Osmanthus
オスマンサス(キンモクセイ)
学名 | Osmanthus fragrans var. aurantiacus Makino |
科名 | モクセイ科 |
別名 | ─ |
原産地 | 中国 |
主産地 | 中国、日本 |
使用部位 | 花 |
採油部位 | 花 |
採油法 | 溶剤抽出 / Osmanthus abs. |
採油率 | 花からのコンクリート収率は0.2~1.5%、コンクリートからのアブソリュート収率は78% |
性状 | 黄赤色~暗赤褐色、粘りけがある |
主な成分 | β-イオノン、ジヒドロ-β-イオノン、リナロールオキシド、γ-デカラクトン、デカン-4-オリド、ゲラニオール、リナロール、α-イオノン、フェニルエチルアルコール |
香り | アプリコットのような甘さのあるフルーティフローラル。 お茶、ハチミツ、ウッディなどのニュアンスもある。 |
揮発性 | ミドルノート |
香り強度 | 中程度 |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | アプリコットのようなフルーティ感と、砂糖やハチミツのような甘さを持つコクのあるフローラルノート。 お茶っぽさ、ミルキー感、柔らかいレザーなど、さまざまな表情を持つ。 |
主な 使用法 | 香りのテーマ(主役)として使う、フローラルブーケに変化をつける、フルーティな効果を与える |
使用量 | 目的に合わせて少量ずつ使う |
注意 | ─ |
オスマンサスの香りは水蒸気蒸留では抽出できないため、花を溶剤抽出してアブソリュートが作られています。
収穫した花はすぐに処理する必要があるため、生産地の中国でコンクリート抽出が行われます。
その後コンクリートからアブソリュートを抽出しますが、この工程はフランスなどで行われることもあります。
香りの成り立ち
オスマンサスアブソリュートに含まれている成分は、370種以上が判明しています。
その中でもオスマンサスの香りを特徴づける成分としてとくに重要なのは、β-イオノンとα-イオノンです。
これらは香りが強く拡散力もあるため、少量でも広範囲に香りを漂わせます。
オスマンサスの開花時期、すぐ近くに花がないのにどこからともなく香りが漂ってくる…という現象は、主にイオノンの強い拡散力によるものです。
- β-イオノン
シダーウッドやラズベリーのような香りで、希釈するとバイオレット様。
α-よりウッディフルーティなノートが強く、オスマンサスにはこちら(β-)が多く含まれています。- ボロニアアブソリュート、チャンパカアブソリュートにも含まれています。
- α-イオノン
シダーウッドのような香りで、希釈するとバイオレット、オリス様。
β-より甘いフローラルノートが強いです。- チャンパカアブソリュートにも含まれています。
さらにもう1つ、オスマンサスの香りを特徴づけているのがγ-デカラクトンです。
この成分とイオノンの組み合わせが、オスマンサス特有のアプリコットノートを作っています。
- γ-デカラクトン
ピーチやココナッツ様の、甘くてクリーミーなフルーティノート。
オスマンサス、チュベローズ、ガーデニアなどの香りの再生に使用されます。
そのほか以下のような成分が含まれています。
これらは全体に強く影響するわけではありませんが、香りにさまざまな表情を与えるのに役立っています。
- リナロールオキシド
ラベンダー様のウッディフローラル、ベルガモット様のグリーンを感じる香り。- ローズウッド、チャンパカアブソリュートにも含まれています。
- リナロール
ライラックやラベンダーのような穏やかなフローラル。
クリーミー、ウッディ、スパイシーなどのニュアンスもあります。- ローズウッド、コリアンダー、マグノリア、ネロリ、ラベンダーなど多くの精油に含まれています。
- ゲラニオール
ローズ調の甘いフローラル。
シトラスニュアンスもあります。- パルマローザ、ゼラニウム、ローズ、シトロネラ、メリッサなどに含まれています。
- フェニルエチルアルコール
ローズやハチミツのような、しっとりした甘さと温かみを感じる香り。- ローズ、オレンジフラワー、チャンパカ、ヒヤシンス、ジャスミン・サンバックなどのアブソリュートに含まれています。
相性のよい香り
- シトラスノートだと、温かくフルーティ感の強いオレンジ・スイート、マンダリンとよく合います。
- オスマンサスの持つお茶のニュアンスを引き立てたいときは、ベルガモットやクラリセージをブレンドするとよいです。
- ローズやジャスミンにオスマンサスを少し加えると、独特のフルーティなコクが加わり、香りのボリュームと華やかさが増します。
- サンダルウッドやバニラなどのクリーミーな香りを一緒に使うと、秋の空気に漂ってくるオスマンサスの温かくてノスタルジックな雰囲気がよく出ます。
