Lime

ライム

植物DATA
学名Citrus aurantiifolia (Christm.) Swingle
科名ミカン科
別名キーライム、ライム・メキシカン、ウエストインディアンライム
原産地北インド、マレーシア
主産地メキシコ、西インド諸島、アメリカ、エジプト、インド
使用部位果皮、果実
精油DATA
採油部位果皮 / expressed oil
果皮または果実 / distilled oil
採油法低温圧搾 / expressed
水蒸気蒸留 / distilled
採油率0.1% / expressed
0.35~0.45% / distilled
性状黄色~緑褐色 / expressed
無色~緑黄色 / distilled
主な成分d-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネン、α-ピネン、ゲラニアール、ネラール、酢酸ネリル、1,8-シネオール、ゲルマクレンB、デカナール / expressed

d-リモネン、γ-テルピネン、1,8-シネオール、α-テルピネオール、テルピノレン、β-ピネン、ゲラニアール、ネラール、デカナール / distilled
香りシャープでフレッシュなシトラスノート、甘さとグリーンニュアンスもある / expressed
ウッディ、ハーバルニュアンスのある甘酸っぱいシトラスノート / distilled
揮発性トップノート
香り強度弱め

ライムの甘酸っぱいシトラスノートには、とびきりフレッシュでシャープなキレがあります。

ドリンクのフレーバーに使われることが多く、とくにトロピカルカクテルにはライムの爽快感が欠かせません。

南国がテーマの明るい香りや、ドライで爽やかなメンズフレグランスにもよく使われています。

アロマテラピーでは、アクティブな気分を高めたいときに使うことができます。

香料 | アロマテラピー | ハーブ | 料理 | 園芸

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Fragrance 香料

香りの
性質
サワー、スイート、グリーン感のあるフレッシュシトラス
主な
使用法
さまざまな香調のフレッシュなトップノート。
シトラスノートの変調剤、メンズフレグランス。
使用量多量に使用しても、少量を効果的に使っても良い。(圧搾精油は使用制限あり)
注意光毒性あり。使用限度量は、香水全体の0.7%まで。 / Lime oil expressed
酸化、変質しやすい。

ライム精油を得る方法は、主に3種類あります。

  • 果皮の低温圧搾(コールドプレス)
  • 果皮の水蒸気蒸留
  • ライムジュースの副産物として、ジュースを除いた部分の水蒸気蒸留

最高品質の香りは①の圧搾ライムですが、生産量が圧倒的に多いのは③の蒸留ライムです。

主に①はフレグランス③は食品フレーバーに使用されます。


光毒性のある成分を除去した「FCF(フロクマリンフリー)オイル」や、変質しやすいテルペン類を除去した「テルペンレスオイル」もあります。

ライムスライス

香りの成り立ち

ほかの柑橘と同じように、ライム精油に含まれている成分も大部分はテルペン類です。
このパートの構成は、レモン精油とよく似ています。

テルペン類は揮発性が高く香りが弱いのが特徴で、たくさん含まれていても全体の香りにそれほど大きな影響は与えません。

  • d-リモネン
    フレッシュでみずみずしいシトラスの香り。ライム精油には45~60%ほど含まれています。
    • オレンジグレープフルーツレモンマンダリンユズ、柑橘系以外ではセロリシードエレミファーキャラウェイブラックペッパーなどに含まれています。
  • β-ピネン
    針葉樹や干し草のようなニュアンスがある、ドライウッディ、グリーン、シトラス。
    • ガルバナムパインブラックカラントバッドナツメグクミンなどに含まれています。
  • γ-テルピネン
    爽やかなハーバル、シトラス。
    • セイボリーアジョワンティートリーマンダリンレモンなどに含まれています。

