Neroli
ネロリ
学名 | ・Citrus aurantium L. ・Citrus aurantium var. amara L. ・Citrus bigaradia Loisel. |
科名 | ミカン科 |
別名 | オレンジフラワー、オレンジブロッサム、フルールドオランジェ |
原産地 | インド、ヒマラヤ |
主産地 | チュニジア、エジプト、モロッコ、フランス、スペイン |
使用部位 | 花 |
主な成分 | 精油、フラボノイド配糖体(ネオヘスペリジン、ナリンギンなど) |
採油部位 | 花 |
採油法 | 水蒸気蒸留 / Neroli oil 溶剤抽出 / Orange flower abs. |
採油率 | 0.1% / oil 花からのコンクリート収率は0.2%、コンクリートからのアブソリュート収率は48~58% / abs. |
性状 | 淡黄色~淡琥珀色 / oil 暗褐色、粘りけがある / abs. |
主な成分 | リナロール、d-リモネン、β-ピネン、酢酸リナリル、t-β-オシメン、ネロリドール、α-テルピネオール、酢酸ゲラニル、ファルネソール、酢酸ネリル、アントラニル酸メチル / oil リナロール、フェニルエチルアルコール、酢酸リナリル、アントラニル酸メチル、ファルネソール、ネロリドール、酢酸ネリル、インドール、シアン化ベンジル / abs. |
香り | 軽やかでビタースイートなフレッシュフローラル。シトラス、ハーバルニュアンスがある / oil 濃厚で豊潤なフルーティフローラル。ハチミツのような温かい甘さがある / abs. |
揮発性 | ミドルノート / oil ベースノート / abs. |
香り強度 | 中程度 / oil / abs. |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | シトラス、ハーバルニュアンスのある爽やかなフローラル、拡散力がある / Neroli oil フルーティ、アニマリックなアンダートーンのある甘いフローラル、持続力がある / Orange flower abs. |
主な 使用法 | シトラスブレンドに高級感と持続力を出す、ホワイトフローラルの構成要素、さまざまな香調の変調剤 |
使用量 | 柑橘精油やプチグレンと合わせて適量を使うと良い |
注意 | インドールを含むため、紫外線の影響で変色を起こすことがある。 |
オレンジ(Citrus aurantium)の木からは、3種類の精油が生産されます。
- オレンジ・ビター
果皮を低温圧搾(コールドプレス)して得た精油。 - プチグレン
葉と枝を水蒸気蒸留して得た精油。 - ネロリ
花を水蒸気蒸留して得た精油。
そしてもう1種類、オレンジの花からアブソリュートも生産されます。
- オレンジフラワーアブソリュート
花を溶剤抽出して得たアブソリュート。
同じオレンジの花から、「ネロリ」という精油と、「オレンジフラワー」というアブソリュートの2種類が作られるということです。
製造方法の違いは、得られる成分にも香りにも大きな違いをもたらします。
ネロリの香りはシトラス、ハーバル感の強い軽やかなフローラルノートなのに対し、オレンジフラワーアブソリュートの香りはより生花に近く、甘くて濃厚なフローラルノートです。
香りの成り立ち
ネロリ
ネロリ精油は、プチグレンと同じくリナロール、酢酸リナリルが主成分です。
ただしアロマティックな酢酸リナリルが優勢なプチグレンに対し、ネロリはフローラルなリナロールのほうが多量(全体の30~50%)に含まれています。
- リナロール
軽やかなラベンダー様のフレッシュフローラル。- コリアンダー、マグノリア、ラベンダー、プチグレン、ベルガモットなどに含まれています。
- 酢酸リナリル
フレッシュで甘さと酸味のあるフルーティフローラル。アロマティックなニュアンスがあります。- クラリセージ、プチグレン、ラベンダー、ベルガモット、マージョラム・スイートなどに含まれています。
ネロリは、フレッシュなシトラス感を付与するテルペン類も比較的多量に含んでいます。
- d-リモネン
フレッシュでみずみずしいシトラスの香り。- オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類のほか、セロリシード、ファー、ブラックペッパーなどにも含まれています。
- β-ピネン
針葉樹のようなウッディ、グリーン、シトラス。- ガルバナム、パイン、ブラックカラントバッド、ライム、ナツメグなどに含まれています。
フレッシュなハーバル-グリーンノートは、ネロリの香りに欠かせない要素です。
- t-β-オシメン
フレッシュで温かみのあるハーバルグリーン、ウッディ、シトラス。- ジョンキルアブソリュート、オポポナックス、タラゴン、ブラックカラントバッドにも含まれています。
