Clary sage
クラリセージ
学名 | Salvia sclarea L. |
科名 | シソ科 |
別名 | クラリー、マスカテルセージ、ニオイサルビア、オニサルビア |
原産地 | 地中海沿岸 |
主産地 | フランス、ロシア、モロッコ |
使用部位 | 地上部 |
主な成分 | 精油、コリン、サポニン、タンニン、苦味質 |
採油部位 | 地上部 |
採油法 | 水蒸気蒸留 / Clary sage oil 溶剤抽出 / Clary sage abs. |
採油率 | 0.05~0.15% / oil 地上部からのコンクリート収率は0.6~1.25%、コンクリートからのアブソリュート収率は80% / abs. |
性状 | 淡黄色~黄色 / oil |
主な成分 | 酢酸リナリル、リナロール、ゲルマクレンD、酢酸ゲラニル、α-テルピネオール、β-カリオフィレン、スクラレオール / oil スクラレオール、酢酸リナリル、リナロール、ゲルマクレンD、β-カリオフィレン、α-コパエン、ビシクロゲルマクレン / abs. |
香り | ほろ苦い甘さのあるハーバルグリーン、ほのかにスパイシー 干し草、ナッツ、ムスクのニュアンスもある / oil アンバーグリスを想起させる香り / abs. |
揮発性 | ミドル / oil ベース / abs. |
香り強度 | 中程度 / oil |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | トップ~ミドルに影響を与える、薬っぽさのないハーバルグリーン / oil 保香性の強いアンバーグリス様 / abs. |
主な 使用法 | ブレンドにグリーンノートやティーノートのアクセントを加える / oil アンバーノート、保留剤 / abs. |
使用量 | 意外と個性が強くて目立ちやすいので、適量を使う。 |
注意 | ─ |
「クラリセージ精油/アブソリュート」の原料になるのは、開花時期のクラリセージです。
水蒸気蒸留で精油を、溶剤抽出でアブソリュートを得ることができます。
クラリセージを溶剤抽出すると、まず明るい緑色のペースト状「コンクリート」が得られます。
これをアルコール処理したものがクラリセージアブソリュートです。
「セージ」の名がつく植物は数多くありますが、香料としていちばんよく使われるのはこのクラリセージです。
香りの成り立ち
クラリセージ精油の成分構成をみてみると、酢酸リナリルとリナロールがその大半を占めていることがわかります。
酢酸リナリルだけでも、全成分の半分以上の割合を占めています。
- 酢酸リナリル
フレッシュで軽く、フルーティーフローラルな甘さのある香り。
フローラル系やシプレ系香水のトップノートによく使われます。- プチグレン、ラベンダー、ベルガモットなどに多く含まれます。
これらのシトラス系やラベンダーと、クラリセージはよく調和します。
- プチグレン、ラベンダー、ベルガモットなどに多く含まれます。
- リナロール
フレッシュで穏やかなフローラル。パウダリー、ウッディなニュアンスも持っています。
香料にナチュラルなトップノートを与えるためによく使用されます。- ローズウッド、ネロリ、ラベンダーなどの他、タイムやバジルなどのハーブにも多く含まれている成分です。
そのほかの微量成分も、クラリセージの香りに大切な影響を与えています。
- 酢酸ゲラニル
甘くフルーティなローズ、ラベンダー様。- パルマローザ、シトロネラ、ローズ、ゼラニウムなどに含まれています。
- α-テルピネオール
シトラス、フローラル、松のような香り。- ライム、マージョラム・スイート、ティートリーなどに含まれています。
- β-カリオフィレン
土っぽさのあるウッディー、スパイシー。- ブラックペッパー、イランイラン、クローブなどに含まれています。
クラリセージの成分を語る上で絶対にはずせないのがスクラレオール。
スクラレオールという名前は、クラリセージの学名(Salvia sclarea)に由来しています。
- スクラレオール
甘いバルサミックな香り。天然アンバーグリスの香りを連想させる貴重な成分です。
揮発性がかなり低いため、蒸留によって得る精油にはわずかしか含まれていませんが、アブソリュートには実に70%前後の割合でスクラレオールが含まれています。
相性のよい香り
- クラリセージととくに相性がよいのは、ラベンダー、ベルガモット、ゼラニウム。
- サイプレス、ジュニパーとも違和感なくよくなじみます。
- ローズ、ジャスミン、イランイラン、カーネーションなど、ゴージャスなフローラル系ともよく合います。
クラリセージはこれらの香りに絶妙なナチュラルグリーンのニュアンスを加えます。 - クラリセージにあわせる柑橘系のオススメは、ベルガモット以外ならライム、レモン。
- ニュアンサーとして使うスパイス系には、コリアンダー、カルダモン。
- クラリセージ+プチグレン+ベチバーの組みあわせは、グリーンウッディなハーモニーをつくります。