ハニーフローラル、カンファー系ハーバルなどの特徴的な成分は、ライムの香りに個性を与えています。

ゲルマクレンBは、ライムとレモンの香りを分ける重要な成分です。

1,8-シネオールは、水蒸気蒸留のライム精油により多く含まれています。

  • 酢酸ネリル
    ラズベリーやハニーノートが感じられる甘いフローラル。ローズ、オレンジフラワー様。
    フローラル系香料のほか、ベリー類などのフルーツフレーバーにも使用されます。
    • ヘリクリサムフェネグリークメリッサオレンジフラワーアブソリュートプチグレンなどにも含まれています。
  • 1,8-シネオール
    フレッシュで清涼感のあるユーカリ香。刺激的で拡散性がありますが、残香性はありません。
    ハーバル系香料、コーラ、ライム、ミント系フレーバーに使用されます。
    • ユーカリニアウリカルダモンマートルローズマリーなどにも含まれています。
  • ゲルマクレンB
    甘いウッディ、スパイシーなどの香りに加え、ゼラニウムのような雰囲気も持っています。

柑橘精油ならではの明るく華やかな香りには、アルデヒド類が大きく影響しています。

ライムの香りで重要なはたらきをしているのは、シトラールとデカナールです。
(ゲラニアールとネラールをまとめてシトラールと呼びます)

  • シトラール(ゲラニアール+ネラール)
    強いレモン様の爽やかな香り。ユーカリのようなハーバルニュアンスもあります。
    • レモンマートルレモングラスリトセアメリッサレモンなどに含まれています。
  • デカナール(アルデヒドC10
    ファッティなオレンジ様。パクチーのようなニュアンスもありますが、希釈すると柑橘果皮のフレッシュグリーンな香りになります。

水滴がついたライムとミント

水蒸気蒸留で抽出したライム精油は、圧搾精油とは成分構成がかなり異なります。

水蒸気蒸留ライムの特徴として、以下の比率が圧搾ライムに比べて大幅に多いことが挙げられます。

  • パイン様のウッディシトラスノートを持つ、α-テルピネオールテルピノレンなど
  • ユーカリ様のフレッシュなハーバルノートを持つ、1,8-シネオール

そのため、圧搾ライムが鮮やかなレモン寄りの香りなのに対し、水蒸気蒸留ライムはウッディニュアンスの強いシトラスノートになる傾向があります。

相性のよい香り

  • ライムの香りにはユーカリ様ニュアンスがあるため、ユーカリ系の香り(ユーカリカユプテニアウリなど)とよく合います。
  • リトセアレモングラスを少しだけ足すと、シトラスノートをくっきりと際立たせることができます。
  • ライムが持つフローラルノートは、ローズネロリイランイランなどとよくなじみます。
  • ジャスミンサンダルウッドパチュリなど、温かみのある濃厚な香りとも相性が良いです。
  • ペパーミントジュニパーセロリジンジャーカルダモンなどを組み合わせると、トロピカルカクテル風になります。
  • レモンナツメグシナモンジンジャーコリアンダーバニラなどをブレンドすると「コーラ風」
    (ライムの量を多くする)
  • ジンジャー多め、レモンシナモンクローブなどをブレンドすると「ジンジャーエール風」

ブレンドテクニック

  • シトラスノートとして単独で使われることはあまりなく、たいていほかの柑橘類と組み合わせて使用されます。
  • シャープで鮮烈な香りですが、レモンよりはマイルドで甘さも強いです。
    「オレンジよりシャープで、レモンより甘い」シトラスノートがほしいときに便利です。
  • フローラル、グリーンなどのニュアンスもあり、柑橘精油の変調剤としても使えます。
  • オーデコロンのような軽い香りだけでなく、重いウッディ、バルサム、アニマル調の香りにも、爽やかなトップノートとしてブレンドされます。
  • ピリッとした爽快感を演出するため、メンズフレグランスやアフターシェーブなどにもよく使用されます。
ライムの果実と花がついた枝

