Grapefruit
グレープフルーツ
学名 | Citrus paradisi Macfad. |
科名 | ミカン科 |
別名 | ─ |
原産地 | 西インド諸島 |
主産地 | アメリカ、ブラジル |
使用部位 | 果皮、果実 |
主な成分 | 精油、ビタミンC、カルシウム、カリウム、クエン酸など |
採油部位 | 果皮 |
採油法 | 低温圧搾 |
採油率 | 0.06~0.1% |
性状 | 黄色~いくぶん赤色 |
主な成分 | d-リモネン、β-ミルセン、ヌートカトン、オクタナール、デカナール、ドデカナール、酢酸ゲラニル、チオテルピネオール、トランス-4,5-エポキシ-2E-デセナール |
香り | 爽やかでほろ苦いフレッシュシトラス、甘さ控えめ |
揮発性 | トップノート |
香り強度 | 弱め |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | フレッシュで酸味と苦味を強く感じるビターシトラス |
主な 使用法 | ほかの柑橘類と組み合わせてトップノートに使う。 メンズフレグランス。 |
使用量 | 比較的多量に使用することも多い。(圧搾精油は使用制限あり) |
注意 | 光毒性あり。使用限度量は、香水全体の4%まで。 / Grapefruit oil expressed 酸化、変質しやすい。 |
グレープフルーツ精油は、果皮を低温圧搾(コールドプレス)することで得られます。
精油の分泌腺が果皮の深い部分にあるため、ほかの柑橘類に比べて精油の収量は少ないです。
水蒸気蒸留で抽出したグレープフルーツ精油もありますが、香りの質は落ちます。
また、原料にするグレープフルーツには「ホワイトタイプ」と「ピンクタイプ」があります。
それぞれから抽出した精油には、以下のような特徴があります。
- グレープフルーツ・ホワイト
特有のビターシトラスノートを持つ微量成分(ヌートカトンなど)の割合が多い。 - グレープフルーツ・ピンク
フレッシュなアルデヒド類の割合が多い。
香りの成り立ち
グレープフルーツ精油の85~95%はd-リモネンで、ほかにもβ-ミルセン、α-ピネン、サビネンなどのテルペン類を含んでいます。
テルペン類の量や構成、不安定なγ-テルピネンはほとんど含まないということまでオレンジ精油と共通していますが、これらの成分は香りが弱いためあまり重要ではありません。
- d-リモネン
フレッシュでみずみずしいシトラスの香り。
柑橘やフルーツ系の香料にジューシーで爽やかな印象を与えるためにも使用されます。- オレンジ、レモン、マンダリン、ユズ、ライム、柑橘系以外ではセロリシード、エレミ、ファー、キャラウェイ、ブラックペッパーなどに含まれています。
- β-ミルセン
セロリのようにピリッとスパイシーで軽い、バルサミックな香り。- セロリリーフ、パセリリーフ、ホップ、ローズマリー、フランキンセンスなどに含まれています。
スイートフローラルな酢酸ゲラニルや酢酸ネリル、香りの強いアルデヒド類は、グレープフルーツの大事な芳香成分です。
とくにドデカナールは、グレープフルーツの香りに欠かせません。
- 酢酸ゲラニル
甘いフルーティフローラル。ローズ、ラベンダー様。- イランイラン、パルマローザ、シトロネラ、ローズオットー、ゼラニウムなどにも含まれています。
- オクタナール(アルデヒドC8)、デカナール(アルデヒドC10)
どちらもファッティなオレンジ様の香りで、パクチーのようなニュアンスがあります。
希釈すると柑橘果皮のフレッシュグリーンな香りになり、フローラル系香料やシトラスコロンなどにも使用されます。 - ドデカナール(アルデヒドC12)
シトラス、グリーン、フローラルノートの、ファッティで強い香り。
希釈するとバイオレットやリリー様の香りになり、フローラルやシプレ系の香料に使用されます。
グレープフルーツ特有のビターシトラスノートは、微量成分によって決定づけられています。
最重要のキー成分は「ヌートカトン」です。
その下の2成分も、極微量しか含まれていないにもかかわらず香りへの影響は絶大です。
- ヌートカトン
グレープフルーツ特有の、苦みのあるシトラスの香り。ベチバーのようなウッディニュアンスもあります。 - チオテルピネオール
別名「グレープフルーツメルカプタン」
非常に強いグレープフルーツ様の香り。
トロピカルでエキゾチックな雰囲気のあるフルーティノートをもたらします。 - トランス-4,5-エポキシ-2E-デセナール
グリーン、メタリック、金属的なニュアンスを持つ香り。- 同じ柑橘系では、ユズにも含まれています。
相性のよい香り