- ネロリドール
フレッシュなグリーンフローラル。ウッディ、シトラス、ワックスのようなニュアンスがあります。- ニアウリ、カルダモン、ハニーサックルアブソリュート、バルサム・ペルーなどに含まれています。
- ファルネソール
フレッシュなグリーンフローラル。ウッディ、コニャック、オイリーなニュアンスがあります。
持続性があり、フローラル、シプレ、オリエンタル系香料や、トロピカルフルーツフレーバーなどに使用されます。- アンブレットシードの主成分。
チュベローズアブソリュートやローズオットーなど、フローラル精油にもよく含まれています。
- アンブレットシードの主成分。
ネロリは、フローラルな甘い芳香も持っています。
- α-テルピネオール
辛さと甘さのあるフローラルノート。ウッディ、シトラスの雰囲気もあります。- ユーカリ・ラディアタ、ライム、カユプテ、マージョラム・スイートなどに含まれています。
- 酢酸ゲラニル
甘いローズ様のフルーティフローラル。シトラス感があります。- イランイラン、パルマローザ、シトロネラ、ローズオットー、ゼラニウムなどに含まれています。
- 酢酸ネリル
ローズ、オレンジフラワー様のスイートフローラル。ラズベリーやハニーノートが感じられます。- ヘリクリサム、フェネグリーク、メリッサ、レモンなどに含まれています。
アントラニル酸メチル、インドール、シアン化ベンジルなど、オレンジフラワーアブソリュートの重要成分は、微量(0.5%未満)ですがネロリにも含まれています。
これらの成分は微量でも効果があるため、ネロリの香りにも大きな影響を与えています。
オレンジフラワー
オレンジフラワーアブソリュートも、ネロリと同様にリナロール、酢酸リナリルが主成分です。
ただしそれ以外の成分は含有量に大きな差があり、これは抽出方法によって得られる成分が変わってくるからです。
水蒸気蒸留では、水に溶けやすい成分は水層に溶けてしまい、油層(=精油)にはほとんど残りません。
そのためネロリ精油には含まれないフェニルエチルアルコールなども、オレンジフラワーアブソリュートには含まれています。
- フェニルエチルアルコール
温かみのある甘いローズ様。しっとりしたハニーのようなニュアンスがあります。
水に溶けやすいため、水蒸気蒸留の精油にはほとんど含まれません。- ローズ、ヒヤシンス、ジャスミンサンバック、オスマンサス、ナルシスなどのアブソリュートに含まれています。
テルペン類などの軽い香りはアブソリュートにはほとんど含まれておらず、ファルネソール、ネロリドール、酢酸ネリルなどのグリーンフローラル、ハニーフローラルな香りがより重要になっています。
そして、オレンジの花の香りを決定づける以下の成分は、ネロリよりもオレンジフラワーアブソリュートに多く含まれています。
- アントラニル酸メチル
グレープ、オレンジフラワー様の甘いフルーティな香り。持続性にすぐれています。
オレンジフラワー、ジャスミン、チュベローズ調の濃厚なフローラル香料に使われるほか、グレープフレーバーには不可欠な成分です。メロン、ベリー類、ワインフレーバーにも使用されます。- ジャスミンアブソリュートにも含まれています。
- インドール
濃度が高いと不快な糞臭で、希釈するとジャスミン様のフローラル。- ジャスミン、ハニーサックル、ジョンキル、ナルシスなどのアブソリュートに含まれています。
- シアン化ベンジル
ハニー様のニュアンスがある濃厚なフローラル。
相性のよい香り
- どの柑橘精油も、ネロリのシトラスノートを強調して華やかに拡散させます。
- プチグレンを一緒に使うことで、香りの印象をコントロールできます。
- プチグレンを少しだけ加えると、ネロリのグリーン感がくっきりと出てきます。
- プチグレンをたくさん加えると、ネロリの甘さが抑えられてドライなトーンになります。
- オーデコロン調の香りを作るときは、ベルガモットなどの柑橘類、プチグレン、ラベンダー、ローズマリーなどをブレンドします。
- 柑橘とネロリのブレンドに清涼感がほしいときは、ユーカリかペパーミントを足します。
- アクセントを加えるのに最適なスパイスは、カルダモン、コリアンダー。
- ラベンダーやカモミール・ローマンをブレンドすると、ナチュラルでやさしいフローラルノートを作れます。
- ネロリもオレンジフラワーも、ジャスミン、チュベローズ、ローズ、イランイランなどと共通の成分を含みます。
これらの香りと組み合わせてゴージャスなフローラルブーケを作ることもできます。 - サンダルウッド、オークモスをブレンドすると重厚な香調になります。
ブレンドテクニック
- ネロリもオレンジフラワーも、シングルフローラルとして香りのテーマになるよりも、ブーケ調やホワイトフローラル調の要素としてほかの花と組み合わせて使うことが多いです。