使用されている香水

  • Eau d’Ete/オーデテ(Nicolai、1997)
    シュワッとしたメキシカンライム+シナモンというパンチの効いたトップノート。
    徐々にジャスミンやムスクのやわらかな香りが出てきます。
  • Lime Basil & Mandarin/ライム バジル & マンダリン(Jo Malone London、1999)
    ライムのシャープな香りを存分に楽しめる爽やかなフレグランス。
    バジルやタイムのグリーン・ハーバルノートと混ざり合って、温かくユニセックスな香調になっています。
  • Burberry Brit/バーバリー ブリット(Burberry、2003)
    シュガーアーモンドとバニラの甘くてクリーミーなグルマンノート。
    トップノートのフレッシュなライムが全体の甘さを効果的に引き立てています。
  • Virgin Island Water/ヴァージン アイランド ウォーター(Creed、2007)
    カリブ海の熱い風を感じさせるトロピカルカクテルのようなフレグランス。
    ライム、ココナッツ、ラム酒が作り出す南国のハーモニーは、心地よいリゾート感と情熱的な気分を華やかに盛り上げてくれます。
  • Eau de Citron Noir/オー ドゥ シトロン ノワール(Hermès、2018)
    中東でスパイスとして使われる黒ライム(乾燥ライム)をテーマにしたレアな香水。
    紅茶やガイアックウッドと組み合わせたドライスモーキーな香りがとてもクセになります。

その他ライムを含む香水

「Royall Lyme/ロイヤル ライム(Royall Lyme Bermuda、1957)」
「Extract of Limes/エクストラクト オブ ライム(Penhaligon’s、1963)」
「Guerlain Homme/ゲラン オム(Guerlain、2008)」
「Batucada/バチュカーダ(L’Artisan Parfumeur、2011)」
「Aqua Celestia/アクア セレスティア(Maison Francis Kurkdjian、2017)」
「Pacific Lime/パシフィック ライム(Atelier Cologne、2018)」

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Aromatherapy アロマテラピー

作用高揚、刺激、鎮静、鎮痛、抗炎症、収れん、止血、消化器系機能調整、消臭、防虫
適用集中力アップ、心身の疲労、食欲がない、巡りを良くする、皮膚の生まれ変わりサポート、空気清浄、菌対策
注意圧搾油は光毒性あり。

華やかなライムの香りは、アロマテラピーでも人気です。

ただし、圧搾ライム精油はフロクマリン類を多く含むため、肌に使用する場合は水蒸気蒸留のライム精油を使いましょう。

ライムの白黒の植物画
‘Lime—Citrus medica, var. acida’ 1911

精神のために役立てる

  • 冷静で研ぎ澄まされた精神状態へと導きます。
    • 集中力を高めるには、バジル(orローズマリー)とパインをブレンド。
    • 使いすぎた頭と心をリフレッシュするには、ペパーミントネロリをブレンド。
  • アクティブなエネルギーを活性させます
    • 行動力をブロックしている不安を取り除くためには、イランイランベンゾインをブレンド。
    • 無気力、無感動には、シナモンジャスミンをブレンド。
    • 元気を出したい朝には、ユーカリレモングラスをブレンド。

身体のために役立てる

  • 溜まったものを動かし、巡りを良くします。
    • 鼻詰まりなどで苦しいときは、カユプテラベンダーをブレンド。
    • スタイル維持のためのボディケアには、ジュニパーローズマリーをブレンド。
  • 消化器系の機能をサポートします。
    • 食欲を増すには、ジンジャーマンダリンをブレンド。
    • 胃が重たいときには、コリアンダーカモミールをブレンド。

美容のために役立てる

  • 脂性肌にも乾燥肌にも使えます。
    • 脂性肌には、同じ収れん作用を持つゼラニウムサイプレスをブレンド。
    • 乾燥肌には、肌を柔らかくするネロリサンダルウッドをブレンド。
  • ヘアケアにも同様に使えます。
    • 脂っぽい髪には、ベルガモットイランイランをブレンド。
    • 乾燥しやすい髪には、ラベンダーカモミールをブレンド。
  • メンズコスメにもよく使用されます
    • アフターシェーブローションには、ローズシダーウッドパチュリをブレンド。

