Mandarin
マンダリン
学名 | Citrus reticulata Blanco |
科名 | ミカン科 |
別名 | ─ |
原産地 | 中国かインド |
主産地 | イタリア、ブラジル、スペイン、中国、アルゼンチン |
使用部位 | 果皮、果実 |
採油部位 | 果皮 |
採油法 | 低温圧搾 |
採油率 | 0.7~0.8% |
性状 | 緑色~オレンジ色~赤褐色 |
主な成分 | d-リモネン、γ-テルピネン、β-ミルセン、α-ピネン、アントラニル酸ジメチル、シネンサール、オクタナール、デカナール |
香り | 甘くて優しいフルーティシトラス、ネロリ様のフローラル、グリーンのニュアンスがある |
揮発性 | トップノート |
香り強度 | 弱め |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | フローラル、グリーンニュアンスのある甘いフルーティシトラス |
主な 使用法 | さまざまな香調のフレッシュなトップノート。 香りにまろやかな甘さを加える。 |
使用量 | 多めにブレンドしても良いし、ほかの柑橘類と組み合わせて使っても良い。 |
注意 | 酸化、変質しやすい。 |
ほかの柑橘類と同じように、果皮を低温圧搾(コールドプレス)することで精油が得られます。
香りの成り立ち
マンダリンには、65~85%くらいの割合でd-リモネンが含まれています。
ほかにも、γ-テルピネン、β-ミルセン、α-ピネンなどのテルペン類も多く含まれていますが、これらは香りが弱く、マンダリン全体の香りに大きく影響を与えているわけではありません。
- d-リモネン
フレッシュでみずみずしいシトラスの香り。
柑橘やフルーツ系の香料にジューシーで爽やかな印象を与えるためにも使用されます。- オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ユズ、ライム、柑橘以外ではセロリシード、エレミ、ファー、キャラウェイ、ブラックペッパーなどに含まれています。
- γ-テルピネン
爽やかなハーバル、シトラス。- セイボリー、アジョワン、ティートリー、ライム、レモンなどに含まれています。
- β-ミルセン
セロリのようにピリッとスパイシーで軽い、バルサミックな香り。- セロリリーフ、パセリリーフ、ホップ、ローズマリー、フランキンセンスなどに含まれています。
アントラニル酸ジメチルは、マンダリン特有のフルーティフローラルな香気を作り出す重要成分です。
この成分を含んでいるおかげで、マンダリンはほかの柑橘よりも甘くやわらかく繊細な香りになっています。
- アントラニル酸ジメチル
オレンジフラワーやグレープ様のフルーティな香り。
フローラル香料や、グレープ、ベリー、バナナ、アプリコットなどのフレーバーにも使用されます。- プチグレン・マンダリン(マンダリンリーフ)の主成分です。
柑橘類の例にもれず、マンダリンの香りにもアルデヒド類が大きく影響を与えています。
このアルデヒド類の構成は、オレンジ・スイートに似ています。
- シネンサール
オレンジ様の甘くジューシーな香り。みずみずしく溢れる果汁をイメージさせます。 - オクタナール(アルデヒドC8)
別名「オレンジアルデヒド」 - デカナール(アルデヒドC10)
オクタナールもデカナールも、ファッティなオレンジ様の香りでパクチーのようなニュアンスがあります。
希釈すると柑橘果皮のフレッシュグリーンな香りになり、フローラル系香料やシトラスコロンなどにも使用されます。
相性のよい香り
- どんな柑橘精油とも好相性ですが、グレープフルーツやレモンなど、苦み・酸味の強いシトラスノートをやわらげるのにも使えます。
- マンダリンには少しネロリのようなフローラルニュアンスがあるので、ネロリと合わせるとよくなじんで華やかな香りを演出できます。
- バジル、ローズマリー、プチグレンなど、アロマティックグリーン系の香りもなじみが良いです。
- やさしい雰囲気の香りを作りたいときは、カモミール・ローマン、ラベンダー、マージョラム・スイートなどがオススメです。
- オレンジ・スイートと同様に、シナモン、クローブ、ナツメグなどのスパイス類ともよく合います。
ブレンドテクニック
- 香りの第一印象であるトップノートに、甘さ、華やかさ、派手さ、フレッシュ感などを与えます。
- 爽やかなオーデコロンから重厚な香水まで、さまざまなタイプの香りに使用されています。
- フレッシュなシトラスノートに加えて芳醇なフルーティフローラル、グリーンニュアンスも持っているので、深みのある官能的な香調にもよく合います。
- ほかの柑橘精油の香りが単調に感じるとき、少し足すとよいです。
