Orange bitter
オレンジ・ビター
学名 | ・Citrus aurantium L. ・Citrus aurantium var. amara L. ・Citrus bigaradia Loisel. |
科名 | ミカン科 |
別名 | オレンジ・ビガラード、サワーオレンジ、セビルオレンジ、ダイダイ |
原産地 | インド、ヒマラヤ |
主産地 | チュニジア、モロッコ、スペイン、イタリア、アルジェリア |
使用部位 | 果皮 |
主な成分 | 精油、フラボノイド、苦味物質、ペクチン、アルカロイド |
採油部位 | 果皮 |
採油法 | 低温圧搾 |
採油率 | 0.6% |
性状 | 淡黄色~黄褐色 |
主な成分 | d-リモネン、β-ミルセン、リナロール、α-ピネン、サビネン、デカナール、オクタナール、ノナナール |
香り | フレッシュで甘いフルーティシトラス、ややビター、ドライ、スパイシーなニュアンスがある |
揮発性 | トップノート |
香り強度 | 弱め |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | 拡散力のあるアルデハイディックなフルーティシトラス |
主な 使用法 | さまざまな香調のフレッシュなトップノート |
使用量 | 比較的多量に使用することも多い。(圧搾精油は使用制限あり) |
注意 | 光毒性あり。使用限度量は、香水全体の1.25%まで。 酸化、変質しやすい。 |
オレンジ(Citrus aurantium)の木からは、3種類の精油が生産されます。
- オレンジ・ビター
果皮を低温圧搾(コールドプレス)して得た精油。 - プチグレン
葉と枝を水蒸気蒸留して得た精油。 - ネロリ
花を水蒸気蒸留して得た精油。
果皮から得るオレンジ・ビター精油は、「ビガラード(Bigarade)オイル」と呼ばれることもあります。
スペイン産とギニア産が最高品質といわれていますが、生産量が少ないため高価です。
光毒性のある成分を除去した「FCF(フロクマリンフリー)オイル」や、香りが弱く変質しやすいテルペン類を除去した「テルペンレスオイル」もあります。
また、オレンジ果皮から得る精油には「ビタータイプ(C. aurantium)」と「スイートタイプ(C. sinensis)」があります。
どちらもみずみずしいオレンジの香りですが、オレンジ・ビターは、スイートよりも甘みが少なくドライな印象があるのが特徴です。
オレンジ・スイートには光毒性がないというのも、相違点としてあげられます。
香りの成り立ち
オレンジ・ビター精油の香りの構成は、オレンジ・スイート精油とだいたい同じです。
全体の90~95%をd-リモネンが占め、そのほかにもβ-ミルセン、α-ピネン、サビネンなどのテルペン類が含まれています。
テルペン類は香りが弱いため、オレンジの香りに影響を与えているのはそれ以外の微量成分ということになります。
それぞれの成分の説明、香りの詳細は、オレンジ・スイートのページを参照してください。
ブレンドテクニック
- オレンジ・スイートと同じように使えます。
- プチグレン、ネロリは同じ1本の木から採った精油同士であり、果皮・葉・花を組み合わせることでオレンジツリーのすべてを味わえる贅沢な香りを作ることができます。
- ジューシーな甘さよりもピリッとしたスパイス的なオレンジノートを効かせたいときなどにも。
たとえばジュニパーやアンジェリカ、スパイスなどと組み合わせてジンやカクテルの香りを表現したり。
使用されている香水
- Bigarade/ビガラード(Nina Ricci、1971)
オレンジ・ビターが主役の、シプレフレグランス。
シトラスノートにオークモスを組み合わせたクラシックな香調です。 - Declaration/デクラレーション(Cartier、1998)
トップノートにオレンジ・ビターを使ったメンズフレグランス。
キャラウェイ、カルダモン、コリアンダーなどのフレッシュなスパイシーノート&温かいウッディノートがエレガントに香ります。 - L’eau des Hesperides/ロー デ ゼスペリード(Diptyque、2008)
オレンジ・ビターにプチグレン、ローズマリー、ミントなどのグリーンアロマティックノートを合わせた香りです。
ベースノートのヘリクリサムが効いています。 - Marry Me !/マリー ミー(Lanvin、2010)
ロマンチックで明るいフローラルフルーティー。
