Chamomile Roman
カモミール・ローマン
学名 | ・Chamaemelum nobile (L.) All. ・Anthemis nobilis L. |
科名 | キク科 |
別名 | カミツレ、イングリッシュカモミール、コモンカモミール、ガーデンカモミール |
原産地 | ヨーロッパ、北部アフリカ |
主産地 | フランス、モロッコ、ハンガリー |
使用部位 | 主に花、たまに葉も使用する |
主な成分 | 精油、フラボノイド、クマリン、フェノール酸、粘液質、フラボン配糖体 |
採油部位 | 花 |
採油法 | 水蒸気蒸留 / Chamomile Roman oil 溶剤抽出 / Chamomile Roman concrete |
採油率 | 0.15~0.2% / oil 6.7% / concrete |
性状 | 淡い黄色~黄緑色 / oil 緑色~青緑色、粘りけがある / concrete |
主な成分 | アンゲリカ酸イソブチル、アンゲリカ酸イソアミル、イソブチル酸イソアミル、カンフェン、ボルネオ―ル、α-ピネン、α-テルピネン、カマズレン、ピノカルベオール、α-ツジェン / oil |
香り | ハーバル・アロマティック、アップル様のフルーティフローラル / oil アップル、針葉樹様 / concrete |
揮発性 | ミドルノート |
香り強度 | かなり強い |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | トップ~ミドルノートに影響を与える、強いフルーティフローラル |
主な 使用法 | 単調なフローラルやハーバルなどの香りを変調させる |
使用量 | かなり強い香りなので、ひかえめに使用する |
注意 | ─ |
カモミール・ローマンの精油は、ジャーマン種よりもフローラルで、リンゴのような心地よい香りがします。
液色もジャーマン種のような濃青色ではなく淡い色なので、香料として使いやすいのも特徴です。
ローマン種のカモミールは、花だけでなく葉にも精油が含まれているため(ジャーマン種は花にしか含まれていない)、採油するときに葉もいっしょに蒸留することがあります。
ローマン種の精油のほうが安価なのは、全草を使えるぶん採油できる量が多くなるためです。
香りの成り立ち
カモミール・ローマン精油の主成分は、アンゲリカ酸イソブチル、アンゲリカ酸イソアミルです。
そのほか、アンゲリカ酸のエステル類が多く含まれています。
これらが中心になって、アップル様のフルーティフローラルな香りをつくっています。
- アンゲリカ酸イソブチル
甘さの中にスパイシー、ハーバル、ウッディを感じる香気を持っています。 - アンゲリカ酸イソアミル
フローラルフルーティなカモミールらしい香り。
精油の大部分はエステル類で構成されていますが、含有成分は多岐にわたります。
- カンフェンやボルネオール
スッとする樟脳様の香り成分。 - α-ピネンやα-テルピネン
フレッシュなウッディ調の香り。
相性のよい香り
- カモミール・ローマンとラベンダーの相性は抜群です。
ナチュラルでリラックスした雰囲気をつくりたいときには、間違いのない組みあわせ。 - パチュリ、クラリセージ、オークモスともよくあいます。
カモミールのアロマティックな香りに、コクや深みを出すことができます。 - カモミールのアップル調に柑橘系をブレンドすると、お互いを引き立て合い、フルーティな香りの印象を強めます。
とくにレモンとの相性がよいです。 - フローラル系だと、シトラスの要素があるものとよくあいます。たとえばゼラニウム、ネロリ、ローズ、パルマローザなど。
- 濃厚なフローラルは、少量足すと甘さに奥行きが出ます。
たとえばイランイラン、ジャスミンなど。 - ハーバルウッディな共通成分を含むため、パイン・スコッチ、マージョラム・スイートとよくなじみます。
ブレンドテクニック
- どちらかというと香りのメインになるよりも、ほかの香りを引き立たせる脇役として使われることが多いです。
- 脇役として使う場合は少量、またはアルコールなどでうすめて加えます。
香りが強く出すぎてメインの香りをかき消してしまわないように、ひかえめに使いましょう。 - 少量加えれば、トップノートの香りに深みを与えて変調させます。
- パワフルで拡散性がある香りですが、それほど持続力はありません。
ベースノートの香りを足して、バランスをとります。
使用されている香水
- Aromatics Elixir/アロマティック エリクシール(Clinique、1971)
ベースノートにオークモスとパチュリを使った、伝統的なシプレフローラル。
アロマティックノートには、カモミール、レモンバーベナ、クラリセージを使っています。 - Calvin/カルバン(Calvin Klein、1981)
カモミールのアロマティックな香りをトップノートに効かせたメンズフレグランス。
柑橘系やネロリ、パチュリ、ウッディーで組まれています。 - Mémoire d’une Odeur/メモワール デュヌ オドゥール(Gucci、2019)
カモミール・ローマンと透明感のあるミネラルアコードをあわせた、ユニセックスな香水。
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香料としての歴史と活用法
カモミールにはリンゴのような甘い香りがあるため、昔からポプリやサシェの材料としてよく利用されてきました。
カモミール・ローマンの精油も数滴加えれば、リンゴの香りがより際立ちます。
- ポプリには、さまざまな種類のハーブやスパイスをあわせましょう。
使った植物の精油があれば加えます。- ローズ、バイオレット、ヘリオトロープなどの花
カラフルで華やかなポプリに! - タイム、ローズマリーなど香りのよいハーブ
ナチュラル感や爽やかさが増します。 - シナモンスティックやクローブなどのスパイス
香りに奥深さを与えます。
パウダー状のスパイスなら、精油をしみこませて加えると保留剤の役割を果たします。 - 柑橘系の果皮
香りも見た目も明るくなります!
