Petitgrain

プチグレン

植物DATA
学名Citrus aurantium L.
Citrus aurantium var. amara L.
Citrus bigaradia Loisel.
科名ミカン科
別名プチグレン・ビガラード、ビターオレンジリーフ
原産地インド、ヒマラヤ
主産地チュニジア、フランス、イタリア、スペイン、ハイチ
使用部位葉、枝
主な成分精油、フラボノイド配糖体(ネオヘスペリジン、ヘスペリジンなど)
精油DATA
採油部位葉と枝
採油法水蒸気蒸留
採油率0.25~0.5%
性状黄色~琥珀色
主な成分酢酸リナリル、リナロール、α-テルピネオール、酢酸ゲラニル、ゲラニオール、t-β-オシメン、酢酸ネリル、d-リモネン、ネロール
香りネロリを思い起こさせるフレッシュなグリーンノート
シトラス、フローラル、わずかにウッディのニュアンスがある
揮発性トップ~ミドルノート
香り強度弱め

「プチグレン」は、オレンジ・ビターの葉と枝から採った精油の名前です。

その爽やかなグリーンノートは、活き活きとしたフレッシュさを与えるために数多くの香水に配合されています。

アロマテラピーでは、元気で明るい気分になりたいときによく選ばれる香りです。

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Fragrance 香料

香りの
性質
シトラス、フローラルニュアンスのあるフレッシュなグリーンノート
主な
使用法
シトラスのトップノートをミドルノートにつなげる
使用量柑橘類やネロリのサポートとして適量を使うことが多い
注意

オレンジ(Citrus aurantium)の木からは、3種類の精油が生産されます。

  • オレンジ・ビター
    果皮を低温圧搾(コールドプレス)して得た精油。
  • プチグレン
    葉と枝を水蒸気蒸留して得た精油。
  • ネロリ
    花を水蒸気蒸留して得た精油。

プチグレンの原料はオレンジの葉と小枝ですが、これに小さなグリーンの未熟果も含まれていることがあります。

ネロリの香りに似ていますが、ネロリのような甘さや繊細さはなく、もっとフレッシュでドライでグリーン感の強い香りです。


オレンジ以外の柑橘類からも、それぞれの葉・小枝を蒸留して「プチグレン精油」が製造されます。

このようなプチグレンと区別するために、オレンジ・ビター(Citrus aurantium)から採ったプチグレンのことを「プチグレン・ビガラード/Petitgrain bigarade」と呼ぶことがあります。

もっとも価値の高いプチグレンは、この「ビガラード」タイプです。

なかでも南フランス産が最高級品とされています(ただし現在ではほとんど生産されていません)。

香りの成り立ち

プチグレン精油の主香成分は、酢酸リナリルとリナロールです。

これはベルガモット、ラベンダー、クラリセージなどと共通する成分で、これらの精油とプチグレンは香りの印象も近いものがあります。

ほかにもアロマティック、ウッディ、グリーン感のある成分が、主にプチグレンの香りを作っています。

  • 酢酸リナリル
    フレッシュで甘さと酸味のあるフルーティフローラル。アロマティックなニュアンスがあります。ラベンダー、ベルガモット様。
    フローラル、シプレ、コロン調の軽快なトップノートとして使用されます。
    • クラリセージラベンダーベルガモットマージョラム・スイートネロリなどに含まれています。
  • リナロール
    軽やかなフレッシュフローラル。ウッディ、スパイシー、シトラスのニュアンスがあります。ラベンダー、ライラック様。
    • ローズウッドコリアンダーネロリラベンダーベルガモットなどに含まれています。
  • α-テルピネオール
    辛さと甘さのあるフローラルノート。ウッディ、シトラスの雰囲気も持っています。ライラック様。
    • ユーカリ・ラディアタライムカユプテマージョラム・スイートネロリなどに含まれています。
  • t-β-オシメン
    フレッシュで温かみのあるシトラスグリーン、ハーバル、ウッディ。
    • ジョンキルアブソリュートオポポナックスタラゴンブラックカラントバッドラベンダーにも含まれています。

