Yuzu

ユズ

植物DATA
学名Citrus junos Siebold ex Tanaka
科名ミカン科
別名
原産地中国の長江上流域
主産地日本
使用部位果皮、果実
主な成分精油、フラボノイド配糖体(ナリンギン、ヘスペリジン)、カリウム、ビタミンC、クエン酸
精油DATA
採油部位果皮
採油法低温圧搾
採油率0.2%
性状黄色~橙色
主な成分d-リモネン、γ-テルピネン、リナロール、酢酸ネリル、チモール、ユズノン、(6S)-メチルオクタナール、(8S)-メチルデカナール、トランス-4,5-エポキシ-2E-デセナール
香り爽やかな苦みを持つグリーンシトラスノート
揮発性トップノート
香り強度弱め

ユズは、日本の冬を彩るシトラスフルーツ。

その爽やかでほろ苦い香りは、寒い日に身体を温める「ユズ湯」や「ユズ茶」のイメージと結びついています。

他の柑橘にはないピリっとした独特のニュアンスがあるため、ユニークな香料として数々の香水にも使用されています。

香料 | アロマテラピー | ハーブ | 料理 | 園芸

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Fragrance 香料

香りの
性質
ピリッとした苦みが爽やかなグリーンシトラス
主な
使用法
さまざまな香調のフレッシュなトップノート。
シトラスノートの変調剤。
使用量他の柑橘類と組み合わせて適量を使う。
注意光毒性あり。 / Yuzu oil expressed
酸化、変質しやすい。

ユズ精油もほかの柑橘類と同じく、低温圧搾(コールドプレス)によって精油を得ることができます。


ユズを水蒸気蒸留すると、水に溶けやすい成分(チモールやユズノンなど)が水層に溶けてしまい、油層(=精油)にはわずかしか残りません。

そのため、水蒸気蒸留のユズ精油は圧搾精油に比べて香りの鮮やかさ、鋭さ、特有の個性などが弱くなる傾向があります。

国産のユズ精油は水蒸気蒸留のものが多いですが、メリットとしては水蒸気蒸留のユズ精油には光毒性がないということがあげられます。

2個のユズのイラスト

香りの成り立ち

ほかの柑橘類と同じく、ユズ精油もd-リモネン主体(全体の60%くらい)の構成になっています。

テルペン類はd-リモネンのほかにも、γ-テルピネン、β-フェランドレン、α-ピネンなどが含まれています。

これらは軽くフレッシュなノートで他の成分の香りを持ち上げます。

  • d-リモネン
    フレッシュでみずみずしいシトラスの香り。
    柑橘やフルーツ系の香料にジューシーで爽やかな印象を与えるためにも使用されます。
    • オレンジグレープフルーツレモンマンダリンライム、柑橘系以外ではセロリシードエレミファーキャラウェイブラックペッパーなどに含まれています。
  • γ-テルピネン
    爽やかなハーバル、シトラス。
    • セイボリーアジョワンティートリーマンダリンライムなどに含まれています。

ユズのアロマティックノートやフローラルノート、ほんのりスパイシーなアンダートーンなどは、リナロール、酢酸ネリル、チモールなどが作り出しています。

  • リナロール
    ウッディ、スパイシー、シトラスのニュアンスを持つ軽やかなフレッシュフローラル。ラベンダー、ライラック様。
    • ローズウッドコリアンダーネロリラベンダープチグレンなどに含まれています。
  • 酢酸ネリル
    ラズベリーやハニーノートが感じられる甘いフレッシュフローラル。ローズ、オレンジフラワー様。
    • ヘリクリサムフェネグリークメリッサオレンジフラワーアブソリュートレモンなどに含まれています。
  • チモール
    清涼感のある、少し薬っぽいハーバルスパイシー。タイム様。
    メンズフレグランスにもよく使用されます。
    • タイムアジョワンオレガノなどに含まれています。

