Jasmine
ジャスミン
学名 | ・Jasminum grandiflorum L. ・Jasminum officinale var. grandiflorum (L.) Stokes ・Jasminum officinale f. grandiflorum (L.) Kobuski |
科名 | モクセイ科 |
別名 | オオバナソケイ、スパニッシュジャスミン、ロイヤルジャスミン |
原産地 | ヒマラヤ山脈 |
主産地 | エジプト、インド、モロッコ、イタリア、フランス |
使用部位 | 花 |
主な成分 | 精油 |
採油部位 | 花 |
採油法 | 溶剤抽出 / Jasmine abs. |
採油率 | 花からのコンクリート収率は0.24~0.3%、コンクリートからのアブソリュート収率は45~55% |
性状 | 黄褐色~赤褐色、粘りけがある |
主な成分 | 酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、酢酸フィチル、フィトール、リナロール、cis-ジャスモン、インドール、オイゲノール、ジャスモン酸メチル、アントラニル酸メチル |
香り | フルーティで温かみのある甘いフローラル、かすかにアニマリック |
揮発性 | ミドル~ベース |
香り強度 | 強い |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | 温かみのある芳醇なフローラルで、拡散性と持続性を併せ持つ。 |
主な 使用法 | 香り全体に豪華さや優雅さを与え、なめらかにまとめる。 |
使用量 | 香りが強いので控えめに使用する。 |
注意 | アブソリュートの使用限度量は、香水全体の0.6%まで。 インドールを含むため、紫外線の影響で変色を起こすことがある。 |
ジャスミンは、ローズと並んでもっとも重要な香料植物です。
香料になるジャスミンは2種類ありますが、一般的に「ジャスミン」香料といえば、Jasminum grandiflorumの花から得たものを指します。
ジャスミンの花から、まずは溶剤抽出によって「ジャスミンコンクリート」を得ます。
このコンクリートをアルコール処理したものが「ジャスミンアブソリュート」です。
アブソリュートは産地によって成分が異なり、南仏グラース産のものが最高品質とされています。
とはいえグラース産ジャスミンは生産量が少なくかなり高額なため、一部の高級ブランド以外ではあまり使用されていません。
いまではインドやエジプトからも、高品質なジャスミン香料を得ることができます。
香りの成り立ち
ジャスミンの香りは、さまざまなフローラル要素にフルーティ、スパイシー、バルサミックなどのノートが混ざり合ってできています。
ジャスミンアブソリュートに含まれる成分は250種以上ありますが、主要な香気成分としては以下のものが挙げられます。
このうち安息香酸ベンジルやフィトール、酢酸フィチルなどはとても香りが弱くて目立たないものの、香り全体をまとめて調和させ、持続力を出すのに役立っています。
- 酢酸ベンジル
フレッシュで甘くフルーティなジャスミン様。香りの持続力は弱め。
ジャスミン系香料には不可欠の成分で、フルーツ系フレーバーにもよく使用されます。
天然のリンゴやイチゴにも存在します。- イランイランのほか、ナルシスやヒヤシンス、ジョンキルのアブソリュートに含まれています。
- 安息香酸ベンジル
甘いバルサミックフローラル。香りの強さは、とても弱いです。
フローラルやオリエンタル系の香料に、持続力を出したり全体をまとめたりする目的で使われます。- バルサム・ペルー&トルー、ベンゾイン、イランイラン、カーネーションやナルシス、チュベローズのアブソリュートに含まれています。
- フィトール
バルサミックフローラル、パウダリー。香りは弱い。- マグワートにも含まれています。
- リナロール
穏やかで甘いフレッシュフローラル。ウッディ、スパイシーのニュアンスがあります。
香料のトップノートにナチュラルな印象を与えるほか、フルーツ系フレーバーにも使用されます。- ローズウッド、コリアンダー、マグノリア、ネロリなどに含まれています。
ジャスモン酸メチルとcis-ジャスモンは、ジャスミンの香りに欠かせない重要な成分です。