プチグレンのフローラルノートは、ローズやオレンジフラワー様の香りを持つ成分によるものです。

  • 酢酸ゲラニル
    甘いフルーティフローラル。ローズ、ラベンダー様。
    • パルマローザシトロネラローズオットーゼラニウムネロリなどに含まれています。
  • ゲラニオール
    シトラス感のある甘いフローラル。ローズ様。
    • パルマローザゼラニウムローズオットーメリッサオスマンサスアブソリュートなどにも含まれています。
  • ネロール
    マリン感のある華やかなフローラル。ローズ、オレンジフラワー様。
    • ヘリクリサムダバナローズオットーオレンジフラワーアブソリュートなどにも含まれています。
  • 酢酸ネリル
    ラズベリーやハニーノートが感じられる甘いフローラル。ローズ、オレンジフラワー様。
    • ヘリクリサムフェネグリークメリッサオレンジフラワーアブソリュートレモンなどにも含まれています。

相性のよい香り

  • ジューシーな柑橘精油はどれも、プチグレンとよく調和します。
  • ネロリとはよく一緒に使用されます。
    • 高価なネロリのサポート役として。
    • ネロリの甘さを抑えたいときにも。
    • さらにオレンジを加えれば、1本のオレンジの木をまるごと表現した香りになります。
  • ハーブの香りにプチグレンをブレンドすると、鮮やかなグリーンノートが加わります。
    ラベンダーローズマリーマージョラム・スイートなどに、1:1の割合でブレンドすると良いです。
  • パルマローザゼラニウムなど、シトラス-ローズニュアンスのある香りとよく合います。
  • とくに相性の良いウッディノートは、ベチバーシダーウッドサンダルウッド
  • オーデコロンタイプの香りは、ベルガモットなどの柑橘類、ネロリラベンダーローズマリーなどをブレンドして作ります。

ブレンドテクニック

  • プチグレンが主役になることはめったにないものの、シトラス、ハーバル、フローラル、ウッディなどあらゆる香調によくなじむため、香りと香りの橋渡し役として非常にすぐれています。
  • とくに、柑橘類のトップノートをミドルノートの香りにうまくつなげるには最適の香りです。
  • 柑橘メインのブレンドに少しだけ加えると、単純な香りに深みが出てまとまりも良くなります。
  • オーデコロンやシトラスタイプのフレグランスにひんぱんに使用されます。
  • フレッシュで拡散性もあり、軽い香りと重厚な香りをつなげるという性質は、とくにシプレやオリエンタルタイプの香りを作るときに役立ちます。

使用されている香水

  • Jean Marie Farina/ジャン マリ ファリナ(Roger & Gallet、1806)
    爽やかなシトラスノートに、プチグレン、ローズマリーなどのアロマティックノートを組み合わせた「元祖」オーデコロンの1つ。
  • Blu Mediterraneo Arancia di Capri/ブルー メディテラネオ アランチャ ディ カプリ(Acqua di Parma、1999)
    柑橘フルーツとプチグレンの香りに、ピリッと辛いカルダモンを効かせた快活な香り。
    ベースノートはクリーミーなキャラメルとムスク。
  • Green/グリーン(Byredo、2008)
    プチグレンの鮮やかなグリーンノートから、ハニーサックルやバイオレットの柔らかいフローラルへ、そしてアーモンドのパウダリーノートへと変化するフレグランス。
  • Seville a l’Aube/セヴィーヤ ローブ(L’Artisan Parfumeur、2012)
    「セビリアの夜明け」という名前の香水。
    プチグレン&オレンジフラワーによる満開のオレンジ・ビターツリー、ハチミツ、タバコ、樹脂、ラベンダーの香りが一体になって官能的なハーモニーを作ります。
  • Bel Oranger/ベル オランジェ(Fragonard、2023)
    プチグレン&オレンジフラワー&オレンジの果実というオレンジ・ビターの木を余すことなく表現した香りに、シダーウッドのやさしいウッディノートを組み合わせています。

その他プチグレンを含む香水

「Castile/カスティーユ(Penhaligon’s、1998)」
「Orange Leaves Eau de Cologne/オレンジ リーブス オーデコロン(L’Occitane、2001)」
「Le Petit Grain/ル プチグレン(Miller Harris、2008)」
「Feuilles & Fleurs d’Oranger/フィーユ&フルール ドランジェ(Galimard、2011)」
「Mister Marvelous/ミスター マーヴェラス(Byredo、2011)」