- オーデコロン、シトラスタイプの香水にも必須の香り。
- 柑橘ブレンドにネロリやオレンジフラワーを加えるのは、さまざまなメリットがあります。
- カジュアルで単調になりがちなシトラスノートに、高級感、華やかさを与えます。
- 揮発しやすい柑橘精油の保留剤としてはたらきます。
- ネロリははじけるようなフレッシュ感、シトラス、ハーバルニュアンスを併せ持つフローラルノートなのでフェミニンになりにくく、さまざまな香調に幅広く使用できます。
- ウッディ調のメンズフレグランスには、ネロリが使われていることが多いです。
- オレンジフラワーは濃厚で主張の強い香りなので、少量を効果的に使います。
シプレ、フゼア、フローラル、オリエンタルなど、さまざまなタイプに変調剤として使用されます。
合成香料
ネロリもオレンジフラワーも天然香料は高価なため、それぞれの香りを再現した調合香料が多く作られています。
ネロリ
- ネロリの再現にはプチグレン精油を使用し、さまざまな香料を足してネロリの成分構成に近づけていきます。
- ネロリ精油が含むフルーティなエステル類、軽やかなアルコール類、その他さまざまな合成香料が組み合わされます。
- 微量成分としてネロリドール、アントラニル酸メチル、インドール、デカナールなども使用されます。
- ネロリ調合香料に使用する可能性がある天然香料
- トップノートにベルガモット、オレンジ・スイート、レモン。
- 保留剤にベンゾイン、バルサム・トルー、ラブダナム、ミルラ。
- 微量成分にセロリ、バジル。
- ネロリ調合香料と共通の構成要素を持つフローラルノート
- ジャスミン、チュベローズ、ナルシス、ローズ。
オレンジフラワー
- オレンジフラワーの再現にも、ネロリと同じようにプチグレン精油、さまざまな合成香料を使用します。
- アントラニル酸メチル、インドールなどの官能的で重たい香りは、ネロリよりも多量に使用されます。
- ローズ様のフェニルエチルアルコールも加えられます。
- オレンジフラワー調合香料に使用する可能性がある天然香料
- 香りを持ち上げるために、柑橘精油。
- 保留剤にパチュリ、ベチバー、バルサム・トルー、オリス、ラブダナム、バニラ。
- そのほかイランイラン、クラリセージ、ガルバナム、ジュニパー、カッシーアブソリュート、ミモザアブソリュートなど。
- オレンジフラワー調合香料と共通の構成要素を持つフローラルノート
- ガーデニア、ジャスミン、ジョンキル、ナルシス、チュベローズ、ローズ。
使用されている香水
ネロリ
- Eau Imperiale/オー インペリアル(Guerlain、1853)
長い歴史を誇る、ゲランのクラシックなオーデコロン。
フレッシュなシトラスノートに深みと高級感を与えるために、ネロリが重要なはたらきをしています。 - Colonia Essenza/コロニア エッセンツァ(Acqua di Parma、2010)
ネロリとシトラス、アロマティックを組み合わせたエレガントなメンズフレグランス。
オークモスやパチュリのベースノートが上品で、カジュアルすぎないバランスの良い香りになっています。 - Neroli Portofino/ネロリ ポルトフィーノ(Tom Ford、2011)
地中海の太陽のキラキラした光をイメージさせるような、明るいシトラスフレグランス。
爽快な柑橘の香りのあとに、ネロリ、オレンジフラワー、アンバーの洗練された香りが出てきます。 - Prada L’Homme/プラダ オム(Prada、2016)
アンバー&アイリスの香りが中心になったメンズフレグランス。
トップノートのネロリがウッディパウダリーなアイリスと混ざり合うことで、心地よいフローラルハーモニーを作っています。 - Neroli Voyage/ネロリ ボヤージュ(Floris、2019)
ネロリのフレッシュなフローラルノートに、清々しいマリンノート、ウッディ、ムスクがブレンドされています。
男女ともに使える清潔感のある香り。
その他ネロリを含む香水
「Acqua Della Regina/アックア デッラ レジーナ(Santa Maria Novella)」
「Neroli Sauvage/ネロリ ソバージュ(Creed、1994)」
「Aqua Allegoria Nerolia Bianca/アクア アレゴリア ネロリア ビアンカ(Guerlain、2013)」
「Cologne Indélébile/コロン インデレビル(Frederic Malle、2015)」
「Basil & Neroli/バジル&ネロリ(Jo Malone London、2016)」
「Eau de Néroli Doré/オー ドゥ ネロリ ドレ(Hermès、2016)」