ベチバーの量を多くすれば、土っぽさの強いウッディブレンドに。 - サンダルウッドやパチュリとあわせると、重厚な雰囲気のオリエンタルノートになります。
とくにクラリセージアブソリュートはその傾向が強い。
ブレンドテクニック
クラリセージ精油はどちらかというと、単体で完成された香りではなくブレンドすることで生きてくる香りです。
ハーバルグリーンの要素が強いですが、ほかのハーブ系と違ってツンとくる薬っぽいカンファ―臭がありません。
そのため、ブレンドにやわらかなグリーン感をさりげなく加えたいときなどにとても便利な精油です。
香水でも、シプレノートやフゼアノートのニュアンスづけにクラリセージを少量使ったりします。
- フローラルやエキゾチックなど重ための香りに、爽やかなグリーン感を加えたいときに。
- ラベンダー、バジル、マージョラム・スイートなどといっしょに使うと、よりコクのあるハーバルグリーンになります。
- クラリセージは「ラベンダーウォーター(ラベンダー芳香蒸留水に香料を足した昔ながらの化粧水)」にも、爽やかなグリーンノートを加えるためにブレンドされます。
この香りは合成香料を使わずに、精油だけで再現できます。- ラベンダー、ベルガモットをベースに、クラリセージを少量ブレンドします。
- ローズかジャスミンを、目立たないようにほんの少し加えます。
これは、ラベンダーのフローラル感をより際立たせるため。 - 軽めのコロンなどは、以上でOK。
さらにパチュリ、ベチバーを加えると、揮発性がおさえられます。
バジルやタイムなどアロマティックなハーブ系を足すのも◎。
クラリセージ精油には、紅茶のようなニュアンスもあります。
- 紅茶のフレーバーになりそうな香りをあわせてグルマンノートをつくるのも楽しい!
- ベルガモット、オレンジ、ジンジャー、バニラ、オスマンサスなど。
クラリセージ精油は基本的にミドルノートですが、フレッシュなトップノートの要素も持ちあわせています。
ブレンドのトップ~ミドルがうまくなじんでいないときの橋渡しとして利用できます。
- たとえばレモンなどトップノートの中でも特に揮発性の高い精油は、ミドルノートになじみにくいことがあります。
そんな時クラリセージはレモンとミドル精油の両方と結びつき、両者をつなげます。
重厚なオリエンタル系ブレンドなどでは欠かせない「アンバーノート」には、クラリセージアブソリュートを使うことができます。
天然アンバーグリスよりもやわらかい香りですが、保香性は抜群。
- 精油だけでオリエンタル調の香りを作りたいときは、以下のブレンドを試してみましょう。
- まずクラリセージ+サンダルウッド+ローズの3種類で基本の香りをつくる。
- そこにバニラを多めに加える。
- 深みを出すため、少量のスパイスを加える。
シナモンかクローブが◎。 - あとは好みに合わせてベルガモット、ラベンダー、フランキンセンス、ベチバー、パチュリなどを加えてもOK。
合成香料
- 合成香料の「アンブロキサン(ambroxan)」は、スクラレオールから合成されます。
アンブロキサンは、天然アンバーグリスの主要な香気成分です。 - アンブロキサンは、シプレやオリエンタル、フローラル、アルデヒドなど様々なノートによくなじみ、香りに奥行きを与えます。
ベースノートの成分や保留剤として、多量に配合している香水も数多くあります。
使用されている香水
- Equipage/エキパージュ(Hermès、1970)
エルメス初のメンズフレグランス。
落ち着いたウッディノートをベースに、クラリセージなどのフレッシュなアロマティックノート、ナツメグやカーネーションのピリッとしたスパイシーノートをアクセントにした香り。 - Patou pour Homme/パトゥプールオム(Patou、1980)
クラリセージ、バジル、ラベンダー、タラゴンなどアロマティックな香りがたっぷり。
ベースノートのレザーが全体を渋く引き締めています。 - Zino/ズィノ(Davidoff、1986)
ローズ、ジャスミン、リリーオブザバレーのフローラルブーケがエレガントな香水。
クラリセージはベルガモットと一緒に、フレッシュなトップノートを構成しています。
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香料としての歴史と活用法
クラリセージが香料として使われるようになったきっかけは、その香りがワインの風味をよくするということがわかり、アルコールのフレーバーとして評判になったことでした。
その後、クラリセージに含まれるスクラレオールからアンブロキサンが合成できるようになると、需要は一気に高まります。
現在クラリセージは、香水や石けん、洗剤、化粧品などの香料として幅広く使用されています。
- スクラレオールとその酸化生成物であるスクラレオリドは、タバコ香料としても重要です。
- 葉や花は、伝統的にポプリにも使用されます。
花が咲いている時期の全草は、香りも強くて見た目も豪華!
