Heliotrope

ヘリオトロープ

植物DATA
学名Heliotropium arborescens L.
syn. Heliotropium peruvianum L.
科名ムラサキ科
別名キダチルリソウ、ニオイムラサキ、コモンヘリオトロープ
原産地ペルー、ボリビア

ヘリオトロープの花は、バニラをたっぷり使ったスイーツとパウダリーなフローラルノートを足したような甘い芳香を持っています。

残念ながら天然香料を抽出することはできませんが、そのすばらしい香りはオリエンタルタイプなどの香水にもよく使用されています。

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Fragrance 香料

ヘリオトロープの天然香料は作られていません。

過去にはアンフルラージュ(冷浸法)による抽出も試されましたがその収率はかなり低く、ほかの抽出法もうまくいきませんでした。

19世紀後半に「ヘリオトロピン(ヘリオトロープの香り)」が使えるようになってからは、この合成香料が香水などに使用されています。

ヘリオトロープの植物画
by Pierre-Joseph Redouté

香りの成り立ち

  • ヘリオトロープの香りは、よく「チェリーパイの香り」と表現されます。
    アーモンド、バニラ、キャラメル、干し草などのニュアンスがある繊細でパウダリーな甘い香りです。
  • ヘリオトロープの芳香成分は、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、酢酸ベンジルなど。
    しかしこれだけではヘリオトロープの香りにはならないため、ほかの微量成分が重要なはたらきをしていると思われます。
    • ベンズアルデヒド
      アーモンドのような薬っぽさのある甘い香り。
    • アニスアルデヒド
      ホーソンやアニスのようなパウダリーで甘い香り。
    • 酢酸ベンジル
      ジャスミンのようなフルーティフローラルノート。
  • 合成香料の「ヘリオトロピン」は、香りがヘリオトロープに似ているためにそう名付けられましたが、ヘリオトロープがこの成分を含んでいるわけではありません。

ブレンドテクニック

  • ヘリオトロープの香りは独特の甘さ、温かさ、フェミニンさを与えるため、フローラルやオリエンタル調の香水によく配合されています。
  • ヘリオトロープ+クマリン(またはトンカビーンズ)+ラベンダーの組み合わせは、ドライで干し草のような香調を作ります。
白と紫のヘリオトロープの絵
by Henry G. Gilbert Nursery and Seed Trade Catalog Collection

合成香料

  • ヘリオトロープの香りを再現した調合香料には、フローラルタイプ、フルーティタイプ、ドライタイプ、パウダリータイプなどさまざまなバリエーションがあります。
  • 一般的なヘリオトロープ調合香料は、以下のように組み立てられます。
    • 基礎構成は、ヘリオトロピン、バニリン、クマリン、微量のベンズアルデヒド
    • そのほかジャスミン、ローズ、リリーオブザバレー、カーネーション、オリスなどのフローラルノート、アニスアルデヒド、ムスクなど。
  • ヘリオトロープ調合香料に使う可能性のある天然香料
    • トップノートに、ベルガモットオレンジ・スイート
    • フローラルノートに、ジャスミンローズチュベローズオレンジフラワーカッシー
    • スパイシーノートに、クローブ
    • 保留剤に、オリスベンゾインバルサム・ペルー/トルートンカビーンズタバコバニラ
女性とヘリオトロープが描かれたポスター
‘Heliotrope Boquet Rag’ 1907 by Scott Joplin, Louis Chauvin (w./m.)

