できあがった香りに最後に足します。
調香手順
- 1. 基調剤
- まずは、香りの中心となる部分をつくります。
(全部で3~4種類の単純なブレンドなら、そのうち中心となる香りを1種類決めます)
- 2. 組み立て
- 揮発性のバランスを考えて、必要な香りを足します。
それぞれの滴数は、香りの強弱によって加減します。
- 3. 調和剤・変調剤
- 全体の香りを嗅いでみて、微調整を行います。
粗くまとまっていない印象なら「なじませる香り(調和剤)」を足します。
単調で物足りない印象なら「変化を与える香り(変調剤)」を足します。
香水の濃度・基剤による分類
オーデコロン(eau de cologne)
・アルコールに香料を1~5%添加。
・シンプルな香りと、軽く爽快感のある使い心地。
・持続時間は1~2時間。
オードトワレ(eau de toilette)
・アルコールに香料を5~10%添加。
・シンプルな香りと、軽く爽快感のある使い心地。
・持続時間は3~4時間。
オードパルファム(eau de parfum)
・アルコールに香料を10~15%添加。
・香りの構成も複雑になり、変化のある多彩な香りを楽しめます。
・持続時間は約5時間。
パルファム(parfum)
・アルコールに香料を15~30%添加。
・濃厚で多面的な、芸術性の高い香り。数滴だけ使用します。
・持続時間は5~7時間。
香油/パフュームオイル(perfume oil)
・液状の油脂や溶剤に香料を1~5%添加。
・肌を保湿しながら、比較的長く香りを楽しめます。
練り香水/ソリッドパフューム(solid perfume)
・ペースト状の基剤(ビーズワックス、ワセリンなど)に香料を5~10%添加。
・手首や耳に塗ります。
粉末香水/パフュームパウダー(perfume powder)
・粉状の基剤に香料を1~3%添加。
・デオドラントのはたらきがあり、お風呂上がりにもよく使います。
香水石けん/パフュームソープ(perfume soap)
・石けん生地に香料を1.5~6%添加。
・使用時に香りを楽しみ、使用後は肌の残り香を楽しみます。
基本レシピ
調香手順に従って香料をブレンドしたら、オリジナルの香りグッズをつくってみましょう!
ここでは、便利な「アルコール希釈液」、さらに「香水」と「ポプリ」の基本レシピを紹介します。
アロマコスメやスプレーなどの基本レシピは、アロマテラピーのページを参照してください。
アルコール希釈液
強い香りの香料は、微妙なニュアンスを出したいときなどにはどうしても使いにくいですが、希釈液があると使える範囲が広がります。
また、香料のほとんどは「水に溶けにくい」という性質をもっていますが、アルコールにまぜることで水にも溶けやすくなります。
*アルコールは、80度以上のエタノールを使います。
- アルコール30mlに、精油などの香料1ml(20滴*)をまぜる。
- 数日置いてなじませる。
*1滴=0.05ml
希釈液の濃度
好きな濃度で作れます。
上記のレシピは、約3%の希釈液です。
これはそのままオーデコロンとしても使える濃度。
強い香りを使いやすくするための希釈液なら、50%濃度(アルコール:香料=1:1)が便利です。
これなら原液の1/2なので、レシピの計算もしやすいでしょう。
*アルコールをキャリアオイルに替えれば、オイルベースの香水に使える希釈液ができます。
香水
手づくり香水では、香料の濃度は、基剤に対して5~10%程度におさえます。
使用する香料の禁忌・注意事項をよく調べ、完成品は使用前に必ずパッチテストを行いましょう。
- 調香の手順に従い、香料をブレンドする。
- 基剤をまぜる。
- 冷暗所で2週間ほど寝かせ、香りをなじませる。
香水の基剤
手づくり香水をつくるなら、基剤はエタノールかキャリアオイルを使います。
- アルコール(エタノール)ベース
香りを軽くし、拡散性を高めます。
手作り香水の基剤で「アルコール」というときは、エタノールのことを指します。 - オイル(キャリアオイル)ベース
香りを重くし、持続性を高めます。
無臭で変質しにくいホホバオイルが最適です。
ポプリ
ポプリは器に入れて香りを楽しむのはもちろん、石けんなどを埋めて香りをうつすこともできます。
つくったポプリをリネンやレースの袋に詰めれば、手づくりサシェができます。
クローゼットのハンガーにかけたり、引き出しに入れたり、枕に入れたり、使い方はアイディアしだい!
ポプリの材料をまぜるときは、かならず手袋をしましょう。
- パウダー状の保留剤大さじ3と、香料6~10滴をまぜる。
- 1L容器いっぱいくらいのドライハーブに、パウダーをまぶす。
- 密閉してときどき振りながら、半年寝かせる。
ポプリの保留剤
ポプリには、パウダー状の保留剤を使用します。
定番はオリスパウダーですが、何種類かスパイスパウダーをまぜてもよいです。
使用する香料も、保留効果のあるものを必ず入れましょう。
動物性香料
天然香料のうち、動物の分泌物や結石から精製されるものを動物性香料といいます。
動物性香料は、主に4種類あります。
- ムスク(musk)
ジャコウ鹿の牡の生殖腺分泌物。 - シベット(civet)
ジャコウ猫の生殖腺分泌物。 - カストリウム(castoreum)
ビーバーの生殖腺分泌物。 - アンバーグリス(ambergris)
マッコウクジラの腸内結石。
どれもそのままでは不快臭もしくは無臭ですが、うすめたり加工したりすると芳香になります。
また、保留剤としてのはたらきもすぐれています。
ただし現在は動物保護の観点や価格の問題から、合成香料で代替されるケースがほとんどです。
合成香料
合成香料は、人工的に製造した香料のことを指します。
その製造法の違いにより、2種類に分けることができます。
- 単離香料
天然香料から、目的の単一成分を取り出したもの。 - 純合成香料
種々の化学反応によって、一から製造したもの。
合成香料は、天然の香りを再現するためにもよく用いられます。
天然の香りには、従来の方法では香気成分を得ることができないもの、できたとしても性質に問題があったり高価なために汎用できないものがあります。
これらの香りは、天然の成分構成を参考に、合成香料を組みあわせて再現します。
こうした技術の発展によって、それまで使用できなかった植物の香り、香料を採取できないフルーツ、希少な動物性香料なども合成香料で代替できるようになり、表現できる香りのバリエーションは圧倒的に広がりました。
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