Citron
シトロン
学名 | Citrus medica L. |
科名 | ミカン科 |
別名 | セドラ、チェドロ |
原産地 | インドのヒマラヤ東部~北部 |
主産地 | イタリア、フランス |
使用部位 | 果皮 |
採油部位 | 果皮 |
採油法 | 低温圧搾 |
主な成分 | d-リモネン、β-ピネン、γ-テルピネン、ゲラニアール、ネラール、リナロール、α-ピネン、シトロネロール、ゲラニオール |
香り | レモン様のフレッシュなシトラスノート、ピリッとしたスパイシー、甘いフローラルニュアンスがある |
揮発性 | トップノート |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | フローラル、スパイシーニュアンスのあるフレッシュシトラス |
主な 使用法 | オーデコロン、香水のトップノート |
使用量 | 他の柑橘と組み合わせて適量使う。 |
注意 | 光毒性あり。酸化、変質しやすい。 |
シトロン精油は、ほかのシトラスノートと合わせてオーデコロンによく配合されるほか、化粧品などの香料にも使用されています。
香りの成り立ち
シトロン精油は、d-リモネンを70%前後含みます。
d-リモネンを中心としたテルペン類とシトラール(ゲラニアール+ネラール)の組み合わせで香りが構成されているのは、レモン精油とよく似ています。
それに加えてシトロンには、穏やかなフローラルノートを持つアルコール類が含まれています。
たとえば、リナロール(ウッディスパイシーニュアンスのあるラベンダー様フローラル)、シトロネロールやゲラニオール(甘いローズ様フローラル)などです。
使用されている香水
- L’Homme Cologne Cedrat/セドラ オム オードトワレ(L’Occitane、2016)
コルシカ島のダイナミックな自然の中で育ったオーガニックシトロンの精油を使用。
シトロン、ミント、アクアティックの涼しいそよ風のようなブレンドに、ベースノートのスパイシーウッディが落ち着きを与えています。 - Chloé Eau de Parfum Naturelle/クロエ オードパルファム ナチュレル(Chloé、2021)
ローズを中心にしたフローラルブーケを、シトロン&ブラックカラントのフレッシュフルーティな香りが引き立てています。ラストはミモザアブソリュート。 - Cyprès Pantelleria/シプレー パンテレリア(Giorgio Armani、2021)
地中海に浮かぶパンテレリア島からインスピレーションを受けたフレグランス。
きらめくシトロンに、サイプレス、クラリセージ、オークモスが組み合わされたシプレタイプの香り。 - Terre d’Hermes Eau Givree/テール ドゥ エルメス オー ジヴレー(Hermès、2022)
シトロン、ジュニパーベリー、ティムールペッパーの、フレッシュで力強いハーモニー。
爽やかさと活力をバランスよく演出したいときにピッタリのメンズフレグランスです。
その他シトロンを含む香水
「Eau de Fleurs de Cedrat/オーデフルール セドラ(Guerlain、1920)」
「Cédrat/セドラ(Roger & Gallet、2007)」
「Chance Eau Fraiche/チャンス オー フレッシュ(Chanel、2007)」
「1921(Gucci、2021)」
「Pacific Chill/パシフィック チル(Louis Vuitton、2023)」
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香料としての歴史と活用法
シトロンの果皮は、古代ローマ、ペルシア、中国、アジアなどさまざまな地域で、芳香剤として利用されてきた歴史があります。
衣服のあいだに置いておくと良い香りがつくうえに虫よけにもなるということで、この方法はいまでもサシェなどのかたちで使われています。
ほかにも部屋、ファブリック、紙類に香りをつけたり、現代では車の消臭・芳香剤などの材料としても幅広く活用されています。
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 高揚、刺激、鎮静、鎮痙、抗炎症、収れん、消化器系機能調整、消臭、防虫 |
適用 | 集中力アップ、心身の疲労、食欲がない、巡りを良くする、空気清浄、菌対策 |
注意 | 光毒性あり |
アロマテラピーに使用する精油としては、あまり一般的ではありません。
落ち込んだ気持ちを明るくしたり、集中力アップ、食欲アップ、消化器系サポート、空気清浄など、レモンと同じようなはたらきが期待できます。
Herb therapy ハーブセラピー
ハーブとしての歴史と伝承
シトロンは、古代ギリシアやローマの時代から、胃腸や心臓のために利用されていたことが記録されています。
この頃は、毒を消すためにシトロン果汁をワインに混ぜて使ったり、酢で煮たシトロン・ミョウバン・ミルラをいっしょにすりつぶしたものを痛風の湿布にしたりもしていました。
また、シトロンは防虫のために使われてきた長い歴史があります。
人々はシトロンの果皮を衣類のあいだに置き、虫を寄せつけない+服に良い香りをつけるという二重の目的を叶えていました。
17世紀になると、「シトロン・トニック」というものが登場します。
これは、胃腸を健康にしたり心を軽くしたりするのに役立つと考えられていました。
シトロン・トニックの作り方
①シトロンの果皮に蒸留酒を注ぎ、フタをして12日間太陽の熱で温める。
②蒸留酒を濾し、砂糖漬けのシトロンをこまかく刻んで加える。
③今度はフタをせずに20日間太陽に当て、濾す。