その他の使い方

  • 空気をきれいにするためにディフューザーで焚いたり、ルームスプレーを作ったりできます。
    • ユーカリセージペパーミントをブレンドします。

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Herb therapy ハーブセラピー

ライムの果皮をハーブティーなどに使用することもありますが、柑橘果皮をハーブとして利用する場合、ふつうはオレンジやレモンが使われるのが一般的です。

ただし中東諸国では、黒ライム(下記料理コーナーを参照)を煮てティーを作ることが伝統的に行われています。
これは主に消化器系のトラブルに役立つとされています。

ハーブとしての歴史と伝承

ライムの果実を描いた植物画

16~17世紀、長い航海をする際には、壊血病対策のために柑橘類を摂取することが推奨されていました。

これは壊血病がビタミンC不足から引き起こされるからで、柑橘類をジュースにしたりお酒に加えたりして飲むことでビタミンCを補給することができたからです。


この目的のためにはライムも使用され、ライムを積み込んで運ぶ船のことを「ライムジューサー」と呼ぶこともありました。
(ただしこの場合の「ライム」は柑橘類をひっくるめた総称であり、ライムのビタミンC含有量だけでは壊血病対策に十分でないことがわかっています)


ライムはビタミンC以外にもクエン酸やカリウムが多く含まれており、美容や健康に幅広く役立てられています。

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Cooking 料理

風味シャープでキリッとした酸味、爽やかで快い芳香
主な特徴料理やドリンクに爽やかな酸味を与える
作り置きビネガー、オイル、ハニー、シロップ、アルコール

ライムは酸味が強いため生で食べることはありませんが、果皮や果汁は調味料としてなくてはならない存在です。

カクテルやドリンクの風味づけに世界中で使われていますが、食材の風味づけとしては主に中南米やアジアの料理に使用されます。


また中東では、ライムを乾燥させた「黒ライム」が料理スパイスとして一般的に使われています。

黒ライム

たくさんの黒ライム

ライムを乾燥させる習慣は、オマーンで始まりました。
収穫されずに残った果実が干からびて発酵しはじめたのがきっかけといわれています。

─ 黒ライムの作り方 ─
①ライムの果実を塩水で茹でる。
②乾燥&発酵して黒くなるまで天日干しにする。

黒ライムにはサワー、ビター、スモーキーな風味があり、生ライムが持つ甘さは控えめなのが特徴です。
そのかわり、ライムが持つハーバル、フローラル、ウッディな香りの深みが増します。

使い方のコツ

ライムの酸味には、ドライな切れ味と、甘味と苦みが混じった味わい深さがあります。
使い方はレモンとよく似ていますが、レモンの酸っぱさとはひと味違ったアクセントをつけることができます。

  • ライムの果皮(ピール)・果汁(ジュース)は、さまざまな料理やドリンクに使われます。
    • とくにカクテルの材料として多用されます。
      ラム、ジン、ウィスキーにライムを合わせるレシピは数限りなくあります。
    • 砂糖+スパイス+炭酸という組み合わせのドリンクには、ライムの酸味がよく合います
    • チャツネやピクルス、ドレッシング、ソースの材料にもなります。
    • レモン果汁よりも甘くマイルドな酸味は、パイやシャーベットなどのデザートにも最適です。
  • ライムジュースと砂糖を合わせたシロップ(コーディアル)は、ドリンクやお菓子作りに広く利用できます。
    これは手作りすることもできます。
  • ライムの輪切り、くし切りは、料理に添えたりドリンクに入れたりして使います。
ライムの断面のアップ
  • 黒ライムは、料理に複雑な酸味を与えるスパイスとして使用します。
    • 香りと苦みが強い部分は、黒い革みたいな外皮。
    • オイルやアルコールに加えると、香りがしっかりと引き出されます。
      水に加えると、香りは控えめで甘酸っぱい風味になります。
    • 黒ライムのホール(まるごと)は、何ヵ所か穴を開けてから煮込み料理などに加えると、徐々に風味が染み出てきます。
    • 黒ライムのパウダーは、香りが飛びやすいため料理の最後に加えると良いです。
      サラダにかけるのも◎。