ジャスモン酸メチルは1957 年に他の成分よりも遅れて発見されましたが、その存在が知られるまではジャスミン独特のフローラルノートを正確に再現することはできませんでした。
- ジャスモン酸メチル
単体でも、甘くフローラルなジャスミンの香り。
フローラル系やシプレ系の香料に使用されます。- ボロニアアブソリュート、タンジーにも含まれています。
- cis-ジャスモン
フルーティ、スパイシーなジャスミン様。強くて拡散性のある香り。
フローラル系香料やフルーツフレーバーに使用され、保留剤にもなります。
そのほか、以下のような微量成分がジャスミンの香りを特徴づけています。
- インドール
高濃度では不快な糞臭、希釈するとジャスミン様フローラル。- ハニーサックルやジョンキル、ナルシス、オレンジフラワーのアブソリュートにも含まれています。
- オイゲノール
温かみのあるスパイシー、ウッディ。薬っぽくて強い香り。
オリエンタル系香料や、フルーツ系、ナッツ系のフレーバーに使用されます。- クローブ、シナモン、カーネーションアブソリュートに含まれています。
- アントラニル酸メチル
フルーティなグレープ様の香り。持続力があります。
グレープフレーバーには不可欠で、ワインやベリー類のフレーバーにも使用されます。- オレンジフラワーアブソリュートに含まれています。
相性のよい香り
- ジャスミンのフローラルアコード、オススメ3パターン。
すべて比率は1:1:1。- ジャスミン+ローズ+イランイラン
芳醇なフローラル。あらゆる香水の基礎になります。 - ジャスミン+ローズ+ネロリ
フェミニン過ぎないフレッシュフローラル。 - ジャスミン+ゼラニウム+ラベンダー
メンズ香水にも使いやすいフローラル。
- ジャスミン+ローズ+イランイラン
- ジャスミンの温かいフローラルノートを引き立ててくれる柑橘系は、オレンジ・スイート。
- ジャスミンの官能性を高めるウッディノートは、サンダルウッド。
- エレガントなメンズフレグランスを作るなら、ベルガモットとオークモスをブレンドすると◎。
- パチュリとレモングラスをブレンドすると、アジアンリゾートっぽい雰囲気になります。
ブレンドテクニック
ジャスミンはあらゆる香調によくなじみ、香りに華やかさや優雅さを与えるため、もっとも頻繁に利用されるフローラルノートの1つです。
- 様々なタイプのフローラルやフローラルブーケ、シトラス、グリーン、オリエンタル、アニマル調、タバコやレザー、アルデヒドなど、あらゆる香調によく調和します。
- まとまりのない荒削りな香りも、ジャスミンを少量加えるとなめらかになります。
- 香りは濃厚で力強く、肌につけると華やかに広がります。
拡散力と持続力を併せ持った、すばらしい香料。 - ジャスミンの香りは、女性用・男性用どちらのフレグランスにも使用されます。
ベルガモットを多量にブレンドすると男性寄りの香りに、ローズを多量にブレンドすると女性寄りの香りになる傾向があります。 - ジャスミンは、シプレタイプを構成する要素の1つです。
シプレタイプの香りは、ベルガモットなどの柑橘系、ローズやジャスミンの豪華なフローラル、オークモス、アンバーを組み合わせて作ります。
合成香料
ジャスミンの香りを再現した合成香料は、天然の花にかなり近いものが作られています。
一般的なフレグランス製品にはこの「ジャスミン香料」が使用され、天然アブソリュートは高級香水などに少量だけ使用されるのがふつうです。
- ジャスミン香の再現
- 中心になるのは、アブソリュートにも含まれている成分(酢酸ベンジル、リナロール、インドール)と、フレッシュなジャスミン調のヘキシルシンナミックアルデヒド。
- さらにアンスラニル酸メチルやオイゲノールのほか、さまざまな香料を使ってフルーティ、グリーン、バルサミック、アニマルノートなどがニュアンス付けされます。
- ブレンドされる可能性のある天然香料は、イランイラン、カモミール・ローマン、セロリシード。
- ジャスミン調の香りを持つ合成香料は数多くあります。
- アブソリュートに含まれているジャスモン酸メチルとcis-ジャスモンは、単体でも利用されます。
- 特に有名なのはHedione(へディオン)で、1960年に誕生して以来、数多くの香水に配合されるようになりました。