- 甘さやフルーティ感ではなく、オスマンサスのビターな面を強調したいときは、フランキンセンスやミルラを少しブレンドするとよいです。
ブレンドテクニック
- 天然香料で柑橘以外のフルーティノートは貴重なので、表現の幅が広がります。
- オスマンサスのフルーティノートはツンとくるメディカル感もうまく隠してくれます。
ハーブなどの香りがなじみにくいときは、少し加えてみるとよいです。 - ウッディな香りと親和性が高いため、ブレンドの方向性に合わせてなにか1つウッディノートを合わせると香りが安定します。
合成香料
オスマンサスアブソリュートは生産量も少なく高価な香料です。
合成香料でオスマンサスの香りを再現するのはそれほど難しくないため、一般的なフレグランス製品にはオスマンサスの調合香料が広く使用されています。
使用されている香水
- 1000/ミル(Jean Patou、1972)
価格にはこだわらず天然香料をふんだんに使い、美しく完璧なフローラルブーケを作るというコンセプトのもとで生まれた香水。
ふんだんなローズやジャスミンに、当時まだよく知られていなかったオスマンサスアブソリュートを1~2%ブレンドしています。 - Narciso Rodriguez For Her/ナルシソ ロドリゲス フォーハー(Narciso Rodriguez、2003)
中東のムスクオイルから着想を得たフレグランス。
ムスクを中心に、フルーティなオスマンサス、オレンジフラワー、アンバーなどが配置されています。 - Osmanthe Yunnan/オスマンサス ユンナン(Hermès、2005)
北京で出会ったオスマンサスの香りをテーマにした香水。
オスマンサスに雲南(ユンナン)省のお茶、アプリコットの香りがミックスされています。 - Good Girl Gone Bad/グッド ガール ゴーン バッド(Kilian、2012)
オスマンサス、オレンジフラワー、ローズの可憐なフルーティフローラルから、チュベローズ、ジャスミン・サンバック、ナルシスの官能的なホワイトフローラルへと変化していく美しい香り。
その他オスマンサスを含む香水
「Osmanthus/オスマンチュス(The Different Company、2000)」
「Inlé/インレー(Memo Paris、2007)」
「Nuit de Cellophane/ニュイ ドゥ セロファン(Serge Lutens、2009)」
「Thays/タイース(Fueguia 1833、2010)」
「L’Ile au Thé/イル オ テ(Goutal、2015)」
「Osmanthus/オスマンサス(Acqua di Parma、2019)」
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香料としての歴史と活用法
オスマンサスが香料として広く使われるようになったのは比較的最近のことです。
中国ではデザートなどの香りづけに古くから使われていましたが、香りの分析や抽出が本格的に行われるようになったのは20世紀後半です。
エキゾチックで独特の個性を持ったフローラル香料として西洋でも関心が高まり、多くの研究が行われました。
現在では東洋・西洋問わず、あらゆる香水・フレグランス製品に使用されています。
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 鎮静、高揚、鎮痛、抗炎症、神経バランス調整、消化器系機能調整 |
適用 | 不安、イライラ、スキンケア、ヘアケア、巡りケア、虫よけ |
注意 | ─ |
オスマンサスはアロマテラピーで広く使われる香りではありませんが、他にないフルーティフローラルノートは手作り香水、スプレー、拡散などに使う価値があります。
おだやかで幸せな気分になりたいとき、落ち込んだ心をなぐさめて明るさを取り戻したいときに役立つ香りです。
スキンケアやヘアケアに使うこともできます。
Herb therapy ハーブセラピー
ハーブとしての歴史と伝承
中国では古くからオスマンサスを薬として利用してきました。
- 乾燥させた花で淹れるお茶は、食欲がないときや婦人科系の不調などに使われてきました。
- 花をアルコールに浸したものは、眠れないときに役立つとされています。
- 呼吸器系の不調には、乾燥させた花、根、樹皮の浸剤が使われます。
- そのほか、お腹や歯の痛みをやわらげたり、肌を美しくするためにも使われます。
Cooking 料理
中国では伝統的に、オスマンサスの乾燥花をデザート、スイーツ、お茶などの香りづけに利用します。
その他の地域ではオスマンサスを食品に使うことは一般的ではありませんでしたが、近年は花をデコレーションに使ったり、ジャムやソースに使ったり、フレーバーとして利用することも増えてきました。
オスマンサスティーをアレンジしてカクテル、スムージー、ゼリー、ジュレなどを作ることもできます!