相性のよい食材

  • 生のライムも黒ライムも、スパイスと組み合わせて使うとより豊かな風味が生まれます
    • ジンジャーコリアンダーカルダモンなどは、ライムのシトラスノートに複雑なニュアンスを与え、ピリッとした爽快感を強めます。
    • シナモンナツメグオールスパイスなどは、ライムの甘さを深め、温かみをもたらします。
    • アニスフェンネルなどは、ライムのドライなほろ苦さを引き立てます。
    • バニラの豊潤でクリーミーな甘さは、ライムのジューシーな酸味とよく合います。
ライムドロップの広告
1925 by LIFE Magazine

世界の料理

  • ソパ・デ・リマ/Sopa de Lima
    メキシコの伝統的なライムスープ。
    ライム、チキン、スパイスを使ったさっぱりしたスープ。
  • レチェ・デ・ティグレ/Leche de tigre
    ペルーのセビチェ(シーフードマリネ)に使われるマリネ液。
    ビネガーの代わりにライム果汁を使い、唐辛子、ガーリック、ジンジャーなどのスパイスで風味をつけてあります。
  • キーライムパイ/Key lime pie
    アメリカのフロリダ州発祥のパイ。
    キーライム(Citrus aurantiifolia)果汁、卵黄、コンデンスミルクで作ったフィリングをパイ生地に入れ、メレンゲをのせます。
キーライムパイ
キーライムパイ

ライムはありとあらゆるカクテルに使用されますが、なかでも中南米のカクテルには欠かせません。

  • カイピリーニャ/Caipirinha
    ブラジルの代表的なカクテル。
    グラスにライムスライスをたっぷりと入れてつぶし、カシャッサ(ブラジルの蒸留酒)を注いだもの。
  • モヒート/Mojito
    キューバ発祥のカクテル。
    グラスにライムスライスとミントをたっぷりと入れてつぶし、ラム、ライムジュース、炭酸水を注いだもの。
  • ピスコサワー/Pisco sour
    ペルーのカクテル。(チリバージョンも有り)
    ピスコ(ペルー・チリの蒸留酒)、ライムジュース、卵白、シロップをミックスして、ビターズを垂らしたもの。
カイピリーニャのグラス
カイピリーニャ
モヒートのグラス
モヒート
たくさん並んだピスコサワー
ピスコサワー

黒ライムは、オマーン、サウジアラビア、イラク、イランなど、中東の料理に幅広く使用されています。
ホールをシチューやスープの風味づけに使ったり、パウダーを米料理に使ったりします。

  • カブサ/Kabsa
    アラブ諸国で食べられる米料理。
    黒ライム、カルダモン、シナモンなどのスパイス、肉、野菜、ナッツ、レーズンなどが入っています。

食品フレーバー

  • フレーバーには、主に水蒸気蒸留のライム精油が用いられます。
    水に溶けやすいテルペンレスのライム精油も、広く使用されます。
  • ライム精油は、炭酸飲料、アルコール飲料、アイスクリーム、キャンディー、焼き菓子、ゼリー、その他さまざまな加工食品に使用されています。
  • ライム精油は、コーラとジンジャーエールに香りづけするための大事なフレーバーです。