- グレープフルーツは、ほかの柑橘精油とさまざまに組み合わせられます。
- グレープフルーツの香りが少し単調で地味に思えるときは、ベルガモットを加えると華やかになります。
- 酸味や苦みをやわらげるには、オレンジかマンダリンで甘さを足します。
- 「爽快」「軽快」「目覚め」などがテーマの香調なら、レモンを合わせるのが1番です。
- トロピカル調の明るいトップノートなら、ライムをブレンド。
- レモングラス、レモンマートル、リトセアなどを少量加えると、シトラスノートを増強できます。
- ラベンダー、ゼラニウム、タイムなどをブレンドすると、メンズライクな香調になります。
- フローラル系でとくに相性が良いのは、ネロリとジャスミン。
- ベースノートで1番相性が良いのはベチバー。
お互いが主張しすぎることなく、やわらかなハーモニーを作ります。 - ピリピリとした感じのあるスパイスとよく合います。
たとえばジンジャー、ブラックペッパー、カルダモンなど。
ブレンドテクニック
- 柑橘類の中でも甘さの少ないグレープフルーツは、爽快なオーデコロンやメンズフレグランスにひんぱんに使用されます。
- ほかにも落ち着いた感じのアーシー、スパイシーな香調、シプレ、フゼア、レザータイプなどのトップノートに使用されます。
- とはいえ、第一印象を決めるトップノートでは華やかさを求められることが多く、たいていは単体よりもほかの柑橘類と組み合わせて使われます。
- まったりとした香りにフレッシュ感を加えたいとき、同時にピリッとしたシャープなメリハリも与えてくれます。
- オレンジやマンダリンなど、甘さの強いシトラスノートの変調剤にもなります。
使用されている香水
- Grapefruit/グレープフルーツ(Jo Malone London、1992)
グレープフルーツにローズマリーやペパーミントを合わせた爽快な香り。
1日の始まりやリフレッシュにぴったりで、ほかの香りとの重ね付けもしやすい香調。 - Aqua Allegoria Pamplelune/アクア アレゴリア パンプルリューヌ(Guerlain、1999)
グレープフルーツの香りを美しく引き立てるために調香されたオードトワレ。
ビターなシトラスノートに、バニラとパチュリのやわらかい香りがさり気なく溶け込んでいます。 - Un Jardin Sur Le Nil/ナイルの庭(Hermès、2005)
ナイル川流域の島々からインスピレーションを得たという、エキゾチックな雰囲気の香り。
トップノートのフレッシュなグレープフルーツには、トロピカルなマンゴー、みずみずしいロータスなどが組み合わされています。 - The Scent Of Peace/セント オブ ピース(BOND NO.9、2006)
NYの9.11の後、世界平和を願って作られた香水です。
爽やかなグレープフルーツ、フローラルなリリーオブザバレー、やさしいムスクがブレンドされた明るい香り。 - Bleu de Chanel/ブルー ドゥ シャネル(Chanel、2010)
上品で洗練されたアロマティックウッディのメンズフレグランス。
グレープフルーツのビターなシトラス+ジンジャーやナツメグなどの温かいスパイス+ベチバーやサンダルウッドの落ち着いたウッディ、という構成。
その他グレープフルーツを含む香水
「Eau de Pamplemousse Rose/オー ドゥ パンプルムス ローズ(Hermès、2009)」
「Grey Vetiver/グレイ ベチバー(Tom Ford、2009)」
「Vetyverio/ヴェチヴェリオ(Diptyque、2010)」
「L’Immensité/リマンシテ(Louis Vuitton、2018)」
「Mugler Cologne Fly Away/ミュグレーコロン フライ アウェイ(Mugler、2018)」
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 緩和、高揚、鎮痛、抗炎症、収れん、消化器系機能調整、バランス調整 |
適用 | ストレス、集中力低下、時差ボケ、体が重い、巡りを良くする、食欲の調整、スポーツ後のボディケア、デオドラント、空気清浄、菌対策 |
注意 | 光毒性あり |
精神のために役立てる
- 溜めこんでしまったもの、積もり積もってしまったものを流し、心を軽くします。
- 不満、批判、否定が渦巻いているときは、ラベンダーとベチバーをブレンド。
- 慢性化した不安、罪悪感には、レモンとローズウッドをブレンド。
- 失望感、自信のなさには、ベルガモットとジャスミンをブレンド。
- 心に元気と活力をもたらします!