世界の料理
オスマンサス(桂花/ケイカ)は、中国ではさまざまなフード・ドリンクの香りづけに使用されています。
- 桂花茶
緑茶にオスマンサスの花の香りを移したもの。
ウーロン茶や紅茶のタイプもあります。 - 桂花陳酒
白ワインにオスマンサスの花を浸したもの。
オスマンサスの華やかでむせかえるような香り。 - 桂花栗子湯
栗のスープにオスマンサスの花を散らして香りをつけた甘いデザート。
そのほか、ケーキ、キャンディ、月餅などのフレーバーにしたり、砂糖漬けにしたり、調味料として使ったりすることもあります。
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Gardening 園芸
種類 | 常緑の小高木 |
背丈 | 3~4m |
環境 | たっぷりと日が当たる場所、水はけのよい土壌 |
STORY
どこからともなく漂ってくるオスマンサスの香りは、暑い夏が終わり、秋が巡ってきたことを何よりも実感させてくれます。
日本人にとって「秋の入り口」の香りであり、少しノスタルジックな感情や切なさを抱かせる香りでもあります。
開花期間は短いですが、シーズンになるとオスマンサスのフレグランス製品もたくさん出回るようになり、(その意味では)香りを長く楽しめるようになりました。
姿かたち
- 高さ3~4mに生長する常緑樹。
- 光沢のある革のような、しっかりした葉を持っています。
- 葉の柄の部分に、オレンジ色の小さな花を房状につけます。
- 花弁の先は4つに分かれており、強く濃厚な香りを遠くまで漂わせます。
- 開花時期は9~10月。
栽培と収穫
- 暖かい気候と、たっぷり日の当たる場所を好みます。
暑さには比較的強いですが、寒さには弱いです。 - 水はけのよい砂質の土壌が適しています。
- 花の収穫は、枝を叩いたり揺すったりして、地面に広げた布の上に落とします。
- 香料用の花は枯れないように塩水が入った樽に入れ、抽出工場へ送ります。
工場では花を水で洗い、水気を切ったあと、溶剤抽出を行います。 - オスマンサスの産地として有名なのは、中国の「桂林(モクセイの林という意味)」。
名前の由来・伝説
- 「Osmanthus」という属名は「香り高い花」という意味で、ギリシア語の「osme(芳香)」と「anthos(花)」からきています。
- 「fragrans」という種小名も、「香りのよい」という意味。
- 中国では、Osmanthus属の花は「桂花」と呼ばれています。
また、香りが遠くまで漂うことから「九里香」と呼ばれることもあります。 - オスマンサスのことを「スイートオリーブ」「フレグラントオリーブ」などと呼ぶこともあります。
日本の肥前焼
近縁種・間違いやすい品種
オスマンサスと同じモクセイ科の仲間には、オリーブ、ジャスミン、ライラックなどがあります。
「金木犀(キンモクセイ)」というのは、「木犀(モクセイ)/Osmanthus fragrans」の変種の1つです。
モクセイの変種は、日本では主に3種類に分類されます。
- 金木犀(キンモクセイ)/Osmanthus fragrans var. aurantiacus
オレンジ色の花。もっとも香りが強い。 - 薄黄木犀(ウスギモクセイ)/Osmanthus fragrans var. thunbergii
薄いイエローの花。香りが弱い。 - 銀木犀(ギンモクセイ)/Osmanthus fragrans var. fragrans
白い花。香りが弱い。
中国でも同じように分類されます。
- 丹桂/Osmanthus fragrans var. aurantiacus
オレンジ色の花。香りが強い。 - 金桂/Osmanthus fragrans var. thunbergii
薄いイエローの花。もっとも香りが強い。 - 銀桂/Osmanthus fragrans var. fragrans
白い花。香りが弱い。
以上のように、「金木犀=丹桂」「薄黄木犀=金桂」「銀木犀=銀桂」ということになりますが、香りの面だと日本の「金木犀」に1番近いのは「金桂」です。
このように特徴がそれぞれ違うため、日本と中国の種は同一種ではないという説もあります。
中国で香料や食品の香りづけに使われているのは、「丹桂」や「金桂」です。
日本で「オスマンサスの香り」というときは、たいてい「金木犀」のことを指しています。
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