- 香りをマイルドにするので、刺激の強い香りを落ち着かせたいとき、ドライでビターな印象をやわらげたいとき、粗さやとがった感じを取りたいときに使えます。
- ネロリを使ったフローラルタイプやブーケ調の香りには、とくによく使用されます。
使用されている香水
- Lime Basil & Mandarin/ライム バジル&マンダリン(Jo Malone London、1999)
ピリッとシャープなライム+くっきりとしたグリーンノートのバジル+明るくフレッシュなマンダリンがバランスよく組み合わされた、快いアロマティックシトラスのフレグランス。 - L’Instant de Guerlain/ランスタン・ド・ゲラン(Guerlain、2003)
マンダリンのシトラスノートに、マグノリアやイランイランのクリーミーなフローラルノート、繊細なハニー、アンバー、バニラが組み合わされた、温かくてフェミニンなフレグランス。 - Viva la Juicy/ビバ ラ ジューシー(Juicy Couture、2008)
マンダリンのはじけるようなトップノートと、キャラメル、バニラ、プラリネという甘いグルマンノートのハーモニー。
ガーデニア、ハニーサックル、ジャスミンのホワイトフローラルが軸になっています。 - Sauvage Parfum/ソヴァージュ パルファン(Dior、2019)
みずみずしくフレッシュなマンダリンと、スリランカ産サンダルウッド、フランキンセンス、トンカビーンのオリエンタルテイストをミックスさせたメンズフレグランス。
温かく豊かでエレガントな香り。 - Thé Yulong/テ ユーロン(Giorgio Armani、2020)
グリーンティー(緑茶)とマンダリンの爽やかな香り、ブラックティー(紅茶)とベチバーのスモーキーな香り、その2つのコントラストがユニークなフレグランス。
その他マンダリンを含む香水
「Aqua Allegoria Mandarine Basilic/アクア アレゴリア・マンダリン バジリック(Guerlain、2007)」
「4711 Acqua Colonia Mandarine & Cardamom/4711 アクアコロニア マンダリン&カルダモン(4711、2012)」
「Eau de Mandarine Ambrée/オー ドゥ マンダリン アンブレ(Hermès、2013)」
「Mandarino di Amalfi/マンダリーノ ディ アマルフィ(Tom Ford、2014)」
「Infusion de Mandarine/インフュージョン ドゥ マンダリン(Prada、2018)」
「Sundazed/サンデイズド(Byredo、2019)」
「Coco Mademoiselle L’Eau Privée/ココ マドモアゼル ロー プリヴェ(Chanel、2020)」
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 鎮静、高揚、緩和、鎮痙、抗炎症、消化器系機能調整、神経バランス調整 |
適用 | 不安、緊張、心身の疲労、食欲がない、眠れない、消化器系の問題、巡りを良くする、皮膚の再成長サポート、皮膚を柔らかくする、菌対策 |
注意 | ─ |
香りが甘く柔らかく心地よいマンダリンは、アロマテラピーでも幅広く利用されます。
作用は、オレンジ・スイートとよく似ています。
精神のために役立てる
- 柑橘類の中でもっとも刺激が少ない甘い香りなので、穏やかにリラックスしたい時間にぴったりです。
- 高ぶった気持ちを鎮め、深い安心感に包まれたいときは、ラベンダーとカモミール・ローマンをブレンド。
- 怒り、後悔、自己嫌悪のような気持ちを軽くしてくれるのは、ネロリかプチグレンとのブレンド。
- 気持ちが上がったり下がったり不安定なときは、クラリセージとサンダルウッドをブレンド。
- 一方で、柑橘ならではの明るい香りは、人を元気にする力があります。
- 朝の目覚まし、エネルギーチャージには、ライムとレモングラスをブレンド。
- 気分転換、リフレッシュには、グレープフルーツとバジルをブレンド。
- 前向きな気持ちやモチベーションをアップさせるには、ベルガモットとジャスミンをブレンド。
身体のために役立てる
- 消化器系の不調に幅広く役立ちます。
- 胃腸の調子をととのえるには、パチュリとブラックペッパーをブレンドします。
- 食欲が出ないときには、オレンジ・スイートとジンジャーをブレンドするのが◎。
- PMSがつらいときにも。
- イランイラン、クラリセージ、ゼラニウムなどをブレンドすると良いです。
美容のために役立てる
- 乾燥肌、脂性肌、混合肌のどれにも使用することができます。
- 乾燥肌には、カモミール、ローズをブレンド。
- 脂性肌には、サイプレス、フランキンセンスをブレンド。