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オレンジフラワー
- L’Origan/ロリガン(Coty、1905)
オレンジフラワーやバイオレットの甘いフローラルノートに、温かいスパイス、クマリン、ウッディが組み合わされたオリエンタルな香調。 - Orange Blossom/オレンジブロッサム(Jo Malone London、2003)
オレンジフラワーとウォーターリリーの繊細なフローラルノートがやさしく香るコロン。
爽やかな甘さと軽やかさが心地よいフレグランスです。 - Fleurs d’Oranger/フルール ドランジェ(Serge Lutens、2003)
オレンジフラワーが主役の、柔らかくフェミニンなホワイトフローラルノート。
クミンとムスクの温かい官能的な香りがアクセントになっています。 - Eau des Sens/オー デ サンス(Diptyque、2016)
オレンジフラワー&オレンジ・ビターのフレッシュな香りに、ジュニパーベリー、アンジェリカのアロマティックな香りが奥深さと複雑さを与えています。 - MYSLF(Yves Saint Laurent、2023)
チュニジア産のオレンジフラワーを中心に据えたメンズフレグランス。
軽やかなベルガモット、優雅なオレンジフラワー、深みのあるウッディアコードのコントラストが鮮やかです。
その他オレンジフラワーを含む香水
「Eau D’Orange Verte/オー ドランジュ ヴェルト(Hermès、1979)」
「Castile/カスティーユ(Penhaligon’s、1998)」
「Fleur d’Oranger 27/フルール ド オランジェ 27(Le Labo、2006)」
「Infusion de Fleur d’Oranger/インフュージョン ドゥ フルールドランジェ(Prada、2009)」
「Guilty Pour Homme/ギルティ プールオム(Gucci、2011)」
「Gabrielle/ガブリエル(Chanel、2017)」
「Histoire d’Orangers/イストワール ド オランジェ(L’Artisan Parfumeur、2017)」
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香料としての歴史と活用法
8世紀のアラブ世界ではすでにオレンジフラワーの蒸留が行われていて、採取した精油とオレンジフラワーウォーターを香料として使用していました。
中世ヨーロッパでは、スペイン、イタリア、ドイツなどの錬金術師によって、オレンジフラワーを使った芳香水・香水・リキュールの数々のレシピが残されています。
オレンジ・ビターの花を蒸留して得た精油が「ネロリ」という名で呼ばれるようになったのは17世紀。
この時代は貴族のあいだで革手袋が流行っていて、皮の匂い消し&香りづけに精油などの香料を使っていました。
イタリアのネロラ公妃アン・マリー(1642-1722)は、手袋の香りづけにオレンジの花を愛用し、それ以外にもレース、リボン、スカーフから便せんや文房具に至るまでこの香りを染み込ませ、香水やお風呂にも使っていました。
オレンジフラワーの香りをつけた手袋は、このネロラ公妃にちなんで「ネロリの手袋」と呼ばれるようになり、大いに流行します。
それ以来、オレンジフラワーから採った精油のことを「ネロリ」と呼ぶようになりました。
ネロラ公妃アン・マリー
18世紀になると、香水、ローション、オイル、クリーム、パウダー、ポマードなど、あらゆる化粧品にネロリ精油やオレンジフラワーウォーターが使用されるようになります。
マリー・アントワネット(1755-1793)も、化粧水にはオレンジフラワーウォーターを使用し、気分を良くしたり落ち着かせたりするためにオレンジフラワーの香りつきビネガーをいつも持ち歩いていました。
毎年庭にオレンジの花が咲くと、国王や宮廷の人々に配っていたともいわれています。
フランスのグラースでは、温浸法によるオレンジフラワーアブソリュートも製造されていましたが、今ではもう行われていません。
現在では水蒸気蒸留法によるネロリ精油&オレンジフラワーウォーター、溶剤抽出法によるオレンジフラワーアブソリュートが、香料として世界中で利用されています。
- 甘美な香りのする水
13世紀の錬金術の本に載っているレシピ。
オレンジフラワー、ダマスクローズ、マートル、ロータス、リリー、クローブ、ナツメグをいっしょに蒸留し、ムスク、アンバーグリス、シベットで香りをつけるというもの。 - カルメル水/Carmelite water
14世紀に作られはじめた、メリッサ、アンジェリカ、レモンピール、コリアンダーを加えた芳香水。
基剤には、オレンジフラワーウォーターとアルコールが使用されていました。
- ハチミツ水/Honey Water