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香料としての歴史と活用法

プチグレン精油は、17世紀から製造されています。

花、もしくは果実の収穫が終わった後に、サクランボ大の小粒な未熟果、葉っぱ、小枝、残り花などをまとめて蒸留したのがはじまりです。

プチグレン精油は、この時代に作られるようになったオーデコロンや化粧品などの香料として、広く使用されていました。

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Aromatherapy アロマテラピー

作用鎮静、高揚、緩和、鎮痙、鎮痛、抗炎症、消化器系機能調整、神経バランス調整
適用ストレス、心身の疲労、眠れない、皮膚の再成長サポート、肌を柔らかくする、デオドラント、菌対策
注意

プチグレン精油の作用はネロリと似ているため、高価なネロリの代わりやネロリの補強のために使われることがよくあります。

ネロリと比べると香りの繊細さや高揚感に欠けるものの、それ以外の面ではプチグレン単体でも十分に利用価値があります。

オレンジツリー

精神のために役立てる

  • 落ち着かない精神状態を、おだやかに鎮めます。
    • 不安、緊張、ストレスには、マンダリンネロリをブレンド。
    • 動揺が静まらないときは、ラベンダーフランキンセンスをブレンド。
    • 気がかりなことがあって眠れないときは、ネロリベチバーをブレンド。
  • 暗い気持ちをリフレッシュさせ、元気が出るように力を貸してくれます。
    • 自信を持って振る舞えるようにするには、ベルガモットゼラニウムローズマリーをブレンド。
    • 幸福感、解放感を高めるには、レモンローズサンダルウッドをブレンド。

身体のために役立てる

  • PMSや更年期の不調に役立ちます。
    • オレンジ・スイートゼラニウムをブレンド。
      または、ジャスミンクラリセージをブレンド。
  • 消化器系の不調(とくにストレスからくるもの)をやわらげます。
    • 胃・お腹を落ち着かせるためには、カモミールラベンダーをブレンド。

美容のために役立てる

  • 脂性肌、敏感肌、老化肌に有益です。
    • 脂性肌のバランスを整えるには、イランイランサンダルウッドをブレンド。
    • 敏感肌には、ゼラニウムローズ・オットーをブレンド。
    • 老化肌を生き生きとさせるには、ネロリローズマリーをブレンド。
  • オイリーヘアーの手入れに。
    シャンプーに混ぜてもいいし、ヘアースプレーを作っても良いです。
    • ゼラニウムサイプレス(orジュニパー)シダーウッドをブレンド。
  • デオドラントのためのアロマバスやフットバスに。
    ボディスプレーを作っても◎。
    • ベルガモットクラリセージをブレンド。

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Herb therapy ハーブセラピー

作用鎮静、高揚、緩和、鎮痙、消化機能サポート、循環サポート
適用不安、緊張、ストレス、眠れない、PMS
注意

オレンジの葉にも、オレンジフラワー(オレンジの花)と同じような作用があり、同様の目的でハーブティーなどに使用されます。

ただし、花のほうが香りも作用もすぐれているため、葉だけで使われることはあまりありません。

使い方の詳細は、オレンジフラワーのページにまとめています。

Gardening 園芸

プチグレンは、オレンジ・ビターの葉と小枝から採った精油の名称です。

樹木全体の特徴は、「オレンジ・ビター」のページにまとめています。

名前の由来・伝説

  • 「Petitgrain/プチグレン」という名前は、「小さな粒」という意味。
  • もともとこの精油は、オレンジの小粒な未熟果を原料にして採取していたため、こう呼ばれるようになりました。

近縁種・間違いやすい品種

「プチグレン」精油といえば、オレンジ・ビターを原料にしたものが一般的ですが、それ以外の柑橘の葉と枝を蒸留した「プチグレン」精油というのも存在します。

それぞれの柑橘ごとにプチグレンの香りも異なりますが、どれも主にオーデコロンや香水のトップノートとして利用されています。

─ 主なプチグレン ─

  • Petitgrain bigarade/プチグレン・ビガラード(Citrus aurantium)
    オレンジ・ビターのプチグレン。
    もっとも価値の高いタイプです。
  • Petitgrain Paraguay/プチグレン・パラグアイ(C. aurantium)
    オレンジ・ビター+オレンジ・スイートの交配種のプチグレン。
  • Petitgrain orange sweet/プチグレン・オレンジスイート(C. sinensis)
  • Petitgrain mandarin/プチグレン・マンダリン(C. reticulata)
  • Petitgrain lemon/プチグレン・レモン(C. limon)
  • Petitgrain bergamot/プチグレン・ベルガモット(C. bergamia)