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Gardening 園芸

種類常緑小高木
背丈高さ2~6m
環境日当たりがよく水はけのよい土壌と温暖な気候

STORY

イムは、東南アジアまたは北インドが原産です。

そこからいつどのように広まっていったかは、ライムとレモンを区別せずに記録することが多かったという事情もあり、確かなことはわかりません。

おおまかな経路としては、まずアラブ商人が中東へ運び、そこからエジプト、北アフリカへ渡り、さらに南ヨーロッパへと伝わりました。

そして15~16世紀には、スペインやポルトガルの探検家たちによってアメリカ大陸に持ち込まれました。

姿かたち

ライムの枝の植物画
1833 by Jean–Théodore Descourtilz
  • 直径5~8cmくらいの小さな丸い果実。
  • 熟す前の果皮は濃い緑色で、果肉も緑がかっています。
    熟すと黄色に変わりますが、酸味が弱くなります。
  • 果皮はキメがこまかくなめらかで、爽やかな香りの精油が含まれています。
  • 3cmくらいのクリーム色の花(外側がピンク)が咲きます。
  • 良い香りの緑色の葉をつけ、枝には硬く鋭いトゲがあります。

栽培と収穫

  • 栽培には、たっぷりの水と日当たり、年間をとおして温暖な気候が必要です。
  • 冷たい風からは守りつつ、風通しの良い場所が最適です。
  • 果実は、未熟の緑色のうちに収穫されます
    黄色になるまで熟してしまうと、ライムならではのフレッシュな香りや酸味が抜けてしまいます。
レモン、ライム、グレープフルーツ
左からレモン、ライム、グレープフルーツ。
ライムのサイズは小さめ。

様々な用途

  • ライムを乾燥させた「黒ライム」は、アラブの遊牧民たちが繊維を黒く染めるための染料にもなります。

名前の由来・伝説

  • 「Key lime/キーライム(Citrus aurantiifolia)」は、このライムが帰化した「Florida Keys/フロリダ・キーズ」から名前がとられています。
  • 学名のaurantiifoliaは、「オレンジ・ビター(C. aurantium)のような葉」という意味です。
    葉っぱが似ているため。
  • フランスでは、ライムのことを「citron vert/シトロン・ヴェール(緑のレモンという意味)」と呼ぶことがあります。

世界のイベント・施設

ライムを浮かべたカイピリーニャのグラスが2つ

アメリカのキーウェスト(フロリダ・キーズの西端)では、毎年7月に「Key Lime Festival/キーライムフェスティバル」が開催されます。

期間中は、キーライムパイの早食い競争、キーライムを使った限定フード&ドリンクメニュー、そのほかクッキングクラス、カクテルの試飲会、グッズ販売など、キーライム関連のイベントがたくさん催されます。

キーライムフェスティバルの公式サイト(英語) → https://keylimefestival.com/


近縁種・間違いやすい品種

「ライムツリー」と呼ばれることのある「リンデン(Tilia spp.)」は、シナノキ属の樹のことです。
柑橘の「ライム」とは関係がありません。

また、同じミカン属に「カフィアライム(Citrus hystrix)」がありますが、これは別種の柑橘果樹です。

一般的な「柑橘ライム」には、2つの種類があります。

  • ライム・メキシカン/ Citrus aurantiifolia
    別名キーライム。
  • ライム・ペルシャン/ Citrus latifolia
    「メキシカン」から生み出されたライム。

「メキシカン」のほうが風味豊かで芳香が強いため、香料やスパイスとしてはこちらがよく使われます。
しかし、生産量が多いのは「ペルシャン」のほうです。

また、その2種類のほかに「スイートライム」と呼ばれるものがあります。

この名前は酸味の少ないライム全般に使われる傾向があり、さらに「ライム」と「レモン」は区別されないことも多いため、「スイートライム」「スイートレモン」という名前があちこちで使われていて混乱を招いています。


そんな中でも一般的には、「スイートライム」といえば以下2種のどちらかを指します。

  • スイートライム・パレスチナ/ Citrus limettioides
    中東、アジア地域などで使用されるスイートライム。
  • リメッタ/ Citrus limetta
    地中海地域で使用されるスイートライム。
リメッタの植物画
‘Citrus limetta’ 1831 by David Dietrich