18世紀イギリスで人気があった化粧水。
オレンジフラワーウォーター、アルコール、水に、精油(クローブ、コリアンダー、バニラなど)が含まれていて、快い香りで肌がなめらかになると評判でした。 - オー・デ・コロン/Eau de Cologne
18~19世紀に大流行したオーデコロンにはいくつかバリエーションがありますが、どのレシピも爽やかな柑橘精油とネロリの組み合わせが基本になっています。
オレンジフラワーウォーターも成分として使われています。
オーデコロンの広告
- ポプリ/Potpourri
伝統的なポプリにも、オレンジフラワーを使うことができます。- オレンジピール、ローズマリー、ラベンダー、マートルなどを合わせると爽やか。
- ローズを合わせてもいいし、ジャスミンなどの白い花をたくさん集めてもいいです。
- 柑橘やネロリはもちろん、パチュリ、イランイラン、バニラ、スパイスなど、濃厚な香りの精油もよく合います。
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 鎮静、高揚、緩和、鎮痙、鎮痛、抗炎症、消化器系機能調整、神経バランス調整 |
適用 | ストレス、心身の疲労、眠れない、更年期の不調、皮膚の再成長サポート、肌に弾力をもたせる、肌を柔らかくする、菌対策 |
注意 | ─ |
オレンジの花の香りをアロマテラピーで利用するときは、水蒸気蒸留で抽出した「ネロリ精油」を使います。
芳香浴はもちろん、アロマバスやアロママッサージ、手作りコスメ・香水など、さまざまな方法で幅広く活用されます。
精神のために役立てる
- 高ぶった気持ちを落ち着かせたいときには、もっとも適した精油の1つです。
- 突然のショック、パニック時には、イランイランもしくはフランキンセンスをブレンド。
ハンカチに垂らして香りを吸入するか、できるならキャリアオイルに混ぜてハンドマッサージを。 - 慢性的な不安、緊張を落ち着かせるには、オレンジ・スイートとカモミールをブレンド。
- 心が休まらず眠れないときは、クラリセージとラベンダーをブレンド。
- 突然のショック、パニック時には、イランイランもしくはフランキンセンスをブレンド。
- 不安定になった感情のバランスを整えます。
- 小さいことが気に障ったりイライラして怒りっぽいときは、ラベンダーとメリッサをブレンド。
- 絶望感や孤独感をやわらげるには、ローズとサンダルウッドをブレンド。
- 自信、自由さ、楽しむ気持ちを強めるには、ベルガモット、ゼラニウム、ジャスミンをブレンド。
堅く閉ざした孤独な心をやわらげる香り
自覚があるにしろないにしろ、深く傷ついた、プライドがズタズタになった、とりかえしのつかないことをしてしまった、というようなとき。
そういう「恥」とか「罪」の意識が混じった後悔、怒り、そんな絶望感から感覚のスイッチをOFFにしてしまったような人に、ネロリの香りは役に立ちます。
もうどんな慰めも受け付けないような堅く閉じた心にもすっと入り込み、だれも触れない苦痛をやわらげ、再び平和な心を取り戻す助けになってくれます。
身体のために役立てる
- PMSや更年期の不調に役立ちます。
- イランイランとゼラニウムをブレンド。
または、レモンとサイプレスをブレンド。
- イランイランとゼラニウムをブレンド。
- 消化器系の不調(とくにストレスからくるもの)をやわらげます。
- お腹を落ち着かせるためには、カモミールとローズマリーをブレンド。
美容のために役立てる
- 乾燥肌、敏感肌、老化肌に有益です。
- 乾燥肌と乾燥髪をやわらかく整えるには、ゼラニウムとサンダルウッドをブレンド。
- 敏感肌には、カモミールとローズ・オットーをブレンド。
- 皮膚の生まれ変わり、再成長をサポートする力がすぐれています。
- 老化肌には、フランキンセンスとローズ・オットーをブレンド。
または、ラベンダーとパチュリをブレンド。 - 傷あとや妊娠線をなめらかにするには、ベルガモットとローズマリーをブレンド。
- 老化肌には、フランキンセンスとローズ・オットーをブレンド。
ネロリの芳香蒸留水
ネロリの芳香蒸留水は「オレンジフラワーウォーター」または「ネロリウォーター」と呼ばれます。
オレンジ・ビターの花を水蒸気蒸留すると、油層と水層に分かれた液体が得られます。
この油層部分が精油(ネロリ)で、水層部分が芳香蒸留水(オレンジフラワーウォーター)です。
芳香蒸留水にもわずかに精油が含まれており(1Lあたり約0.5~1gほど)、これは精油中の水溶性成分が水層にも溶け込むためです。
オレンジフラワーウォーターは、オーデコロン、スキンケア化粧品、食品など、さまざまな製品に幅広く使用されています。
ローズウォーターと並んで、世界中でもっとも需要の高い芳香蒸留水です。
─ オレンジフラワーウォーターアブソリュート ─