ユズの香りを決定づけているのは、極微量含まれているいくつかの芳香成分です。

  • ユズノン
    独特の爽やかさをもたらすとても強い香り。ユズの特徴を出すためには欠かせません。
    • スダチにも含まれています。
  • (6S)-メチルオクタナール
    フレッシュで甘さのあるグリーンシトラス。
  • (8S)-メチルデカナール
    グリーン感と苦みを感じる、フレッシュなユズの香り。
  • トランス-4,5-エポキシ-2E-デセナール
    グリーン、メタリック、金属的なニュアンスを持つ香り。ジューシーな果汁感を与えます。
    • グレープフルーツにも含まれています。

使用されている香水

  • L’Eau d’Issey Pour Homme/ロー ドゥ イッセイ プールオム(Issey Miyake、1994)
    クリーンな水を表現した透明感のあるアクアティックアコードに、爽やかなユズの香りを組み合わせたオードトワレ。
    静謐なロータス、温かいウッディノートとのコントラストも魅力的です。
  • Oyédo/オイエド(Diptyque、2000)
    江戸の町からインスピレーションを得たという香りで、ユズのピリッとした鮮やかなノートが主役です。
    はじけるシトラス、アロマティックなタイム、エレガントなフランボワーズがミックスされています。
  • Opus 1870/オーパス 1870(Penhaligon’s、2005)
    ユズと刺激的なスパイス、優雅なローズ、インセンス、サンダルウッドやシダーウッドの豊かなウッディノートが、絶妙にミックスされています。
    知的で洗練された印象を与えるメンズフレグランス。
  • Still Life/スティルライフ(Olfactive Studio、2011)
    トップノートのユズに、ピンクペッパーやブラックペッパー、スターアニスなどのスパイスが重なり、ラム酒やアンバーのベースノートへ続きます。
    人生の喜びを表現したエキゾチックでユニークなフレグランス。
  • Note de Yuzu/ノート デ ユズ(James Heeley、2017)
    日本の柚子風呂のような、元気が出るエネルギッシュなフレグランス。
    シーソルト(海塩)&シーウィード(海藻)の塩辛さ、グレープフルーツ&ベチバーの柔らかい苦みも加わった、高揚感のある明るい香りです。

その他ユズを含む香水

「L’Eau par Kenzo pour Homme/ローパ ケンゾー プールオム(Kenzo、1999)」
「Bright Crystal/ブライト クリスタル(Versace、2006)」
「Yuzu Man/ユズ マン(Caron、2011)」
「Tacit/タシット(Aesop、2015)」
「Yuzu Eau de Parfum/ユズ オーデパルファム(Acqua di Parma、2019)」
「Eau de Yuzu/オー ドゥ ユズ(Nicolai、2020)」
「Aqua Allegoria Forte Oud Yuzu/アクア アレゴリア フォルテ ウード ユズ(Guerlain、2023)」

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Aromatherapy アロマテラピー

作用鎮静、高揚、鎮痛、収れん、消化器系機能調整、消臭、防虫
適用ストレス、集中力アップ、食欲を出す、巡りを良くする、体を温める、菌対策
注意圧搾精油は光毒性あり

ユズ精油は、アロマテラピーの分野でも利用される機会が増えてきています。

水蒸気蒸留のユズ精油は光毒性がないため、より幅広く活用することができます。

ユズのイラスト

精神のために役立てる

  • 多くの柑橘精油と同じように、リラックス・リフレッシュどちらのブレンドにも使うことができます。
    • ほっとくつろげる香りにするなら、イランイランサンダルウッドをブレンド。
      または、ネロリベチバーのブレンドも◎。
    • 集中力アップの香りなら、レモンペパーミントローズマリーパインをブレンド。

身体のために役立てる

  • 巡りを良くして体を温めます。アロマバスにすれば、1年中かんたんにユズ湯を楽しめます。
    • ジンジャーブラックペッパーを足しても良いです。
    • 肩こりなどもケアするには、ローズマリーをブレンドします。
  • 消化器系の調子を整えたいときにも使えます。
    • オレンジ・スイートカモミール・ローマンコリアンダーペパーミントなどを組み合わせます。

美容のために役立てる

  • 脂性肌には、ユズの収れん作用が役立ちます。
    キュッと引き締まった生き生きとした印象の肌に。
    • ゼラニウムシダーウッドをブレンド。
  • 乾燥肌を保湿し、やわらかくキメの整った肌へと導きます。
    • ラベンダーローズ・オットーをブレンド。