Lime Persian / ライム・ペルシャン

学名Citrus latifolia (Yu.Tanaka) Yu.Tanaka
科名ミカン科
別名ペルシャライム、タヒチライム
採油法果皮を低温圧搾
精油成分d-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネン、p-シメン、α-ピネン、ゲラニアール、ネラール、α-ベルガモテン
  • 主産地は、メキシコ、ペルー、ハイチ、ブラジルなど。
  • メキシコ産ライム=ライム・メキシカン(Citrus aurantiifolia)というわけではありません。
    メキシコでは、こちらの「ペルシャン」種も栽培されています。
  • まずペルシャ(現在のイラン)で本格的な栽培がはじまり、19世紀にそこからヨーロッパへ広まっていきました。
  • 現在、世界でもっとも広く栽培されているライムです。
  • 樹の高さは6mくらいで、ほとんどトゲがありません。
    「メキシカン」種よりも耐寒性があり、丈夫で育てやすいです。
  • 紫色の花をたくさんつけます。
  • 果実ははじめ緑色で、熟すと黄色に色づきます。
    ただし緑色のうちに収穫されるのがふつうです。
  • 果実は直径6cmくらい。
    「メキシカン」種と比べると、こちらのほうが一回り大きく、果皮にはより厚みがあり、種子の量は少ないです。
  • 芳香、酸味、苦味は、どれも「メキシカン」種より弱くなります。
  • 以上のことから「ペルシャン」種のメリットとしては、丈夫なこと、トゲがなくて扱いやすいこと、果実が大きいこと、種子が少ないことなどが挙げられます。
  • 酸味がマイルドなので料理やドリンクの風味づけには物足りないともいわれますが、この果汁の甘さはココナッツと相性抜群です。
  • タヒチのシーフード料理などで、ココナッツミルクと合わせて使用されます。
  • トロピカルフルーツとの相性もよいため、さまざまなデザートやドリンクにも使われています。
  • ペルシャ料理では、乾燥させたもの(黒ライム)をよく使用します。

Sweet lime Palestinian / スイートライム・パレスチナ

スイートライム・パレスチナ
学名Citrus limettioides Yu.Tanaka
科名ミカン科
別名スイートライム・インディアン、コモンスイートライム、ミタニンブ
採油法果皮を低温圧搾
精油成分d-リモネン、リナロール、ミルセン、シトロネラール、シトロネロール、酢酸リナリル
  • インド原産。
  • 主産地は、北アフリカ、中東、インド、中央アメリカなど。
    ヨーロッパではあまり使われていません。
  • 丸い果実ははじめ緑色で、熟すと黄色に色づきます。
  • ほかの柑橘樹に接ぎ木するための台木としても利用されます。
  • パレスチナをはじめとする中東、アジア地域などで、料理の風味づけやジュースの材料として、果皮と果汁がよく使われています。
  • ジューシーで酸味がないライムですが、それほど甘みが強いというわけではなく、どちらかというと淡白な味。
  • 精油の香りは、ベルガモットに少し似ています。

Limetta / リメッタ

学名Citrus limetta Risso
科名ミカン科
別名スイートライム、スイートレモン
採油法果皮を低温圧搾
精油成分d-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネン、α-ピネン、サビネン
  • 主産地は、地中海地域。
  • 観賞用として庭に植えたりされますが、大規模な栽培はされていません。
  • 小さくて丸い果実。
    はじめ緑色で、熟すと黄色に色づきます。
  • 2~3cmくらいの小さな白い花を咲かせます。
  • 酸味が少なくマイルドな味わいの、ほんのり甘いライムです。
    風味のインパクトは控えめ。
  • イタリアなどで精油が製造されています。
    グリーン、フローラルなニュアンスのある、ライムに似たシトラスノートです。

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