- 明るく楽観的な気分を呼び起こすには、オレンジ・スイートとゼラニウムをブレンド。
- 喜び、幸せ、満足感を芽生えさせるには、ベルガモットとイランイランをブレンド。
- 好奇心やモチベーションのスイッチを入れるには、レモンとペパーミントをブレンド。
- リフレッシュ、集中力・記憶力アップなど、ぼんやりした頭をクリアにしたいときにも役立ちます。
- レモン、ローズマリー、カルダモン、マートルなどをブレンドすると良いです。
満たされない気持ちからつい食べすぎてしまうときに
高い理想があり、それと異なる現実なんかは見たくない、もしどうしても見ないといけない状況になったりだれかに現実を突きつけられたりしたら、そこから逃れるために何かにハマりこむ、とくに、満たされなさを食べ物で埋めることで逃れようとする場合。
そんな状況に1番良い精油が、グレープフルーツです。
グレープフルーツは、日頃から抑えつけている欲求、失望、怒りなどを開放してリフレッシュさせ、なんとなく感じている「飢餓感」を自然にやわらげてくれます。
身体のために役立てる
- 溜まったものを流して軽くするという特性は、身体に対してもはたらきます。
バスソルトやトリートメントオイルを作ると良いです。- 溜まった水分を動かす力をサポートするのは、ジュニパーとのブレンド。
- 食べすぎ、飲みすぎには、ジュニパーとローズマリーをブレンド。
- スタイル維持のためには、ジュニパーとブラックペッパーをブレンド。
- 消化器系がバランスよくはたらくようにサポートします。
- 胃腸の調子をととのえるには、レモングラスをブレンド。
- 食欲が出ないときは、オレンジ・スイートをブレンド。
- 食欲を抑えたいときは、パチュリをブレンド。
- PMSや更年期のトラブルをやわらげます。
- PMSには、ゼラニウムとネロリをブレンド。
- 更年期には、クラリセージとローズをブレンド。
美容のために役立てる
- 乾燥肌にも脂性肌にも使えます。
- 乾燥肌は、しっとりと柔らかくするためにカモミールとネロリをブレンド。
- 脂性肌は、収れん・クレンジングのためにゼラニウムとシダーウッドをブレンド。
- 脂っぽい髪のデイリーケアに。
- ゼラニウムとシダーウッド、もしくはパインとローズマリーをブレンドします。
- メンズコスメにもよく使用されます。
- デオドラントスプレーは、ラベンダー、コリアンダー、サイプレスをブレンド。
- アフターシェーブローションは、ライム、イランイラン、サンダルウッドをブレンド。
その他の使い方
- 部屋、キッチン、トイレなどの空気を爽やかに保ちます。
消臭・汚れ落としのためのスプレー、クレンザーを作ると良いです。- 部屋・カーペット用には、ベルガモットとユーカリをブレンド。
- キッチン用には、オレンジ・スイートをブレンド。
- トイレ用には、ペパーミントとレモングラスをブレンド。
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Herb therapy ハーブセラピー
グレープフルーツの果皮を乾燥させてハーブティーなどに使用することもありますが、柑橘果皮をハーブとして利用する場合、一般的にはオレンジやレモンが使われることが多いです。
また、グレープフルーツの果実には、ビタミンC、カルシウム、カリウム、クエン酸などが豊富に含まれています。
美容や健康に役立つ果物としてさまざまに利用されていますが、薬との相互作用には注意が必要です。
Cooking 料理
風味 | 爽やかな苦みを持つ甘酸っぱい柑橘風味 |
主な特徴 | ほかの柑橘類にはない独特のほろ苦さ |
作り置き | ビネガー、オイル、シロップ、アルコール |
グレープフルーツは、生で食べたり果汁をデザートやドリンクに使ったり、世界中でかなり幅広く使用されています。
グレープフルーツピール(果皮)も、ジャムやお菓子作りに使うことができます。
使い方のコツ
- 冷やしたグレープフルーツジュースやサラダは、朝食にぴったり。
- グレープフルーツピールにスパイス(コリアンダー、シナモン、フェンネル、ジュニパーなど)を組み合わせて、ビネガーやシロップを作り置きするのも良いです。
- アルコールの香り付けにもよく使用されます。
- 「グレープフルーツ・リキュール」は、アルコールと砂糖にグレープフルーツピールで風味付けしたリキュール。
- 「グレープフルーツ・ビターズ」は、グレープフルーツピールを原料にしたビターズ。