オレンジの花を水蒸気蒸留すると、採取可能な精油のうち約75%はネロリ精油(油層)として回収されます。
そして残りの約25%は、芳香蒸留水(水層)に溶けたり分散したりしています。
この「芳香蒸留水に溶けている精油」を回収するために、精油を分離したあとの水層を溶剤抽出してアブソリュートを得ることがあります。(現在はほぼ行われていない)
このアブソリュートのことを「オレンジフラワーウォーターアブソリュート」といいます。
主要成分は、リナロール、α-テルピネオール、フェニルエチルアルコール、アントラニル酸メチル、ネロール、リナロールオキシドなど。
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Herb therapy ハーブセラピー
作用 | 鎮静、高揚、緩和、鎮痙、消化機能サポート、循環サポート |
適用 | 不安、緊張、ストレス、眠れない、PMS |
注意 | ─ |
オレンジの花をハーブとして利用するときは、開花前のつぼみを乾燥させて使います。
これは「オレンジフラワー」「オレンジブロッサム」などという名前で呼ばれます。
(「ネロリ」というのは、精油のことを指す名前です)
健康のために役立てる
- ストレスをやわらげるためのハーブティーとして最適です。
- 緊張や不安を落ち着けるためには、リンデン、ラベンダー、バレリアンをブレンド。
- 落ち込んだ気持ちが続くときは、リンデン、ローズ、スペアミントをブレンド。
- 眠れない夜には、リンデン、パッションフラワー、ホップをブレンド。
- 気分を華やかに高揚させる力もすぐれています。
- 幸福感、満足感を高めるには、ローズ、ラベンダー、レモンバーベナ、バニラをブレンド。
- 元気に1日をスタートするためには、オレンジピール、ローズマリー、モナルダ、レモンバームをブレンド。
- 頭の中をスッキリと冴えた状態にするには、ハイビスカス、ジャスミン、ペパーミント、レモンマートルをブレンド。
- ストレスから胃の調子がよくないときにも役立ちます。
- オレンジピール、カモミール・ジャーマン、コリアンダー、レモングラスをブレンドすると良いです。
- PMSに関する不調にも◎。
- ラズベリーリーフ、カモミール・ジャーマン、ネトルをブレンド。
美容のために役立てる
- オレンジフラワーの浸剤(ハーブティー)は、生き生きした肌のためのスキンケアにも利用できます。
湿布を作ると良いです。
ハーブとしての歴史と伝承
13~14世紀頃、スペインの錬金術師が「生命の水(aquavitae/蒸留酒のこと)」にレモン、オレンジの花、ローズなどを浸け込んで「ロー・クレレット」という薬酒を作ったことが記録されています。
14~17世紀にペストなどが流行したとき、オレンジの花は貴重な薬として頼りにされたハーブのうちの1つでした。
病気を寄せ付けないために、人々はネロリ精油を使用し、オレンジフラワーのハーブティーを飲み、オレンジフラワーウォーターを身体に塗りました。
地中海・北アフリカ地域や中東諸国では、オレンジフラワーウォーターを美容と健康のために活用してきた長い歴史があります。
フランスでも、とくにオレンジフラワーウォーターは、神経を鎮静させたり活力を出したりさまざまな不調を癒したりするために長いあいだ使用されてきました。
また、快い香りを放つ化粧水やスキンケアの材料として、現在でも世界中で広く活用されています。
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Cooking 料理
風味 | フルーティフローラルの甘い香り、おだやかでさっぱりした風味 |
主な特徴 | 甘いシロップや素朴な焼き菓子に、華やかな香りをつける |
作り置き | バター、ハニー、シロップ、アルコール |
オレンジフラワーの甘い香りは、デザートやドリンクの風味づけに幅広く利用することができます。
オレンジの花そのものを使うこともできますが、より香り高く使い勝手の良いオレンジフラワーウォーターを使えば活用範囲がさらに広がります。
市販されているオレンジフラワーウォーターの多くは「雑貨」「化粧品」として扱われています。
オレンジフラワーウォーターを料理に使ったりドリンクに添加したりするときは、口に入れる用途に使えるオレンジフラワーウォーターであることを確認しましょう。
何世紀も前から、イスラム料理ではヤギやラムなどのスパイシーな肉料理に入れたり、パンやケーキなどの甘い焼き菓子に混ぜたりしてオレンジフラワーウォーターを使っていました。
このような習慣は、北アフリカ、地中海地域、南ヨーロッパという経路で、徐々に広まっていきます。
そして16~18世紀にはイタリアやフランスでも、お菓子の風味づけにオレンジフラワーウォーターを使用するようになっていました。