チュニジアのオレンジ・ビターとピーチのフルーティーノートに、ジャスミン、フリージア、マグノリアなどのやさしいホワイトフローラルが重なってハーモニーを作っています。 - Orange Bitters/オレンジ ビター(Jo Malone London、2016)
オレンジ・ビターのフレッシュなシトラスノートに、まろやかなサンダルウッド&温かいアンバーノートを組み合わせた、深みのある官能的なフレグランス。
その他オレンジ・ビターを含む香水
「Bigarade Concentree/ビガラード コンサントレ(Frederic Malle、2002)」
「Amarige Mariage/アマリージュ マリアージュ(Givenchy、2006)」
「Moschino Funny !/モスキーノ ファニー(Moschino、2007)」
「Eau des Sens/オー デ サンス(Diptyque、2016)」
「Lumière Dorée/ルミエール ドーレ(Miller Harris、2016)」
「Oranges Bigarades/オレンジ ビガラード(Lancôme、2018)」
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香料としての歴史と活用法
オレンジ・ビターは食用にできなかった代わりに、その香りが積極的に利用されてきました。
果皮にはほかの柑橘類よりも強い芳香があるため、ポプリやサシェ、ポマンダーの材料にも適しています。
- ポプリにオレンジピール(果皮)を加えると、色も香りも明るくなります。
- ほかの柑橘類の果皮や精油もブレンドすると良いです。
- ラベンダー、ローズマリー、タイム、ローレル、バジルなど、地中海地方のハーブが陽気なイメージによく合います。
- オレンジフラワー、ジャスミン、ローズなどの花を加えると豪華です。
- シナモン、ナツメグ、クローブ、バニラなど、スパイスならなんでも相性◎。
- 洋服やリネン類に良い香りをつけるため、また虫よけのためにも、古くからサシェの材料に加えられていました。
- オレンジフラワーやローズなどの花、シナモン、クローブなどのスパイス、オリスパウダー、塩とブレンドして、小さな袋に詰めます。
- ホップ、ラベンダーとブレンドして枕に入れても良いです。
- 伝統的なシトラスポマンダーは、柑橘類の果皮にクローブを散りばめ、精油をしみ込ませたスパイスをまぶして乾燥させたものです。
器やカゴに盛ったり、リボンを巻いて飾ったりできます。
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 鎮静、高揚、鎮痛、消化器系機能調整 |
適用 | 緊張、心身の疲れ、食欲がない、消化器系の問題、バランスを整える、巡りを良くする、空気清浄、菌対策 |
注意 | 光毒性あり |
オレンジ・ビター精油には、基本的にオレンジ・スイートと同じような作用があります。
ただし光毒性があるため、アロマテラピーではオレンジ・スイートを使うのが一般的です。
Herb therapy ハーブセラピー
作用 | 消化機能サポート、循環サポート、鎮静、高揚、鎮痙、抗炎症、矯味 |
適用 | 食欲がない、元気が出ない、ストレス、体を温める |
注意 | 胃や腸の潰瘍には使用しないこと。 光毒性あり。 |
ハーブティーには、乾燥させたオレンジピール(果皮)を使用します。
オレンジにはビターとスイートがあり、どちらも同じように利用できます。
オレンジ・ビターのほうが胃に対する作用がすぐれているためよく利用されますが、より甘い風味が欲しいときやリラックスティーを作るときはオレンジ・スイートを使っても良いです。
健康のために役立てる
- 消化機能をサポートするために、ティーにして飲みます。
- 食欲を出したいときは、ペパーミントをブレンド。
- 胃がスッキリしないときは、フェンネルとレモングラスをブレンド。
- 巡りを良くして体を温めるためのティーにもブレンドできます。
- ネトル、サフラワー、ジンジャーをブレンド。
さらにシナモンやカルダモンなどのスパイスを足しても良いです。
- ネトル、サフラワー、ジンジャーをブレンド。
- 精神的なバランスをとるためにも役立ちます。
より甘く美味しいティーにしたいときは、オレンジ・スイートを使います。- 不安や緊張を和らげるには、カモミール・ジャーマンとレモンバームをブレンド。