使用されている香水
ジャスミンの香りは、ほとんどすべての香水に含まれているといってもよいでしょう。
その中でもとくに以下の香水は、ジャスミンを中心に組み立てられています。
- Jasmin De Corse/ジャスマン ドゥ コルス(Coty、1906)
クラシックなジャスミンのファンタジーブーケ。 - No 5(Chanel、1921)
世界一高価な香水にするために、大量のジャスミンを入れるようにシャネルが頼んだという伝説の香水。
グラースで育てたジャスミンとローズを使用しています。
ベースノートは、マイソール産のサンダルウッド、ベチバー・ブルボンなど。 - Joy/ジョイ(Jean Patou、1930)
「世界で最も高価な香水」というキャッチフレーズで知られる、ジャスミンが主役のぜいたくな香水。
通常では考えられない量のグラース産ジャスミン&ローズを使って「ジョイ(喜び)」と名付けたこの香水で、世界大恐慌で破綻した顧客を励ましたといわれています。 - A La Nuit/ア ラ ニュイ(Serge Lutens、2000)
インドやエジプト、モロッコなどいろいろな種類のジャスミンをミックスした、深く濃厚なジャスミンの香り。
香調は温かみのあるアンバーフローラルで、ハニー、ベンゾイン、クローブが組み合わせてあります。 - Eclat de Jasmin/エクラ ドゥ ジャスマン(Giorgio Armani、2007)
早朝に集めた芳醇な香りのエジプトジャスミンをベースにした、シプレフローラル。
ベルガモット、ブルガリアンローズ、パチュリの華やかなシプレノートと、オスマンサスのフルーティ、タヒチ産ベチバーのウッディが豊かなハーモニーを作ります。 - Grand Bal/グラン バル(Dior、2012)
絢爛豪華な舞踏会の華やかさ、エレガンスを表現した官能的なフレグランス。
グラース産ジャスミンのアブソリュートを贅沢に使っています。 - Jasmin Grandiflorum Extrait 30/ジャスミン グランディフローラム エクストレ 30(Guerlain、2023)
30°Cの低温CO2抽出によるジャスミンを使用した、賦香率30%の高濃度フレグランス。
繊細で美しいジャスミンを、ストロベリーとサンダルウッドが引き立てています。
その他ジャスミンを含む香水
「Quelques Fleurs/ケルク フルール(Houbigant、1913)」
「Jasmin/ジャスミン(Le Galion、1937)」
「Eau de Givenchy/オーデ ジバンシイ(Givenchy、1980)」
「Olene/オレーヌ(Diptyque、1988)」
「Jasmin/ジャスミン(Molinard、2015)」
「Gucci Bloom/グッチ ブルーム(Gucci、2017)」
「Gelsomino/ジャスミン(Santa Maria Novella)」
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香料としての歴史と活用法
東洋ではこれまで何世紀にもわたって、ジャスミンを香料として活用してきました。
古代ローマのディオスコリデスは、ペルシア人が部屋を香らせるために使うジャスミン油のことを記録しています。
これはジャスミンの花をゴマ油に浸けて香りを移したもので、宴会で良い香りを漂わせるためによく利用されていました。
また、古代ギリシアでも軟膏の香り付けにジャスミンが使われていたことがわかっています。
17世紀頃になるとヨーロッパの宮廷花壇や温室でもジャスミンが育てられるようになり、その豊かな香りが香料としても広く利用されるようになります。
まずイギリスでは、ジャスミンの香りをつけた手袋が人気になりました。
手袋屋では、皮を磨いたり香水に使うための「ジャスミンバター」も手袋と一緒に売られていました。
フランスでは、オイル、パウダー、ポマード、芳香水、皮革や手袋、嗅ぎタバコなど、ありとあらゆるものがジャスミンで香りづけされていました。
ジャスミンの用途がいろいろ説明してあります。
- 18世紀フランスで大好評だったジャスミン芳香水のレシピ。
- 日の出直後に摘んだジャスミンの花を瓶いっぱいに詰め、アルコールで満たす。