その他の使い方

  • 部屋の消臭や虫よけにも役立ちます。
    • 消臭には、ユーカリジュニパーをブレンド。
    • 虫よけには、ゼラニウムレモングラスシトロネラをブレンド。
柑橘の果実がついた枝

ユズを水蒸気蒸留すると、精油と同時に芳香蒸留水も得られます。

芳香蒸留水

香り穏やかでほんのりとしたシトラスノート
主な成分リナロール、α-テルピネオール、チモール、テルピネン-4-オール、ゲラニオール
作用鎮静、鎮痙、鎮痛、抗炎症、収れん、防虫
  • ユズ芳香蒸留水の成分は、精油とはまったく異なります。
  • 精油にはd-リモネンをはじめとするテルペン類が多く含まれていますが、これらは水に溶けにくいため芳香蒸留水には含まれていません。
  • 芳香蒸留水の主成分はリナロール。
    ほかにもα-テルピネオール、チモールなどの水溶性成分が中心になります。
  • 炎症や痛みを軽くするはたらきなどが期待できます。

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Herb therapy ハーブセラピー

ハーブとしての歴史と伝承

冬至の日にユズをお風呂に浮かべる「ユズ湯」は、江戸時代から行われている日本の伝統的な習慣です。

このユズ湯には、血の巡りを良くして身体をポカポカ温める、肌をやわらかくしてひび・あかぎれを癒やす、寒い日々の健康を維持するなど、さまざまな恩恵があります。

また、果皮や果汁をお湯に入れてハチミツで甘味をつけた「ユズ茶」は、心身を温めたり喉の不調をやわらげたりするための、冬の体調管理ドリンクとして定番です。

お茶には生の果皮を削って使いますが、乾燥させたドライピールもあり、ほかのハーブとブレンドして飲むこともできます。

Cooking 料理

風味独特の苦味と爽やかな酸味
主な特徴和食の風味を引き立て、あっさりした味にメリハリを付ける
作り置きビネガー、ハニー、シロップ、アルコール

ユズは酸味が強いため生で食べることはなく、その果皮や果汁を風味づけに使う「香酸柑橘類」の1つです。

主に日本料理の薬味や調味料として、幅広く使用されています。

ほろ苦いユズのジャムやシロップも定番です。

ユズとユズシロップのイラスト

使い方のコツ

  • 果汁は、魚や鍋料理などの風味を引き立てるために使います。
    ドレッシングやポン酢に加えたり、カクテルやサワーの材料にされることもあります。
  • 果皮は、豊かな香りと苦みを与えるためのスパイスとして使います。
    うすく削って酢の物、麺類などに加えたり、乾燥果皮は七味に入れられることもあります。
  • 果皮はお茶、ジャム、お菓子作りにも使えます。
  • ユズの輪切りは、砂糖漬けやハチミツ漬けにして保存できます。
    これはそのまま食べたり、お湯を注いでお茶を作ったり、炭酸水で割って飲んだりと、いろいろな使い方ができます。

世界の料理

  • 柚子胡椒
    主に日本の九州地方で使われる調味料。
    ユズの果皮+唐辛子をすりつぶしてペースト状にしたもの。
    • 緑色の柚子胡椒は、未熟なユズのグリーン果皮+青唐辛子を使用して作ります。
    • 赤い柚子胡椒は、熟したユズのイエロー果皮+赤唐辛子を使用して作ります。

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Gardening 園芸

種類常緑小高木
背丈高さ4~7m
環境耐寒性があり、涼しい気候でよく育つ

STORY

ズは、日本が誇る柑橘フルーツです。

食材としての人気はさることながら香料としての人気も高まってきており、ユズをテーマにした海外の香水も多く作られています。

日本全国で栽培されていますが、とくに高知や徳島など四国のユズが有名です

姿かたち

  • 直径5~8cmくらいの、デコボコした果実。
  • 果実は酸味が強く、種が多いです。
  • はじめは緑色ですが、熟すにつれて明るい黄色に色づきます。
  • 爽やかな芳香のある果皮には、精油が含まれています。
  • 2cmくらいの小さな白い花をつけます。