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 鎮静、鎮痙、神経・ホルモンバランス調整、収れん、制汗、制吐、通経 |
適用 | 多幸感を得る、PMS、生理不順、更年期の症状 |
注意 | 妊娠中は使用しない。 エストロゲン様作用あり。 アルコール類と併用すると悪酔いすることがあるので注意。 アブソリュートは皮膚感作性。 |
アロマテラピーでは、水蒸気蒸留で採取した「クラリセージ精油」を使用します。
「セージ」という植物が持つ力をアロマテラピーで利用したいときは、セージ(Salvia officinalis)よりもクラリセージのほうが好んで使われます。
それはセージ精油にはツヨンが多く含まれているため一般的な使用には向いていないからで、クラリセージなら通常の量であれば作用もやさしく、一般的な利用にも適しているからです。
ただしクラリセージを多量に使用したりアルコールと併用したりすると、頭痛や吐き気を起こす場合があります。
クラリセージは鎮静力が強い精油なので、集中が必要なときや車を運転する前などは使わないようにしましょう。
精神のために役立てる
- クラリセージは、依存(その対象が何であれ)から抜け出そうとしているときに、力になってくれる精油です。
クラリセージの香りは、かるい陶酔感と幸福感を与えます。
これは、焦りや不安、無力感、罪悪感などからくるしつこい執着を断ち切るのに大いに役に立ちます。- マージョラム・スイート、ローズをブレンドするとより効果的です。
孤独感があるなら、ベチバーも少し足します。
- マージョラム・スイート、ローズをブレンドするとより効果的です。
- クラリセージは、鎮静させると同時に、弱っている精神を元気づけます。
そうすることによって気持ちを安定させ、バランスの取れた視点でものごとを見れるようにしてくれます。
パニック状態や優柔不断になっているときに◎。
- クラリセージは心身をゆるやかに落ち着かせながらも、感覚を刺激し、鋭く研ぎ澄ませます。
これはひらめきや直感、インスピレーションが流れこんでくるための理想的な状態。
創造的な仕事をする人や芸術家にオススメ!- 明晰さを増し、頭をバッチリ冴えた状態にしたいときは、レモンとローズマリーをブレンドしましょう。
- 静かな瞑想に浸りたいなら、サイプレス、シダーウッド・バージニア、フランキンセンスのどれかをブレンド。
目の前の霧をとり払ってくれる精油
身体のために役立てる
クラリセージにはホルモンバランスを調整する作用があり、女性特有の症状にもっともよく使われる精油です。
- PMSには、アロマバスやアロマトリートメントが適しています。
トリートメントオイルは手のひらで温めて、腰のまわりや下腹部に塗ります。
温湿布も効果的。- サイプレス、カモミール・ローマン、ゼラニウム、ラベンダーの中から、どれか選んでブレンドするとよいです。
- 出産時に香りで心身をくつろがせたり、産後のケアに使ったりすることもあります。
クラリセージは身体全体のバランスを整え、強く健康になるようにはたらきかけます。
とくに消化器系・呼吸器系と相性がよく、偏ったバランスを正常に戻します。
- 胃腸が過敏になったりガスが溜まったりしているときは、キャリアオイルにまぜて胃腸のあたりを円を描くようにゆっくりマッサージします。
- ブレンドする精油は、ベルガモット、ローズマリー、バジル。
- 呼吸器系にも、バランス調整の力を発揮します。
- 粘液が溜まって苦しい時やのどの炎症には、ユーカリ、パインをあわせます。
- ストレスや緊張が原因になっている頭痛、偏頭痛、胃痛、筋肉のこわばりを和らげます。
- ラベンダーとブレンドして部屋で焚いたり、痛む場所をやさしくマッサージします。
美容のために役立てる
- 肌タイプを選ばず使えますが、とくに乾燥肌と老化肌の保湿にオススメ。
フェイスオイルに加えてもいいし、スプレーを持ち歩いていつでもシュッとできれば、肌に潤いと輝きを取り戻せます。- ブレンドに選べる精油はたくさんあります!