- 皮膚の生まれ変わりをサポートし、肌をやわらかくします。
- 妊娠線、傷あとなどのケアに、ネロリ、ラベンダーと組み合わせて使用されます。
- 巡りを良くするためのボディトリートメントにも使えます。
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Herb therapy ハーブセラピー
乾燥させたマンダリンピール(果皮)は、オレンジピールと同様に使用できます。
使い方の詳細は、オレンジ・ビターのページにまとめています。
ハーブとしての歴史と伝承
「陳皮(チンピ)」というのは、マンダリンまたはマンダリン・サツマ(温州ミカン)の成熟した果皮を乾燥させたものです。
陳皮は、食欲や消化を促したり気の流れを調節したりするために、中国で伝統的に使用されてきました。
インドでも、胃腸や喉の不調を癒すために長いあいだ使用されています。
Cooking 料理
風味 | まろやかな酸味と、甘く芳醇な香り |
主な特徴 | 豊かな柑橘風味を与える |
作り置き | ビネガー、オイル、シロップ、アルコール |
マンダリンの甘い果実は、そのまま食べたりフルーツサラダに使ったり、アイスクリーム、ソルベ、ジャムの材料にしたりもできます。
マンダリンの果皮は「マンダリンピール」「陳皮(乾燥させたもの)」と呼ばれ、料理、お菓子、ドリンクに、スパイスとして使用されます。
ローズマリーやバジルなど他のハーブと組み合わせて、ドレッシングやソース、シロップなどを手作りするのもオススメです。
世界の料理
- フリュイ・コンフィ/Fruits Confits
南仏で作られるフルーツの砂糖漬け。
マンダリンは、果皮に穴を開けて果実全体にシロップを染み込ませます。
そのまま食べることもできますが、お菓子作りの材料に使われることが多いです。 - 五香粉
中国のミックススパイス。
スターアニス、クローブ、フェンネルなどといっしょに、陳皮もブレンドされることがあります。 - 七味
日本のミックススパイス。
唐辛子、山椒、ゴマなどといっしょに、陳皮もよくブレンドされます。
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Gardening 園芸
種類 | 常緑小高木 |
背丈 | 高さ3~8m |
環境 | 比較的耐寒性があるが、温暖で適度な湿気のある気候でよく育つ |
STORY
マンダリンは、ミカン属(Citrus /柑橘類)の原種の1つです。
ミカン属は異なる種同士でも受粉が可能であり、人間の移動や貿易によってほかの柑橘に出会うと必ずといってよいほど異種交配が起きるため、柑橘果樹の種類は膨大で、その区別も複雑です。
しかし商業的に栽培されているものはほぼすべて、①マンダリン(Citrus reticulata)、②シトロン(C. medica)、③ポメロ(C. maxima)のどれかを祖先に持ちます。(またはその掛け合わせ)
マンダリンは、この原始的な柑橘3種の中ではいちばん遅く、また子孫であるオレンジよりもっと後の18世紀末にヨーロッパへ伝わりました。
姿かたち
- 直径5~8cmくらいの、扁円形の小さな果実。
- 果皮は薄く、中果皮(裏側の白い部分)の厚みはほとんどなく、果実からかんたんにはがれて剥きやすいのが特徴です。
- 果実は甘く、種子はないか、あっても少し。
- クリーム色の小さな花には、甘くて良い香りがあります。
マンダリンの花を香料として使用することはあまりありません。 - ほかの柑橘の葉よりも小さめな、光沢のある葉をたくさんつけます。
枝にはトゲがあります。 - マンダリンの葉と小枝を水蒸気蒸留した精油のことを、「プチグレン・マンダリン」といいます。
栽培と収穫
- 柑橘類の中では、寒さや霜に対して抵抗力があります。
- 暑くて湿気の多い気候でもよく育ちますが、もう少し涼しい温帯気候のほうがより多く精油を含む良質のマンダリンになります。
- 果実の収穫期は、秋~冬。
- 精油用には主に収穫期はじめの果実が使用され、終わりのほうの甘い果実は主に食用にされます。
- 早摘みの未完熟果実を「マンダリン・グリーン」、熟した果実を「マンダリン・イエロー」、完熟した果実を「マンダリン・レッド」と呼ぶことがあります。
- 熟度が増すにつれて、フルーティ感が増します。
- 熟度が増すにつれて、精油の収量は減っていきます。
名前の由来・伝説
- 「Mandarin/マンダリン」というのは、もともと昔の中国の官僚たちを指す名前でした。
それが果実の名前になった理由には、2つの説があります。- 彼らがこの果実を主君に捧げていたから。
- または、彼らが着ていたオレンジ色の服がこの果実の色にそっくりだったから。