(マリー・アントワネットは、ココアにオレンジフラワーの香りをつけるのが好きだったそうです)
現在でも中東、北アフリカの国々では、料理の風味付け、とくに甘いデザートや焼き菓子にオレンジフラワーウォーターを使用し、飲み水の匂い消しや手を洗う水の香り付けにも日常的に活用しています。
使い方のコツ
- オレンジフラワーは、主にハチミツやシロップの香りづけに使用します。
- ローズマリーやバニラなど、ほかのハーブ・スパイスを足しても良いです。
- 香りのついたハチミツなどは、ドリンクに入れたり、パンに塗ったり、デザートやドレッシングの材料に使ったりできます。
- オレンジフラワーウォーターは、香りづけをしたいあらゆる場面で利用することができます。
- 紅茶、ハーブティー、ミネラルウォーターなどのフレーバー。
- カスタード、アイスクリーム、キャンディ、クッキーやケーキの生地に混ぜる。
- サラダやフルーツにかける。
世界の料理
オレンジフラワーウォーターは、中東の甘いお菓子によく使用されます。
材料のシロップに香りをつけることが多いです。
- バクラヴァ/Baklava
トルコのほか、主に中東地域で広く作られている焼き菓子。
オレンジフラワーウォーターやローズウォーターで香りをつけた甘いシロップを使います。
- アシュタクリーム/Ashta cream
レバノンのさまざまなお菓子に使われる、繊細な味わいのクリーム。
オレンジフラワーウォーターで香りづけしてあります。 - カターイフ/Qatāif
レバノンなど、中東地域で作られているお菓子。
アシュタクリーム、チーズ、ナッツなどをパンケーキ生地で包んで揚げ(揚げないこともある)、甘いシロップに浸します。 - ホワイトコーヒー/White coffee
レバノンとヨルダンでは、お湯にオレンジフラワーウォーターを混ぜたものを「ホワイトコーヒー」と呼びます。
北アフリカ、南ヨーロッパの地中海沿岸諸国でも、料理やお菓子にオレンジフラワーウォーターを使います。
コーヒーやカクテルなど、ドリンクに使うこともあります。
- チェバキア/Chebakia
モロッコでラマダン明けに食べる揚げ菓子。
オレンジフラワーウォーターやサフランで香りづけしたハチミツに浸し、ゴマを振ります。 - カーブ・エル・ガザル/Kaab el ghazal
モロッコの三日月型のお菓子。
アーモンドペーストが中に入っていて、オレンジフラワーウォーターやシナモンで生地に風味をつけています。 - パスティエラ/Pastiera
イタリアのナポリで作られるタルト。
伝統的なイースターのお菓子で、オレンジフラワーウォーターで香りがつけてあります。 - ロスコン・デ・レジェス/Roscón de reyes
スペインで1月6日に食べるリング型のケーキ。別名「キングケーキ」
生地にオレンジフラワーウォーターを混ぜて香りをつけます。
フランスには、オレンジフラワーウォーターを使ったパンや焼き菓子がたくさんあります。
- フーガセット/Fougassette
南仏グラースの名物パン。
ふわっとしたやわらかいパンで、オレンジフラワーウォーターを加えて焼いてあります。 - ニフレット/niflette
フランス、プロヴァンの伝統菓子。
オレンジフラワーウォーターで香り付けしたカスタードクリームを詰めた、ひと口サイズのパイ。
万聖節(11月1日)に食べる習慣があります。 - ナヴェット/Navette
フランス、マルセイユの伝統菓子です。
オレンジフラワーウォーターで香りをつけた小さな舟型の硬いビスケット。
聖燭祭(2月2日)に食べる習慣があります。
オレンジブロッサムハニー
ミツバチがオレンジの花から集めたハチミツは、香り高く繊細な風味が人気です。
オレンジ・ビターの花から採れるハチミツは、主に地中海地域で生産されています。
アメリカなどでは、オレンジ・スイートの花からハチミツを採取しています。
このハチミツは、「チョーサーミード/Chaucer’s Mead」というカリフォルニア産のハチミツ酒などにも使用されています。
アイディア
food
- フィンガーボールやおしぼりに、オレンジフラワーウォーターを加える。
- バター、オレンジフラワーウォーター、アーモンドペースト、固茹でにした卵黄、砂糖を混ぜ合わせて濾す。
これは「フェアリー・バター」「オレンジ・バター」などと呼ばれ、18世紀のイギリス&アメリカで人気でした。
dessert
- オレンジフラワーとバニラで香り付けしたシロップを作り、フルーツサラダにかけて冷やす。
- 泡立てたスイートクリーム、チーズ、オレンジフラワーウォーター、砂糖を混ぜて濾し、凍らせる。
これは18世紀に人気があったデザートで、食べるときにストロベリーやラズベリーなどを添えていました。
冬はこれに火を通し、シナモンやカカオで味つけしたりもしていました。