ビターズ/bitters(苦味酒)というのは、ハーブ・スパイスを蒸留酒に浸け込んで作るアルコール飲料のこと。香りが強くて苦味があるのが特徴です。
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Gardening 園芸
種類 | 常緑小高木 |
背丈 | 高さ5~10m |
環境 | 暑さや寒さにも強いが、涼しく乾燥した気候でよく育つ |
STORY
グレープフルーツは、ポメロ(Citrus maxima)とオレンジ・スイート(C. sinensis)の交配種です。
多くの柑橘類はアジア原産ですが、グレープフルーツはアメリカ大陸で偶然に生まれました。
17世紀、イギリス人船長フィリップ・シャドックによって、カリブ海の島にポメロの種が持ち込まれました。
ポメロは現地で順調に育っていましたが、18世紀にバルバドスで突然変異が発見されます。
これはポメロとオレンジが自然交配してできた果実だったのですが、はじめはそんなことはわからず、18世紀の本に「地元の人々はこの果実をバルバドスの7不思議の1つと考えている」などと書かれています。
しばらくこの交配種とポメロは区別されず、どちらも「シャドック」と呼ばれていました(持ってきた船長の名前)。
そして19世紀前半になって、「グレープフルーツ」という名前がはじめて誕生しました。
姿かたち
- 直径10~15cmほどの、明るい黄色の大きな果実。
- 果実は、グレープの房のようにかたまって木にぶら下がります。
- 白い星型の花は5cmくらいの大きさで、フレッシュフローラルな良い香りがあります。
グレープフルーツの花を香料として使用することはあまりありません。 - 光沢のある深緑色の葉をつけます。
栽培と収穫
- 耐寒性があって暑さにも強く、栽培しやすい柑橘果樹です。
- 涼しくて乾燥した気候が理想です。
- 花は5~6月に咲き、果実は冬~春にかけて収穫されることが多いです。
- アメリカ産のグレープフルーツは、全体の約40%がジュースになります。
購入と保存
- 果皮にピンとしたハリとなめらかなツヤがあり、色鮮やかなものを選びます。
- 持ったときにずっしりと重みがあるものは、果汁がたっぷり含まれています。
- 長期保存するときは冷蔵庫に入れます。
名前の由来・伝説
- 「Grapefruit/グレープフルーツ」という名前は、実のつき方がグレープの房のようだったため。
- 学名の「paradisi」は、「paradise/パラダイス(天国とか楽園という意味)」からきています。
近縁種・間違いやすい品種
「ポメロ(Citrus maxima)」は、ミカン属(Citrus /柑橘類)の原種の1つです。
この原始的な果実が世界に広がっていく過程で数多くの交配が起き、その結果さまざまな種類の柑橘が生まれました。
その代表的なものが「グレープフルーツ(C. paradisi)」です。
ポメロとグレープフルーツは、長いあいだ区別することなく同じ名前で呼ばれていました。
そのため「pomelo/ポメロ」「pamplemousse/パンプルムス」「shaddock/シャドック」などは、現在では「C. maxima」のことを指す名前ですが、昔の文献などではこれと同じ名前が「C. paradisi」に対しても使われています。
(地域によっては今でも)
ポメロ(Citrus maxima)
Pomelo / ポメロ
学名 | ・Citrus maxima (Burm.) Merr. ・Citrus grandis Osbeck |
科名 | ミカン科 |
別名 | パンプルムス、シャドック、ブンタン、ザボン |
採油法 | 果皮を圧搾 |
精油成分 | d-リモネン、y-テルピネン、β-ミルセン、α-ピネン、サビネン、ヌートカトン |
香り | グレープフルーツよりもやわらかい感じの、フレッシュなシトラスノート |
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ポメロを含む香水
「Pomelo/ポメロ(Jo Loves、2011)」
「Pomelo Paradis/ポメロ パラディ(Atelier Cologne、2015)」
「Open Sky/オープン スカイ(Byredo、2021)」
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