そのまま6週間置き、花をとりのぞいて、濁りが消えるか沈殿するまで放置する。
この方法で花の芳香をアルコールにすべて移す。
- 日の出直後に摘んだジャスミンの花を瓶いっぱいに詰め、アルコールで満たす。
- マリー・アントワネットの香水や化粧水、軟膏などにもジャスミンはふんだんに使用されており、とくに出産後のヘアケア剤では主要な成分になっていました。
- 毎朝髪を梳いたあとに振りかけるヘアオイルは、ジャスミン、バイオレット、ナルシスの香り。
- 夜に使うヘアケアポマードには、豚脂、ミツロウ、アーモンドオイル、ジャスミンアブソリュートなどが配合されていました。
これは髪の成長を促すためのものだったようですが、これを使うとジャスミンの心地よい芳香が目覚めまで続いたそうです。
この頃(18世紀)には、すでにアンフルラージュ法(冷浸法)がグラースで行われていました。
アンフルラージュ法は熱を加えないため、素晴らしい香りのジャスミン香料を高収率(溶剤抽出の2~2.5倍!)で得ることができます。
ただしこの方法は手作業が多く時間も経費もかさむため、いまでは有機溶剤を使った抽出法に取って代わられています。
ジャスミンのポプリ
ローズやラベンダーなど、香りの良い花をミックスしてポプリを作るととても華やか!
オレンジフラワーやガーデニアなど、甘い香りの白い花だけを集めるのも素敵です。
タイム、ミント、バジル、ローズマリーなど、ハーブをふんだんに混ぜても良いし、オレンジピール、シナモン、ナツメグ、クローブなど、スパイスをアクセントにしても良いです。
エキゾチックなポプリにするなら、サンダルウッドやアガーウッドなどの木片、フランキンセンスなどの樹脂をひいたもの、バニラビーンズ、イランイランやパチュリ精油もミックスします。
いずれの場合も、ジャスミンアブソリュートの豊かな香りでゴージャスに仕上げます!
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 鎮静、高揚、鎮痛、鎮痙、抗炎症、収れん、通経、神経バランス調整、ホルモンバランス調整 |
適用 | 落ち込み、緊張、自信喪失、PMS、皮膚再生サポート |
注意 | アブソリュートは皮膚感作の可能性あり。 妊娠中は使用しない。 |
アロマテラピーでは主にJasminum grandiflorumのアブソリュートを使用しますが、Jasminum sambacも同様に使用できます。
主な使用目的はその豊かで甘い香りにあり、芳香浴や手作り香水などに利用されることが多いです。
皮膚感作の可能性があるため、肌に使用するのは避けるか、ほんの少量をたまに使う程度に留めたほうが良いでしょう。
精神のために役立てる
ジャスミンの甘い香りは、冷えた心を温め、喜びと幸福感で包み込んでくれます。
「リラックスさせながら高揚させる」という相反する力を併せ持っているため、安心感も得たいし気持ちも盛り上げたい!というようなときにぴったりです。
- 心が暗く沈み込んでいて、焦りや苛立ちよりも「落ち込み」のほうが強いとき、または落ち込みと不安が交互に訪れるようなときに特に役立ちます。
- 心を温めて活力を取り戻すためには、ゼラニウムとサンダルウッドをブレンド。
- 不安や恐怖心を克服するには、さらにグレープフルーツかレモンを足します。
- 落ち込んで眠れなかったり頭が痛くなったりするときは、カモミール・ローマンをブレンド。
- ジャスミンは、ロマンティックなムードを作る香りとして定評があります。
芳香浴のほか、アロマバスやアロマトリートメントがおすすめです。- 喜びや愛情、幸せな気持ちを高めるためには、オレンジ・スイートとシナモンをブレンド。
- 安心感と自信をもたらし、積極的に振る舞えるようにするには、ローズオットーとサンダルウッドをブレンド。
- 無意識のうちに抑えてしまう自然な感情・欲求を解放するには、イランイランとサンダルウッドをブレンド。
自信をつけてオープンな精神状態に導くジャスミンは、自分を抑制していたブレーキをはずし、外の世界を遮断していた壁を壊す力があります。
これは新しい感覚を目覚めさせ、創造力を高めることにもつながります。
- 自由な探求・創作をサポートしてくれるのは、クラリセージ、イランイラン、サンダルウッドとのブレンド。
身体のために役立てる
- 身体を温めて、冷たい手足やこわばりをやわらげます。