使用されている香水

  • Apres l’Ondee/アプレ ロンデ(Guerlain、1906)
    雨上がりの暖かい庭を表現したロマンティックな香水。
    ヘリオトロープ、バイオレット、オリス、カーネーションなど、パウダリーな花の香りにピリッとしたアニスが効いています。
  • Heliotrope/ヘリオトロープ(Etro、1989)
    ヘリオトロープ、アーモンド、バニラ、トンカビーンズという構成の、クリーミーでパウダリーなヘリオトロープが主役の香水。
  • Trésor/トレゾア(Lancôme、1990)
    ピーチやアプリコットのフルーティノートに、ローズ、ヘリオトロープ、オリスなどのパウダリーなフローラル、アンバー、バニラの温かさを組み合わせた華のある香り。
  • Cuir d’Ange/キュイール ダンジュ(Hermès、2014)
    レザーとムスクの柔らかいノートに、ヘリオトロープ、ホーソンの粉っぽいフローラルを合わせたエレガントな香り。
  • Vaniglia/ヴァニリア(Acqua di Parma、2019)
    ジャスミン・サンバックと組み合わせたバニラに、ヘリオトロープはトップノートとして配置されています。
    ベースノートはシダーウッドとムスク。
  • Rose D’Amalfi/ローズ ダマルフィ(Tom Ford、2022)
    ローズを中心に、トップノートにはベルガモットとピンクペッパー、ベースノートにはヘリオトロープとアーモンドがブレンドされています。

その他ヘリオトロープを含む香水

「L’Heure Bleue/ルール ブルー(Guerlain、1912)」
「Omnia Amethyste/オムニア アメジスト(Bvlgari、2006)」
「Satine/サティーヌ(Lalique、2013)」
「Kiss Me Intense/キスミーアンタンス(Nicolai、2014)」
「Héliotrope du Pérou/ヘリオトロープ デュ ペルー(Officine Universelle Buly)」

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Gardening 園芸

種類常緑多年生の小低木
背丈0.5~1m
環境寒すぎず暑すぎない場所

姿かたち

ヘリオトロープの植物画
‘CHERRY PIE’ 1897 by Edward Step
  • 茎の先にたくさんの小さな花をつけます。
    花色は紫または白で、バニラのような甘い香りを放ちます
  • フリルのような花びらは5つに裂けています。
  • 葉は葉脈が目立ち、茎には毛が生えています。
  • 茎は2年目以降は木質化します。
ヘリオトロープの茎葉
ヘリオトロープの葉

栽培と収穫

  • 寒さに弱いため、冬は室内に入れることが必要です。
  • 極端な暑さも苦手。
  • 花は初夏~夏の終わりにかけて、比較的長いあいだ楽しめます。

様々な用途

  • 中世時代には、花時計やおまじないにも使われていたようです。
    • とくに修道院の庭で、花時計に使われていました。
    • 魔術の一例として、”ヘリオトロープと狼の歯をローレルに包んで持ち歩けば悪口を言われなくなる”というのがあります。
      これで逆に良いことしか耳にしなくなるそうです。
  • 乾燥させてポプリにも使われます。
ヘリオトロープの絵
‘Heliotrope (Heliotropium Peruvianum)’ 1890 by Geo. S. Harris and Sons

名前の由来・伝説

  • 「Heliotrope/ヘリオトロープ」という名前は、ギリシア語の「hēlios(太陽)」と「tropos(回転)」に由来します。
    この花が太陽のほうを向いて咲くと思われていたため。
  • ギリシア神話では、太陽神ヘリオスに叶わぬ恋をした水の精クリュティエが、この花に変身したということになっています。
    (だからいつも太陽のほうを向いている)
  • 香りが似ているので「Cherry pie/チェリーパイ」と呼ばれることもあります。
ヘリオトロープのイラスト
by Pearson Scott Foresman

近縁種・間違いやすい品種

「ヘリオトロープ」にはたくさんの種類がありますが、代表的なのは以下の2種。

  • Heliotropium arborescens/コモンヘリオトロープ、キダチルリソウ
    ペルー原産、多年生。
    もっとも香りの強いヘリオトロープ。
    通常「ヘリオトロープの香り」というときはこの種を指します
  • Heliotropium europaeum/ビッグヘリオトロープ、ヨウシュキダチルリソウ
    ヨーロッパ原産、一年生。
    香りは弱いものの花が大きくて見栄えがするため、鑑賞用によく栽培されます。
    園芸店でよく見るヘリオトロープ。
ビッグヘリオトロープの植物画
Heliotropium europaeum

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