眠れないときは、これにパッションフラワーもプラス。 - 気分転換や元気を出したいときは、レモングラスとローズマリーをブレンド。
- 幸せ気分を高めるには、ハイビスカス、レモンマートル、オレンジフラワー、ローズをブレンド。
- 不安や緊張を和らげるには、カモミール・ジャーマンとレモンバームをブレンド。
ハーブとしての歴史と伝承
中国では、オレンジ・ビターの果皮や果実を乾燥させたものを「橙皮(トウヒ)」「枳実(キジツ)」と呼び、何世紀にもわたって活用してきました。
「橙皮」は、オレンジ・ビターの成熟した果皮の内側の白い部分を除去して外側のオレンジ色の部分を乾燥させたものです。
「枳実」は、オレンジ・ビターの未成熟な果実を輪切りにして乾燥させたものです。
どちらもその芳香と苦味が、消化を促したり胃の調子を良くするために長いあいだ役立てられてきました。
これらはパウダー、シロップ、チンキなどのかたちで使用されます。
また、ヨーロッパでも18世紀頃になると、オレンジは精神的なものから身体的なものまでさまざまな不調に役立つといって評判になりました。
オレンジの果汁や果肉にはビタミンCが多く含まれており、美容や健康のために世界中で幅広く活用されています。
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Cooking 料理
風味 | ピリッとした苦みと爽やかな柑橘風味 |
主な特徴 | 甘いデザートや濃厚なソースに爽やかなアクセントをつける |
作り置き | ビネガー、オイル、シロップ、アルコール |
オレンジ・ビターの果実はかなり酸っぱいため、生で食べることはありません。
現代ではマーマレードやリキュール、ドリンクやお菓子の材料として使うことが多いですが、中世ヨーロッパではさまざまな料理に幅広く利用されていました。
というのもその時代はレモンが手に入りにくかったり、手に入ったとしても酸味が弱く甘みの強いレモンだったりしたため、現代のレモン汁のような役割をオレンジ・ビターが果たしていたわけです。
たとえばオレンジ・ビターの果汁にシナモン、クローブ、ナツメグ、サフラン、砂糖などをまぜて肉や魚にかけたり、肉とオレンジを交互に串に刺したり、牡蠣といっしょに盛り付けたりなど。
こまかく刻んだ果皮や果汁は、鴨や子牛料理のソースによく使われたし、輪切りや飾り切りにしたオレンジを装飾に使うこともよくされていました。
また、オレンジピールの砂糖漬けは、消化を良くする食後のデザートとして定番でした。
オレンジ・マーマレード
マーマレード作りには、たいていオレンジ・ビターが使われます。
果皮&果肉を水と砂糖で煮ると、芳しい風味とほろ苦さが魅力でおなじみの甘いジャムが出来上がります。
といっても「マーマレード=オレンジ」ということにこだわっているのはマーマレードの本場イギリスくらいで、ほかの国ではいろいろな果物から「マーマレード(ジャム)」が作られています。
(もともとはよくカリンが原料にされていて、マーマレードの語源は「marmelo/カリン」という説もあり)
イギリスのオレンジ・マーマレードの始まりは、18世紀初頭。
大量のオレンジを積んだスペイン船が嵐のためにスコットランド、ダンディーの港に避難しました。
ダンディーで食料品のお店をしていたジェームズ・ケイラーという人が、そのオレンジを安くで買い取りましたが、それは甘いオレンジ・スイートではなく酸っぱいオレンジ・ビターだということがあとでわかりました。
生で食べられないオレンジの売れ行きは悪く、大量のオレンジをどうしようかと困ってしまったジェームズ。
そのとき彼の母親が、オレンジ・ビターでマーマレードを作るというアイディアを思いつきました。
そして店に出してみると大成功。それ以来、毎年オレンジ・ビターを仕入れてマーマレードを作るようになったということです。
使い方のコツ
オレンジの果皮は、さまざまなかたちで料理に使われます。
オレンジ・スイートも同様に使えますが、オレンジ・ビターのほうが苦味が強くキレがあるため、スパイス的な使い方にはより適しています。
- オレンジ・ピール
オレンジの果皮。細長く切ったり小さく切ったりして使います。
乾燥させたドライピールも市販されています。 - オレンジ・ゼスト
果皮のもっとも外側(内側の白い部分は含まない)を削り取ったり擦り下ろしたりこまかく千切りにしたりしたもの。 - オレンジ・パウダー
ドライピールを粉状にしたもの。