- ローズ、バイオレット、ヘリオトロープなどの花
- 眠りのためのサシェは、平べったいかたちにして枕カバーの下に入れます。
- ホップ、ラベンダー
ブレンドするなら、カモミールと同じように眠りを誘うハーブを。
- ホップ、ラベンダー
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 鎮静、鎮痙、鎮痛、抗炎症、鎮痒、駆風 |
適用 | イライラ、安眠、胃腸ケア |
注意 | キク科アレルギーの人は使用しない。 |
カモミール・ローマンの精油は、鎮静・鎮痙作用が特にすぐれています。
これは含有成分の大部分を占める、アンゲリカ酸のエステル類による作用です。
一方、抗炎症作用、とくに皮膚に対しての作用はカモミール・ジャーマンのほうがすぐれています。
炎症を抑えたいときやスキンケアには、ジャーマン種を使ったほうが効果的です。
精神のために役立てる
カモミール・ローマンの香りは、不安、焦り、ショックなど、気持ちを落ち着かせたいときにはいつでも役立ちます。
眠れないときや、仕事からリラックスタイムへの切り替えスイッチとしてもおすすめです。
脳を休めたいときにはアロマディフューザーを、体の緊張をとりたいときにはアロマバスやボディトリートメントを行いましょう。
- カモミールの温かい香りは、精神のおおらかさと安心感をもたらします。
- ラベンダーかローズをブレンドすると、鎮静作用が高まります。
- マンダリンとのブレンドは、子どもを落ち着かせたり寝かしつけるときに有効。
- あまり鎮静作用が強すぎないほうがよい昼間などは、甘さの少ない柑橘系を多めに足すとよいです。
- オレンジ・ビター、ベルガモットなど。
太陽のような温かいパワーを持つ精油
身体のために役立てる
- カモミールの鎮痛作用は、バスオイル、入浴後のアロマトリートメントなどに使用されます。
- 肩こりには、パイン・スコッチ、レモンをブレンド。
- 筋肉痛には、ラベンダーかマージョラム・スイートをブレンド。
- 神経性の消化不良や頭痛をおさえます。
美容のために役立てる
- 乾燥肌や敏感肌のケアに役立ちます。
スイートアーモンドなどのキャリアオイルにまぜ、やさしくマッサージしながらなじませます。- カモミールと同量のネロリをブレンドすると、香りのよいスキンケアオイルができます。
カモミール・ローマンの芳香蒸留水は、香りがよくて使いやすいのが特徴です。
カモミール・ローマンの精油、芳香蒸留水、植物エキスは、化粧品にも配合されています。
Herb therapy ハーブセラピー
作用 | 鎮静、鎮痙、鎮痛、抗炎症、発汗 |
適用 | 安眠、消化不良、月経不順 |
注意 | 妊娠中は使用禁止。 キク科アレルギーの人は注意。 |
カモミール・ローマンは、基本的にジャーマン種と同様に使用されます。
ただしジャーマン種のほうが味がよく、また抗炎症作用などもすぐれているため、通常はジャーマン種を使用します。
使い方の詳細は、カモミール・ジャーマンのページにまとめています。
ハーブとしての歴史と伝承
カモミールは紀元前から「万能薬」として役立てられていたことがわかっています。
白い花びらが十分に開き、太陽が真上に来たとき、その力はもっとも強力になるといわれていました。
- 紀元前4世紀のギリシアで、ヒポクラテスがカモミール・ローマンを解熱剤として使っていました。
- 古代ローマでは、花と葉、根をつぶしてつくった錠剤を、月経・排尿の促進、鼓腸、肝臓疾患のために使用していました。
またこれは、どんなヘビの咬み傷にも良いといわれていました。 - 同じく古代ローマで、カモミール・ローマンに2倍の量の酢をあわせたものは、呼吸困難を癒すために使われました。