- 学名の「reticulata」は、「網状の」という意味です。
マンダリンの中果皮(果皮の内側の白い部分)が、網のように果実を包み込んでいることからきています。
近縁種・間違いやすい品種
「マンダリン(Citrus reticulata)」は、ミカン属(Citrus)の原種の1つです。
マンダリンはさまざまな経路で世界に広がっていきましたが、その途中で数多くの交配が起きて、各地で特徴の異なる「マンダリン」が生まれました。
19~20世紀は、それらはすべて「マンダリン(Citrus reticulata)」から派生した同一種とみなされていましたが、その後こまかく分類されました。
─ 新たに分類された代表的な種 ─
- Citrus deliciosa /マンダリン・メディテラニアン
インド→中東→地中海地域へ伝わったマンダリン。 - Citrus unshiu /マンダリン・サツマ
インド→中国→日本へ伝わったマンダリン。 - Citrus tangerina /タンジェリン
インド→モロッコ→アメリカへ伝わったマンダリン。 - Citrus clementina /クレメンタイン
マンダリン・メディテラニアンとオレンジ・スイートの交配種。
マンダリン・メディテラニアン
Mandarin Mediterranean / マンダリン・メディテラニアン
学名 | Citrus deliciosa Ten. |
科名 | ミカン科 |
別名 | 地中海マンダリン、ウィローリーフマンダリン、ソーニー |
採油法 | 果皮を低温圧搾 |
精油成分 | d-リモネン、δ-テルピネン、アントラニル酸ジメチル |
香り | フレッシュな甘さのあるシトラスフルーティー。 トップノート。 |
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Mandarin Satsuma / マンダリン・サツマ
学名 | Citrus unshiu (Swingle) Marcow. |
科名 | ミカン科 |
別名 | 温州(ウンシュウ)ミカン |
採油法 | 果皮を低温圧搾 |
精油成分 | d-リモネン、γ-テルピネン、β-ミルセン、α-ピネン、ネラール、β-ピネン、テルピノレン、p-シメン、デカナール |
香り | フレッシュでジューシーな、甘酸っぱいミカンの香り。 トップノート。 |
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Tangerine / タンジェリン
学名 | Citrus tangerina Tanaka |
科名 | ミカン科 |
別名 | ─ |
採油法 | 果皮を低温圧搾 |
精油成分 | d-リモネン、β-ミルセン、α-ピネン、サビネン、デカナール、オクタナール |
香り | フレッシュでデリケートなシトラスノート、少しハニー様の甘さがある。 トップノート。 |
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タンジェリンを含む香水
「Fire & Ice/ファイアー&アイス(Revlon、1994)」
「Le Parfum de Therese/ル パルファム ドゥ テレーズ(Frederic Malle、2000)」
「Jardin d’Amalfi/ジャルダン ダマルフィ(Creed、2011)」
「Trench/トレンチ(Yves Saint Laurent、2015)」
「Nolita/ノリータ(Bond No.9、2017)」
「Chloé Rose Tangerine/クロエ ローズ タンジェリン(Chloé、2020)」
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Clementine / クレメンタイン
学名 | Citrus clementina hort. |
科名 | ミカン科 |
別名 | タンジェリン・アルジェリアン |
採油法 | 果皮を低温圧搾 |
精油成分 | d-リモネン、β-ミルセン、リナロール、α-ピネン |
香り | 爽快でいてマイルド、すがすがしさの中にほんのりとした甘さ。 トップノート。 |
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クレメンタイン
クレメンタインを含む香水
「Cinéma/シネマ(Yves Saint Laurent、2004)」
「Little Italy/リトル イタリー(Bond No.9、2004)」
「Clémentine California/クレメンタイン カリフォルニア(Atelier Cologne、2016)」
─ PR ─