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Cooking 料理
風味 | 爽やかでほろ苦い柑橘風味 |
主な特徴 | 主に分厚い果皮を利用する |
作り置き | ビネガー、オイル、シロップ、アルコール |
古代ローマ人は、シトロンを料理に活用していました。
この時代の本に、シトロンの果皮をミントとフェンネルといっしょに刻んで肉汁に混ぜる、というソースが載っています。
16~18世紀のレシピ本にも、オレンジやレモンなどの柑橘類とともに、シトロンの調理法がいくつも掲載されています。
パネットーネのポスター
使い方のコツ
- シトロンの分厚い果皮は、砂糖漬けにもっとも適するとされています。
- 半分に切って果肉を取り除き、そのままのかたちで使うこともあるしサイコロ状にカットすることもあります。
- シロップで煮る→冷ますを繰り返し、時間をかけて砂糖漬けにします。
- 焼き菓子やアイスクリームなど、さまざまなデザートの材料として使われます。
- 果皮はピクルスにしたり、ジャム作りにも使えます。
- 果皮の外側の黄色い部分は、香りが強くて苦みがあります。
ビネガーやソース、オイル、アルコールなどに香りをつけるときに役立ちます。- シトロンで風味をつけたオリーブオイルは、魚やシーフードと相性◎。
これは調理オイル、マリネ、ドレッシングなどに活用することができます。 - シナモンやクローブなどのスパイスといっしょに蒸留酒に浸け込みます。
これにシロップを加えて炭酸水で割ったり、いろいろなドリンクにアレンジもできます。
- シトロンで風味をつけたオリーブオイルは、魚やシーフードと相性◎。
- 果皮の内側の白い部分には甘みがあり、食材として食べることもできます。
うすくスライスしてサラダに加えたりすると良いです。 - 果汁は酸っぱくて苦味があり、ドリンクの材料によく使われます。
世界の料理
- カニストレリ/Canistrelli
コルシカ島の伝統菓子。
栗粉を使ったビスケットで、シトロンピール(果皮)がよく混ぜられます。
- シュトレン/Stollen
ドイツでクリスマス時期に食べる、伝統的な焼き菓子。
シトロンピール、ドライフルーツ、ナッツなどが入っていて、表面に粉砂糖がまぶしてあります。
- パネットーネ/Panettone
イタリアのミラノで作られる、クリスマスの焼き菓子。
シトロンの砂糖漬け、オレンジピール、レーズンを生地に混ぜて焼きます。
- セドラータ/Cedrata
イタリアでポピュラーなシトロン・ソーダ。 - セドラティン/Cedratine
コルシカ島で作られる伝統的なシトロン・リキュール。
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Gardening 園芸
種類 | 常緑低木 |
背丈 | 高さ2~5m |
環境 | 日当たりがよく、温暖な気候 |
STORY
シトロンは、ミカン属(Citrus /柑橘類)の原種の1つです。
ミカン属は異なる種同士でも受粉が可能であり、人間の移動や貿易によってほかの柑橘に出会うと必ずといってよいほど異種交配が起きるため、柑橘果樹の種類は膨大で、その区別も複雑です。
しかし商業的に栽培されているものはほぼすべて、①シトロン(Citrus medica)、②マンダリン(C. reticulata)、③ポメロ(C. maxima)のどれかを祖先に持ちます。(またはその掛け合わせ)
シトロンは、ヨーロッパに最初に持ち込まれた柑橘類です。
シトロンはもともとヒマラヤ山脈の麓に野生しており、それが長い歴史の中でだんだん西へと伝わっていきました。
紀元前4世紀には、ペルシアとメディア(現在のイラン)の土地にすっかり順応していました。
(この土地でシトロンを見たギリシア人は、この果実のことを「メディアのリンゴ」と呼びました)
その後さらに西へと運ばれ、地中海地域で盛んに栽培されるようになります。
シトロンはレモンの原種に当たり、9世紀にレモンやオレンジが入ってくるまではヨーロッパで栽培される唯一の柑橘果実でした。
姿かたち
- 果実の大きさはさまざまなバリエーションがありますが、大きいものだと長さ25cmにもなります。
- 中果皮(果皮の裏側の白い部分)がかなり分厚いため、果実の大きさは巨大でも果肉の部分はほんのちょっとしかありません。
- 若い果実は深い緑色をしていますが、熟すにつれて金色がかった鮮やかな黄色へ変化します。
(緑から黄色に変わるまでは3ヵ月くらい) - デコボコした果皮には精油がたっぷりと含まれていて、強い香りを放ちます。
- 白~薄紫色の花も、強い芳香を放ちます。
- 濃い緑色の大きな葉も良い香り。
枝には鋭いトゲがあります。
栽培と収穫
- シトロンは、たっぷりの日光と水、温暖な気候でよく育ちます。
- 霜、厳しい寒さ、冷たい風、高温、極端な乾燥には耐えられません。
- 1年を通して花が咲き、実がなります。
- 果実は冬に熟しますが、1年のうちいつ収穫しても果皮にはたっぷり精油が含まれています。
- シトロンの生産地としては、南フランスのコルシカ島が有名です。
このシトロンは「Citrus medica var. corsican」です。
名前の由来・伝説
- 学名の「medica」は、ギリシア人がこの果実を発見した土地「Media/メディア」からきています。
- フランス語では、この果実のことを「cédrat/セドラ」と呼びます。
フランス語で「citron/シトロン」という名前は、レモン(Citrus limon)のことを指します。
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