- オレンジ・ビターの果皮には、ピリッとした苦みと香り高い柑橘の風味があり、上記のような形態で料理やお菓子、ドリンクの風味付けに使われます。
- オレンジの甘酸っぱい爽やかな風味は、ネギやセロリなどの青くささをやわらげるのに役立ちます。
- サラダのドレッシングや肉料理のソースに風味をつけることもできます。
- ジャムやシロップの材料になるほか、スパイスやナッツと合わせて焼き菓子に多用されます。
オレンジの苦みは快いアクセントとなり、お菓子の甘さを引き立てます。 - とくに多いのは、チョコレートやカスタードとの組み合わせ。
- さまざまなアルコールの香り付けに使用されています。
- 「オレンジ・リキュール」は、アルコールと砂糖にオレンジピールで風味付けしたリキュール。
- 「オレンジ・ビターズ」は、オレンジピールを原料にしたビターズ。
ビターズ/bitters(苦味酒)というのは、ハーブ・スパイスを蒸留酒に浸け込んで作るアルコール飲料のこと。香りが強くて苦味があるのが特徴です。
- 緑色の未熟なオレンジ・ビターの果汁は、ポン酢などに使用されます。
世界の料理
北欧では、オレンジ・ビターのパウダー、ピール、ピールの砂糖漬けが多用されます。
クッキーやケーキなどの焼き菓子、デザート、ドリンクなどに使用されています。
- ピパルカック/Piparkakku
フィンランドでクリスマスに食べるジンジャービスケット。
オレンジ・ビター、ジンジャー、シナモン、クローブ、カルダモンなど、温かみのあるスパイスパウダーで風味を付けます。 - マンミ/Mämmi
フィンランドの復活祭(イースター)で食べるデザート。
甘いペースト状の生地に、オレンジピールで風味を付けます。
地中海地域でも、さまざまな焼き菓子やドリンク、ソーセージ、チャツネなどにオレンジピールが多用されています。
- アーァ・タ・ラセル/Qaghaq Ta’ l-Ghasel
マルタの「ハニーリング」。クリスマスに食べる伝統的なお菓子です。
オレンジピール、アニス、クローブなどのスパイスとシロップで風味付けした生地をクッキー生地で包み、リング状に焼いたもの。 - プリニョラータ/Prinjolata
マルタのカーニバル期間に食べるケーキ。
とんがり帽子のかたちをしたカラフルなデコレーションケーキで、中にはオレンジピール、ドライフルーツ、ナッツなどが入っています。 - キニー/Kinnie
マルタの有名な炭酸ドリンク。
オレンジ・ビターを中心に、ハーブ・スパイスを効かせたほろ苦い風味。 - ルカニコ/Loukániko
ギリシャの香り高いソーセージ。
オレンジピールやハーブで風味を付けてあります。
スペインやラテンアメリカでは、肉のマリネやさまざまなデザートに、オレンジ・ビターの果皮、果汁が使用されます。
- クレマ・カタラーナ/Crema Catalana
スペインのカタルーニャ地方のデザート。
カスタードをオレンジピールとシナモンで風味付けし、表面を焦がしてパリッとさせたクレーム・ブリュレのようなお菓子。
聖ヨセフの日(3月19日)に食べる習慣があります。 - パン・デ・ムエルト/Pan de muerto
メキシコの「死者のパン」。
オレンジピールやオレンジフラワーウォーター、アニスシードなどで風味づけされた甘いパンです。
死者の日(11月1・2日)に食べます。
リキュール
- キュラソー/curaçao
キュラソー島のオレンジ・ビター(Citrus aurantium var. currassuviencis)の果皮で風味をつけたリキュール。- 「ホワイト・キュラソー(トリプルセック)」は、無色透明のキュラソー。
- 「オレンジ・キュラソー」は、オレンジ色のキュラソー。
- コアントロー/Cointreau
フランスのコアントロー社製のホワイト・キュラソー。
風味付けに使っている果皮は、オレンジ・ビターとオレンジ・スイート。 - グラン・マルニエ/Grand Marnier
フランスのマルニエ・ラポストル社製のオレンジ・キュラソー。
風味付けに使っている果皮は、オレンジ・ビターのみ。 - カンパリ/Campari
イタリアの赤いリキュール。
オレンジ・ビターの果皮、キャラウェイ、コリアンダーなど30種以上のハーブ・スパイスで風味づけしています。- 「カンパリ・オレンジ」は、カンパリをオレンジジュースで割ったカクテル。
アイディア
food
- ブーケガルニに、ローレル、パセリ、ガーリックなどといっしょにオレンジピールも入れる。
- スパイスをまぶした肉や魚をオレンジ・ビターの果汁に漬け込み、グリルする。