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Gardening 園芸
ここでは、オレンジの花について説明します。
樹木全体の特徴は、「オレンジ・ビター」のページにまとめています。
STORY
ギリシア神話では、結婚の女神ヘラがゼウスと結婚するときにオレンジの花を贈られたといわれています。(ローマ神話では、女神ユーノーがユピテルと結婚するとき)
また、たくさんの果実と同時にたくさんの花を咲かせるその豊かさは、多産の象徴ともいわれました。
こうして真っ白なオレンジの花は「結婚」「多産」「幸福」「純粋」のシンボルとして、花嫁が身につけたり結婚式のブーケやウェディングケーキを飾る花として、世界中で使われるようになっていきました。
栽培と収穫
- オレンジの花の収穫時期は、4~5月。
花が咲いている期間は短く、3週間くらい。 - 手作業でていねいに集められます。
- 栽培・精油の製造は、昔は主に南フランスで行われていましたが、現在ではチュニジア、エジプト、モロッコなど北アフリカへ移っています。
- とくにチュニジアのナブールは、高品質なネロリ精油で有名です。
チュニジアの気候が南フランスとよく似ているということで、20世紀はじめに香料用のオレンジ・ビターを栽培しはじめました。 - 南フランスでオレンジ・ビターの栽培&精油の抽出をしている町は、ヴァロリス。
名前の由来・伝説
- 「Neroli/ネロリ」というのは、オレンジの花から採った精油の名前です。
- 17世紀イタリアのネロラ(ネロリ)公妃が、この精油を手袋の香りづけに使って流行らせたことから、こう呼ばれるようになりました。
近縁種・間違いやすい品種
「ネロリ」精油といえば、オレンジ・ビターを原料にしたものが一般的ですが、それ以外の柑橘の花を水蒸気蒸留したものも「ネロリ」と呼ぶことがあります。
このようなネロリには、どの柑橘の花を原料にしたかわかるように名前がつけられます。
─ 主なネロリ ─
- Neroli bigarade/ネロリ・ビガラード
オレンジ・ビターの花を使用。
もっとも重要で、もっとも高品質なネロリです。 - Neroli Portugal/ネロリ・ポルトガル
オレンジ・スイートの花を使用。 - Neroli citronnier/ネロリ・シトロニエール
レモンの花を使用。
また「オレンジフラワー」以外にも、柑橘の種類ごとに、花の香りを再現した香料、その花をテーマにした香水が作られています。
Mandarin flower / マンダリンフラワー
香りはオレンジフラワーに近く、スイートなフルーティーフローラル。
マンダリンフラワーを含む香水
「L’Instant de Guerlain Fleur de Mandarine/ランスタン ド ゲラン フルール ド マンダリン(Guerlain、2007)」
「Carven Le Parfum/カルヴェン ル パルファム(Carven、2013)」
「L’Ile au Thé/イル オ テ(Goutal、2015)」
「Amyris Femme Extrait de Parfum/アミリス ファム エクストレ ド パルファン(Maison Francis Kurkdjian、2019)」
Lemon flower / レモンフラワー
より軽快な甘さ、明るさ、輝きがあり、アニマリックなアンダートーンは控えめです。
レモンフラワーを含む香水
「Fleurs de Citronnier/フルール ドゥ シトロニエ(Serge Lutens、2004)」
「Amyris Femme/アミリス ファム(Maison Francis Kurkdjian、2012)」
「Eros Pour Femme/エロス プール ファム(Versace、2014)」
「Chat Perché/シャ ペルシェ(Goutal、2018)」
Grapefruit flower / グレープフルーツフラワー
よりフレッシュなホワイトフローラルで、アニマリックなアンダートーンは控えめです。
グレープフルーツフラワーを含む香水
「New York Musk/ニューヨーク ムスク(Bond No 9、2012)」
「Dior Homme Cologne/ディオール オム コロン(Dior、2013)」
「Evergreen/エバーグリーン(Jil Sander、2014)」
「Illicit Flower/イリシット フラワー(Jimmy Choo、2016)」
「CK All/シーケー オール(Calvin Klein、2017)」
「A Girl In Capri/ア ガール イン カプリ(Lanvin、2019)」
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