- 女性特有のトラブルに広く役立ちます。
- 生理関連、PMSには、イランイラン(またはラベンダー)とジンジャーをブレンド。
- 更年期のの不調には、ネロリをブレンド。
- 出産時や産後に使用されることもあります。
- のどが痛い時や声が枯れているときにも◎。
美容のために役立てる
- あらゆるタイプの肌に使えますが、とくに有益なのは乾燥肌と老化肌。
皮膚の生まれ変わりをサポートし、バランスを調整します。- 乾燥肌の保湿には、ラベンダーとゼラニウムをブレンド。
- 肌に弾力を持たせたいときは、ラベンダーとマンダリンをブレンド。
これは傷あとをなめらかにするのにも良いです。
- アジアのスパなどでもよく使用されています。
肌をツヤツヤにして輝きを出すためのスクラブや、髪と地肌をマッサージするためのヘアクリームなどに、ほかの精油やハーブパウダーと一緒に配合されます。
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Herb therapy ハーブセラピー
作用 | 鎮静、高揚、鎮痙、神経バランス調整、ホルモンバランス調整 |
適用 | 緊張、ストレス、自信喪失、PMS |
注意 | ─ |
ハーブセラピーでは、Jasminum grandiflorum、J. sambac、J. officinaleなどのジャスミンの花を使用します。
ちなみに、一般的に「ジャスミンティー」と呼ばれるのはジャスミン・サンバック(J. sambac)の花で香り付けした緑茶などのことで、「ジャスミンのハーブティー(花を熱湯に浸して成分を抽出したお茶=茶剤)」とは異なります。
健康のために役立てる
- 気持ちを和らげるリラックスティーになります。
- 落ち込んでいるときになぐさめてくれるのは、オレンジピール、オレンジフラワー、バニラのブレンド。
- 精神的な面から生じる頭痛、緊張には、カモミールとペパーミントをブレンド。
眠れないときはパッションフラワーも足します。
- 情緒を温め、高揚させ、感受性を高めます。
- 自信やモチベーションを高めるためには、ローズマリーとレモンバームをブレンド。
- 情熱や感性を高めるためには、ハイビスカス、ローズペタル、オレンジフラワーをブレンド。
ハチミツを足しても良いです。
- 女性リズムを整え、PMSをやわらげます。
- ラズベリーリーフとチェストツリーをブレンドして飲みます。
美容のために役立てる
- ハーブティーに布を浸し、湿布として使えます。
- 乾燥肌と老化肌には、カレンデュラ、マシュマロウ、ローズペタルもブレンドします。
- 脂性肌には、ローズマリーをブレンド。
ハーブとしての歴史と伝承
東洋ではジャスミンの花(ときには葉や根も)を薬としてさまざまに活用してきました。
とくにインドでは、ジャスミンのことを「聖林の月光」と呼び、その神聖な花を身体の不調や悩みを癒すために伝統的に利用してきました。
ヒンドゥー教の愛の神カーマは手に弓を持っていますが、その矢じりには香り高いジャスミン油が塗られており、相手のハートを射止めると欲望を起こさせると言われています。
西洋でジャスミンが利用されるようになったのは、17~18世紀頃。
心の曇りを取り除いて精神を明晰にするための芳香水、髪を健康にするためのヘアオイル、喉に関連するトラブルを癒やすシロップなどが作られました。
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Cooking 料理
風味 | フローラルなジャスミンの香り |
主な特徴 | 花をフード・ドリンクの香り付けに使用する |
作り置き | ハニー、シュガー、シロップ |
世界の料理
- インドネシアでは、料理のつけ合わせにジャスミンの花を広く利用します。
- タイでは、ジャスミンをデザートの香り付けにも利用します。
- フォイトーン/Foi Thong
煮詰めた砂糖水に卵黄をくぐらせ、細い糸状にした甘いお菓子。ジャスミンで香り付けをします。
そのまま食べたり、デザートのトッピングに使ったりもします。
- フォイトーン/Foi Thong
- 中国の「ジャスミンティー」は、緑茶などの茶葉をジャスミン・サンバック(Jasminum sambac)で香り付けしたものです。