- パスタのクリームソースに、オレンジゼストと果汁を加えて風味をつける。
dessert
- スパイスケーキやチョコレートケーキの生地に、ドライフルーツ、ナッツなどといっしょに砂糖漬けのオレンジピールを加える。
- クッキーやパンの生地に、スパイスパウダー(シナモン、クローブ、アニスなど)とオレンジパウダーを混ぜて焼く。
drink
- 温まるドリンクなら、紅茶にオレンジピール、ジンジャー、シナモン、クローブなどをブレンドする。
- 冷たいドリンクなら、オレンジピール、ハイビスカス、ローズヒップ、レモングラスをブレンドして濃いめにティーを作り、冷やす。
炭酸水やオレンジジュース、アップルジュースで割ってもOK。 - どちらのドリンクも、ハチミツで甘みをつけたりオレンジスライスを浮かべて飲むとよいです。
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Gardening 園芸
種類 | 常緑小高木 |
背丈 | 高さ4~10m |
環境 | 耐寒性、適応力があるが、地中海性気候でよく育つ |
STORY
オレンジは、マンダリン(Citrus reticulata)とポメロ(C. maxima)の交配種です。
オレンジ・ビター(C. aurantium)はマンダリンとポメロが同等に混じっていて、オレンジ・スイート(C. sinensis)はマンダリンの性質のほうが強くなっています。
オレンジ・ビターの木は、9~11世紀頃、アラビア人によって地中海沿岸地方に持ち込まれました。
それからオレンジ・スイートが伝わる15世紀までのあいだ、ヨーロッパではずっとこの酸っぱいオレンジ・ビターが唯一の「オレンジ」でした。
姿かたち
オレンジ・ビターの木は、果実の濃い橙色と葉の深い緑色のコントラストが鮮やかで、柑橘類のなかでもっとも美しい木とされています。
そして果実・花・葉のすべてから、香り高い香料が製造されます。
- 直径7.5cmほどの、赤みがかった濃いオレンジ色の果実。
- 果実ははじめ緑色ですが、冬に熟すとオレンジ色に色づきます。
この色の変化は気温の変化によるもので、低温にさらされるとオレンジ色になり、暖かくなるとまた緑色に戻ります。
- 果実は酸味と苦味が強いため、食用には向きません。
- 果肉は柔らかく、果皮はザラザラして剥きにくいです。
- 果皮には、香り高い精油が含まれています。
- 星型の白い花は、やわらかくて厚みのある花びらを持っています。
5月頃に咲き、甘く繊細な芳香を放ちます。 - 花から採った精油のことを「ネロリ」、アブソリュートのことを「オレンジフラワーアブソリュート」といいます。
- つやのある葉は、深みのある濃い緑色。
葉の付け根にはトゲがあります。 - 葉を日光に透かしてみると、精油を含んだ小さな点々が見えます。
- 葉と小枝から採った精油のことを「プチグレン」といいます。
栽培と収穫
- 耐寒性があり、病気になりにくく、さまざまな土壌にもすんなり適応して枯れにくい、強くて丈夫な性質を持っています。
- そのため、ほかの柑橘樹(とくにオレンジ・スイート)に接ぎ木するための台木としてよく利用されます。
- それでも寒くて湿った季節が長期間つづくような地域では、屋外で育てることはできません。
- 理想的な環境で育てば、600年以上生きることができるといわれています。
- スペイン、イタリア、モロッコ、チュニジアなど、地中海沿岸の国ではよく街路樹としても利用されています。
- スペインのセビリアには、オレンジ・ビターの街路樹が14,000本もあるといわれています。
- チュニジアのナブールもオレンジで有名で、町の至る所にオレンジ・ビターの街路樹があります。
名前の由来・伝説
- 「orange/オレンジ」の語源は、サンスクリット語の「naranga」。
- 学名の「aurantium」は、「オレンジ色の」という意味です。
- 「Seville orange/セビル(セビリア)オレンジ」という名前は、スペインのアンダルシア州都「Sevilla/セビリア」からとっています。
マーマレード用のオレンジをセビリアから輸入するイギリス人が、こう呼ぶようになりました。 - 日本では、同じ1本の木に複数の年代の果実がついていることから「ダイダイ(代代)」と呼ぶようになりました。
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