栽培と収穫

  • ユズ栽培には、年間平均気温が12~15℃くらいの地域が適しています。
  • 柑橘類の中では耐寒性が強く、病気にもなりにくいです。
  • 花は5~6月に咲きます。
  • 果実は11~12月に黄色く熟します。
    • 「黃ユズ」と呼ばれるのは、秋から冬に収穫する黄色に熟したユズ。
      もっとも一般的なユズです。
    • 「青ユズ」と呼ばれるのは、夏に収穫するまだ緑色の未熟果。

名前の由来・伝説

  • 「柚」はユズのことですが、酸味が強いため「柚ノ酸(ユノス)」と呼ばれることもありました。
    学名の「junos」はここからきています。

近縁種・間違いやすい品種

ユズの近縁種に、「カボス」「スダチ」があります。

これらはすべて日本の「香酸柑橘類」で、酸味が強いため生で食べることはありませんが、料理の風味づけとして広く利用されています。

Kabosu / カボス

学名Citrus sphaerocarpa
科名ミカン科
別名
採油法果皮を低温圧搾
精油成分d-リモネン、β-ミルセン、γ-テルピネン、リナロール、酢酸ネリル、オクタナール、ぺリラアルデヒド、トランス-4,5-エポキシ-2E-デセナール
香り酸味の強い爽やかなシトラスノート
  • 学名の「sphaerocarpa」は、「丸い果実の」という意味です。
  • 主産地は日本。
    国内のカボスはほぼ全て、大分県で生産されています。
  • 5月頃に白い花を咲かせます。
  • 丸い果実には、種があるものとないものがあります。
  • 緑色の果皮は薄くなめらかで、熟すと黄色に変わります。
  • ただし黄色になると、果汁の酸味・果皮の香りが減少します。
    そのため7~8月頃に、まだ緑色の香り高い未熟果を収穫します。
  • カボスとスダチでは、カボスの果実のほうが大きいです。
    カボスは直径7cm前後、スダチは直径4cm前後。(ユズはその中間)
  • 酸味は強いですが、ジューシーでまろやかな独特の香りがあります。
  • 魚料理、鍋料理、麺類、お吸い物などに、果汁を使用します。
  • お菓子、デザート、ドリンク、お酒などの風味づけに使われることもあります。
  • 精油の色は、淡いイエロー~イエローグリーン。
  • 精油全体の70~75%ほどを占めるd-リモネンをはじめとするテルペン類が多く含まれています。
  • ただしカボス独特の香りを作っているのは、リナロール、オクタナール、ペリラアルデヒドなどの微量成分です。
  • 圧搾精油には光毒性があります。

Sudachi / スダチ

学名Citrus sudachi hort. ex Tanaka
科名ミカン科
別名
採油法果皮を低温圧搾
精油成分d-リモネン、γ-テルピネン、β-ミルセン、リナロール、ノナナール、ユズノン、トランス-4,5-エポキシ-2E-デセナール
香りユズに似た、爽やかで酸味の強いシトラスノート
  • 主産地は日本。
    国内のスダチはほぼ全て、徳島県で生産されています。
  • 日本では、江戸時代にスダチの生産がはじまったと考えられています。
  • 5月頃に白い花を咲かせます。
  • 小粒の果実ははじめ緑色で、熟すと黄色に変わります。
  • ただし黄色になると、果汁の酸味・果皮の香りが減少します。
    そのため8~10月頃に、まだ緑色の香り高い未熟果を収穫します。
  • スダチとカボスでは、スダチの果実のほうが小さいです。
    スダチは直径4cm前後、カボスは直径7cm前後。(ユズはその中間)
  • 果肉はジューシーで爽やかな酸味があり、果汁を搾って使います。
  • 魚料理、鍋料理、マツタケ、湯豆腐、お酒などに風味をつけます。
  • 果皮を擦り下ろしたり薄く削ったりして、薬味として使うこともあります。
  • 精油の色は、淡いイエロー~イエローグリーン。
  • ユズやカボスと同じく精油の大部分をテルペン類が占めていますが、スダチの香りに大きな影響を与えているのはやはり微量成分です。
  • ユズから生まれた柑橘であるスダチには、ユズの特徴成分「ユズノン」が含有されています。
  • 圧搾精油には光毒性があります。

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