摘みたてのジャスミンの花を使うため、芳醇で豊かな香りを楽しめます。 - 同じく中国の「工芸茶」は、球状の茶葉をお湯に浸すと中の花が開くようになっているもの。
ジャスミンは、中の花にも香り付けにも利用されます。
アイディア
dessert
- ジャスミンと砂糖を交互に重ねて密閉しておけば、砂糖に香りが移ります。
このジャスミンシュガーは紅茶に入れてもいいし、お菓子作りにも使えます。 - ジャスミンとバニラビーンズをクリームに浸して風味をつける。
このクリームを使ってデザートを作る。 - 同様に、ジェラートやアイスクリームにもジャスミンの風味をつける。
drink
- ジャスミンティーにフルーツのシロップやアルコールを加えて、カクテルを作る。
炭酸水と氷で、爽やかなノンアルコールドリンクにするのも◎。 - ワインにジャスミンを浸して1時間ほど置き、濾してから冷やす。(長く浸けすぎると苦くなるので注意)
ハチミツを足したり、炭酸水で割って飲んでも良いです。
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Gardening 園芸
種類 | 半常緑のつる植物 |
背丈 | 5~10mまで伸びる |
環境 | 温暖な気候と日当たり、水はけの良い土壌 |
STORY
南仏グラースのジャスミンアブソリュートは、最高級の香料として世界中に広く知れわたっています。
この香料の歴史は、16世紀にフランスへ2種類のジャスミンが入ってきたところから始まります。
- Jasminum officinale L.
「コモンジャスミン」と呼ばれる品種。
このジャスミンは東方から伝わり、南仏の山地で野生するようになりました。 - Jasminum grandiflorum L.
このジャスミンは、スペイン経由で入ってきました。
スペインのカタロニアなどで多く栽培されていたため、「スパニッシュジャスミン」と呼ばれるようになりました。
コモンジャスミンは順応性が高く、霜や病気にも強かったため、繊細な種類のジャスミンに接ぎ木するための台木にぴったりでした。
一方のスペインジャスミンは、暖かい地域ではそのまま栽培できますが、冬は冷え込むグラースでは耐寒性を与えるため、コモンジャスミンに接ぎ木されることになりました。
こうして生まれたジャスミンがJasminum officinale var. grandiflorumです。
グラースは香料用ジャスミンの一大産地として有名になり、グラースでただ「花」といえばそれはジャスミンのことを指すようにもなります。
「グラースといえばジャスミン、ジャスミンといえばグラース」という状態は1930年代まで続きますが、やがて人件費や地価が上がるにつれて生産量は減っていき、いまではもうほとんど栽培されていません。
シャネルやディオールは香水に使うジャスミンをいまだにグラースで育てていますが、現代の香料用ジャスミンのほとんどは、エジプトやインドで栽培されています。
姿かたち
- 熱帯~暖帯に分布する、常緑のつる植物。
北国で育てると、毎年落葉します。 - 濃い緑色の小さな葉。
- 夜になると、白い星型の花を咲かせます。
その繊細な花びらは豊かで力強い芳香を放ち、夜半すぎには満開に。
そして午前の半ばになると、香りはほとんど失われてしまいます。 - 開花時期は夏~晩夏。
地域によってズレはありますが、だいたい7~10月頃。
栽培と収穫
- 日がよく当たり、水はけが良い土壌と、ツルを巻きつけながら自由に広がることのできる壁などがある場所でよく育ちます。
- 花が終わったら、必要に応じて剪定します。
- できるだけ夏は暖かく、冬は温和な気候がよいとされています。
暖かくて天候が良いほうが、花も花の香りも収量が増えます。 - 花の収穫は、香りの強い夜間~早朝にかけて行われます。
時間が早すぎると香りは荒々しくなり、かといって遅すぎると成分の蒸散が始まってしまいます。
もっとも香り高く質の良い香調が得られるのは、午前5時~9時頃とされています。 - 香料用のジャスミンは、収穫後すぐに抽出作業に入ることが必要です。
様々な用途
- 愛を象徴する花として、花嫁のブーケや花冠に世界中で使われてきました。