このうち「パラグアイ」は生産量が多く、「マンダリン」「レモン」はとくにほかのプチグレンと香りが異なるので、この3種については以下で説明します。

Petitgrain Paraguay / プチグレン・パラグアイ

学名Citrus aurantium
科名ミカン科
別名オレンジリーフ・パラグアイ
採油法葉・枝を水蒸気蒸留
精油成分酢酸リナリル、リナロール、α-テルピネオール、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、ゲラニオール、t-β-オシメン、β-ピネン、d-リモネン、ゲラニアール、ネラール
香りフレッシュなシトラスグリーンノート
  • オレンジ・ビターとオレンジ・スイートが自然交配してできた種を、原料に使っています。
  • パラグアイは最大のプチグレン生産地であり、市場にはこのタイプのプチグレンがもっとも多く出ています。
  • 「ビガラード」タイプより品質は落ちるとされています。
  • 「ビガラード」タイプよりも香りは軽めで、ボリューム、芳醇さ、フルーティー感が少なくなります。

Petitgrain mandarin / プチグレン・マンダリン

学名Citrus reticulata Blanco
科名ミカン科
別名マンダリンリーフ
採油法葉・枝を水蒸気蒸留
精油成分アントラニル酸ジメチル、γ-テルピネン、d-リモネン、p-シメン、β-ピネン、α-ピネン、β-カリオフィレン、リナロール、t-β-オシメン
香りグレープ様の濃厚なフローラルニュアンスを持つシトラスグリーン
  • 主産地は、イタリア、スペイン、ギニアなど。
  • 原料にはマンダリンの葉、小枝のほか、未完熟の果実も入ることがあります。
  • 採油量は0.3~0.4%。精油の色はイエローオレンジ。
  • 光毒性があります。
  • 主成分のアントラニル酸ジメチルは、精油全体の40~50%の割合で含まれています。
    これがほかのタイプのプチグレンと大きく香りが異なる原因です。
  • アントラニル酸ジメチルは、オレンジフラワー、グレープ、プラム様のフルーティな香り。
    力強く深みのある、独特の甘さをもっています。
  • それ以外はγ-テルピネンやd-リモネンなど、軽く爽やかなハーバル、シトラスノートが多く含まれています。
  • グレープ様フルーティーが最大の特徴で、少しカビっぽさのある重くてリッチな香りです。
  • ほかのプチグレンにはない独特の香りと成分構成は、アロマテラピーでも注目されています。
    ストレスや緊張をやわらげ、不安を鎮め、沈んだ心を高揚させるために使われます。

Petitgrain lemon / プチグレン・レモン

学名Citrus limon (L.) Osbeck
科名ミカン科
別名プチグレン・シトロニエ、レモンリーフ
採油法葉・枝を水蒸気蒸留
精油成分ゲラニアール、ネラール、d-リモネン、β-ピネン、ゲラニオール、酢酸ネリル、ネロール、酢酸テルピニル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、シトロネラール
香りレモン様の強いシトラスグリーン
  • 主産地は、イタリア、ギニア、チュニジア、モロッコなど。
  • 原料にはレモンの葉、小枝のほか、未完熟の果実も入ることがあります。
  • 主成分のシトラール(ゲラニアール+ネラール)が、全成分の半分ほどを占めています。
  • シトラールはレモン特有の鋭いシトラスノートで、これが大量に含まれているということは、レモングラスやリトセアのような雰囲気があることを意味します。
  • ほかにもグリーンシトラスの強い香りを持つシトロネラール、ローズニュアンスを持つフルーティフローラルな成分などが含まれています。
  • とても強い香りで、爽やかなレモン様シトラス、甘いフルーティフローラルなどに加えて、ビター、ウッディなアンダートーンも含んでいます。
  • ほかのプチグレンにはない新鮮な香りが、フレッシュタイプのフレグランスに使う香料として注目されています。
  • アロマテラピーでは、空気のリフレッシュや菌対策、虫よけのほか、抗炎症、鎮痛、鎮痙、鎮静、デオドラント作用などが期待できます。

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