イランイラン、オレンジ・スイート、ジャスミン、ゼラニウム、ネロリ、プチグレン、ラベンダー、ローズ、ローズマリーなど。
気分もよくなる好きな香りを選びましょう! - 炎症があるときは、カモミールをブレンド。
- ブレンドに選べる精油はたくさんあります!
- デオドラントにも有益です。
- 更年期の過度の発汗には、サイプレスとブレンドして入浴します。
- ヘアケアに使うと、髪の成長をサポートします。
過剰な皮脂を抑える作用もあるので、脂っぽい髪をさっぱりとさせ、フケをなくします。- シダーウッド、ローズマリーをブレンド。
クラリセージの芳香蒸留水は、紅茶のような香りがあります。
香りも作用も精油よりマイルドなので、たっぷりと使うことができます。
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Herb therapy ハーブセラピー
作用 | 鎮静、収れん、制汗、駆風、鎮痙、通経 |
適用 | 緊張性頭痛、PMS、更年期の症状 |
注意 | ─ |
クラリセージの種子は、伝統的に目の洗浄に使われてきました。
浸出液やティーをつくるためには花や葉が使われますが、あまり一般的ではありません。
健康のために役立てる
- 緊張をほぐすハーブティーには、味や香りのよいハーブをブレンドします。
- 気分を高めるためには、スペアミント、レモンバーベナ、オレンジフラワーをブレンド。
ハチミツを入れてもOK! - 緊張からくる頭痛には、ラベンダー、ローズマリー、ペパーミントをブレンド。
- 眠りのためのティーなら、ホップ、カモミールをブレンド。
- 気分を高めるためには、スペアミント、レモンバーベナ、オレンジフラワーをブレンド。
- 葉の浸出液は、うがい剤にしたり、すり傷や切り傷の洗浄剤として使ったりします。
美容のために役立てる
- クラリセージの浸剤は、肌を引き締めてツヤを出す化粧水として使えます。
摘んだばかりの葉と花を熱湯に入れて浸剤をつくり、冷めたら濾して使います。
ハーブとしての歴史と伝承
クラリセージは「clear eye」という通称からもわかるとおり、目の症状に用いられてきた長い歴史があります。
- クラリセージの種子を水に浸けると、まわりがネバネバとしたゼリー状になります。
それを、ゴミや塵など眼の中の異物を取り除くために使用しました。 - クラリセージは実際に眼の中をきれいにする洗浄剤として使われていましたが、「視界をよくする」「目にかかった膜を取り除く」ハーブとして、現実が見えていない人や先の見通しが立たなくなってしまった人などを助けるために使われることもありました。
Cooking 料理
風味 | 味は温かく、芳香があり、わずかな苦味がある。 |
主な特徴 | アルコールにマスカットのような風味をつける。 |
クラリセージをアルコールに加えるようになったそもそもの始まりは、ドイツのワイン業者が安いマスカットワインに風味をつけるため、クラリセージとエルダーフラワーを組みあわせて香りづけに利用したことでした。
それ以来クラリセージはアルコールの風味づけに使われるようになり、イギリスではホップの代わりにビールの醸造に使用されることもありました。
中世の頃はクラリセージの葉を料理に使うこともあり、とくに卵料理の風味づけによく使われていたようです。
アイディア
現代ではクラリセージを料理に使うことはあまりありませんが、中世の使用法も参考にすると、以下のようなアイディアが考えられます。
food
- 葉をこまかく刻んでオムレツに入れる、または炒り卵とクリームといっしょに炒める。
- 葉をフリッターにして料理に添える。
- ほかのハーブ・スパイス(タイム、ローレル、クローブ、コリアンダーなど)と一緒に、野菜のピクルスに加える。
- 葉をスープに加えて、風味をつける。
drink
- 紅茶やハーブティー(ペパーミント、レモンバーム、エルダーフラワーなど)の茶葉に、葉を加える。
冷やしてソーダで割ったり、ハチミツを加えるのも◎!