- ジャスミンが身近にある国々では、花をつないでネックレスやブレスレット、髪飾りなどを作り、贈り物にしたり身を飾ったりする習慣があります。
ジャスミンの花は身につけると、体温によってさらに強く香ります。
- エジプトやチュニジアでは、花のシーズンになるとジャスミンの花や首飾りが街のあちこちで売られます。
- トルコでは、ジャスミンの枝をロープの芯や水キセルを作るのにも使っていました。
名前の由来・伝説
- 英語では「Jasmine」、フランス語では「Jasmin」
- ジャスミンという名前は、ペルシャ語の「yasmin/ヤスミン」から来ています。
イランなどでは、女性の一般的な名前です。 - ソケイ(素馨)というのは、中国の伝説の女性の名前。
- 学名の「grandiflorum」は「大きな花の」という意味。
近縁種・間違いやすい品種
ジャスミンの品種は200種以上ありますが、香料として利用されるジャスミンは2種類。
- Jasminum grandiflorum/ジャスミン・グランディフロラム
一般的な香料用ジャスミン。 - Jasminum sambac/ジャスミン・サンバック
香料にもなりますが、お茶に香りをつける用途でも広く利用されます。
サンバックはグランディフロラムより花びらに厚みがあり、よりフレッシュでグリーン感の強い香りが特徴です。
Jasmine sambac/ジャスミン・サンバック
学名 | Jasminum sambac (L.) Aiton |
科名 | モクセイ科 |
別名 | マツリカ(茉莉花)、アラビアンジャスミン |
採油法 | 花を溶剤抽出 / Jasmine sambac abs. |
精油成分 | α-ファルネセン、リナロール、アントラニル酸メチル、酢酸ベンジル、安息香酸メチル、フェニルエチルアルコール、(3Z)-ヘキセン-1-イルベンゾエート、インドール |
香り | 甘くグリーン感のある上品なフローラル、トロピカルな雰囲気もある |
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ジャスミン・サンバックを含む香水
「Ange Ou Demon Le Secret/アンジュ デモン シークレット(Givenchy、2009)」
「Jasmine Sambac & Marigold/ジャスミン サンバック & マリーゴールド(Jo Malone London、2018)」
「Cedre Sambac/シダー サンバック(Hermés、2018)」
「Jasminum Sambac/ジャスミンサンバック(Chloé、2019)」
「Jasmin Kusamono/ジャスミン クサモノ(Giorgio Armani、2020)」
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インドやハワイでは、ジャスミン・サンバックの水蒸留も行われており、その際に「ジャスミン芳香蒸留水」も生産されます。
「ジャスミン」という名前は、本来のジャスミンとは関係のない植物にもよく使われています。
その中でも「マダガスカルジャスミン」という名で呼ばれる「ステファノティス」は、ジャスミンと香りが似ており、香料としても使用される植物です。
といっても、ステファノティスの天然香料というのはなく、花の香りを再現した調合香料が香水などに使われます。
Stephanotis/ステファノティス
学名 | Stephanotis floribunda Brongn. |
科名 | キョウチクトウ科 |
別名 | マダガスカルジャスミン |
香り | チュベローズにも似たフローラル、鋭いスパイシーなニュアンスがある |
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ステファノティスを含む香水
「Stephanotis/ステファノティス(Floris、1786)」
「Wedding Bouquet/ウェディングブーケ(Floris、2011)」
「Love Story/ラブストーリー(Chloé、2014)」
「Tears From The Moon/ティアーズ フロム ザ ムーン(Gucci、2022)」
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