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Gardening 園芸
種類 | 二年生 |
背丈 | 自生しているものは40cm~1m。 栽培だと1.6mまで生長する。 |
環境 | 軽く水はけがよい土、若干の日陰も可 |
STORY
クラリセージは、数ある「セージ」の仲間内でも異彩を放つ、ちょっと特別なセージです。
とくに香料としての役割が大きく、天然アンバーグリスのかわりになる貴重な成分を含んでいるということで商業的にも広く栽培されています。
クラリセージは、南ヨーロッパ、北アフリカに自生している植物です。
最大の産地となっているのは、南フランスからクリミア半島までの地域。
中国やアメリカでも生産されていますが、アメリカで栽培されているクラリセージは、主に合成アンバーグリスの原料となるスクラレオールを採取するためのものです。
しかし、クラリセージの香りは合成技術が発達したおかげではじめて価値が認められたわけではありません。
香料としてのクラリセージの歴史は、ワインにマスカット風味をつけるフレーバーというところからスタートします。
この使い道にいちばん最初に気がついたのは、16世紀ドイツのワイン業者でした。
あまり出来の良くないワインにもすてきなマスカットの風味がつくということで、良い香りと幸せな気分を与えてくれる(ただし度を越さないように気をつけることができるなら)植物として、クラリセージはたちまち評判になりました。
またクラリセージは、長いあいだ眼のトラブルに使用されてきたハーブでもあります。
「Clear eye」という愛称で呼ばれ、人々の眼の中をきれいに保ち、さらにはそのクリアな眼で世界を見ることができるよう精神的にも導いてくれると信じられていました。
いまでもその神秘的な力は、アロマテラピーの分野などで役立てられています。
姿かたち
- 深い緑色の大きな葉は、ベルベットのような感触。
たくさんのシワがあり、やわらかい毛で覆われています。 - 赤みがかったかたい茎は、角張っていて、枝分かれしながらまっすぐに伸びます。
葉が生えるのは茎の半分くらいの高さまで。
葉も茎も表面に腺毛があり、精油をたっぷり蓄えています。 - 花の色は、白、うす紫、ピンク、青などいろいろ。
苞葉(つぼみを包んでいた葉)も同じような色に色づきます。 - 花は穂状にたくさんつき、花と苞葉にも腺毛があります。
腺毛はとくに新しい部分(先端)に多く、撫でると苦いムスクのような香りを放出させます。 - 花のあと、種子ができます。小さい種子が4個かたまってつきます。
栽培と収穫
- 耐寒性は高いですが、冬の寒さが厳しい地域では、雨や風が当たらないなるだけ暖かい場所に植える必要があります。
- 日あたりのよい砂質の土壌や、乾燥した石灰質の土壌を好みます。
野生では、高度1000mまでの地域に分布しています。 - 春に種を播いて、わりとかんたんに育ちます。
花茎ができるのは2年目。夏に開花します。 - 葉や花の収穫は、夏~晩夏にかけておこないます。
花が咲いている時期がいちばん香りが強いです。
名前の由来・伝説
- 「Clary/クラリー」という名前は、ラテン語の「clarus/クラルス(澄んだ、明るい、清浄な)」に由来します。
これはクラリセージの種子が、眼から異物を取り除くのに使われていたため。 - 「sclarea」という種小名は、「clarus」から派生したという説と、ギリシャ語の「スケリア(固い)」からきているという説があります。
- クラリセージは、視界を明るくハッキリさせるという作用から「澄んだ目」という意味の「clear eye」「see brith」などと呼ばれることもあります。
- ときどき「マスカテルセージ」「マスカットセージ」という呼び方をされるのは、昔マスカットワインの風味づけに使われていたから。