ヨーロッパの国々では、カモミールは家庭で使うハーブとしていつも身近にあった植物です。
たっぷりの花をモスリンの袋に詰めて熱湯に浸け、この浸剤をさまざまな用途に使っていました。
- リラックスティーとして飲むのはもちろん、神経痛を癒すためにお風呂に入れたり、湿布をつくったりするのにも使っていました。
- 美容のために、顔のスキントニックとしても使いました。
- 髪の色を明るくするための(とくに金髪)リンスとして使いました。
これは古くから知られている利用法です。
カモミール(ローマン・ジャーマンどちらも)は、現在でもよくシャンプーやリンスに配合されています。 - イギリスでは、カモミール・ローマンの根は歯の痛みを抑えると伝えられてきました。
根を直接、痛む歯にあてて使いました。 - ヨーロッパにタバコが持ち込まれる前は、カモミールの乾燥葉をパイプに詰め、喫煙していたこともあったそうです。
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Cooking 料理
カモミール・ローマンは、ジャーマン種と同じように料理に使うことができます。
ただしローマン種はジャーマン種よりも雑味が出やすいため、甘さやフルーティー感が大事なデザートなどには、ジャーマン種を使ったほうがすっきりと仕上がります。
また、ローマン種は花だけでなく葉にも香りがありますが、葉はとくに雑味が出やすいため、料理に使用する場合は取り除いたほうがよいでしょう。
料理への活用法の詳細は、カモミール・ジャーマンのページにまとめています。
Gardening 園芸
種類 | 多年草 |
背丈 | 15~30cm |
環境 | 日あたりのよい場所と水はけのよい土、乾燥した砂地を好む |
STORY
古代エジプト人は、カモミールを「聖なる花」として、儀式や祈りに用いていました。
丸く明るい黄色のまわりを花びらが放射線状にかこむ形状は太陽のイメージと重ねられ、太陽神ラーに捧げる花として大切にされていたのです。
また、万能薬としての評判も高いものでした。
古代ローマ人も、春にはカモミールの花を摘み、花輪を編んだり薬をつくったりしていました。
紀元前1224年に死亡したRamses2世のミイラは、カモミール・ローマンが主成分として使われていたことがわかっています。
ヨーロッパでは、カモミール・ローマンで浸剤を作ったり、香りを楽しんだりしてきた長い歴史があります。
16世紀ごろのイギリスでは、摘んだばかりのカモミールを敷石や床の上にばらまいたり、カモミールで香りの芝生やベンチをつくることが流行しました。
人々はその上を歩いたり座ったりして、ほのかに漂うリンゴの香りを楽しんだのです。
カモミールは「踏まれても立ち上がり、踏まれるほどによく育つ」という習性をもつため、「忍耐を教える花」としても知られています。
姿かたち
- 花の大きさは3cmくらいで、リンゴのような甘い香りがします。
黄色い円錐状の中心部を、白い花びら(舌状花)がかこんでいます。 - 葉は灰色がかった緑色で、たくさんの裂片に分かれています。
すりつぶすとリンゴのような香りを放ちます。 - 葉や茎には、毛が多く生えています。
カモミール・ローマンとジャーマンの違い
- カモミール・ローマンは多年草であり、カモミール・ジャーマンは一年草です。
- ローマン種は、ジャーマン種よりも花が若干大きいです。
- ローマン種の花床(中央の黄色い部分)はつまっていますが、ジャーマン種は空洞になっています。
- ローマン種は葉にもリンゴの香りがありますが、ジャーマン種の葉にはありません。
栽培と収穫
- 晩春に種をまき、夏から秋にかけて開花します。
夏の終わりに収穫します。 - 日あたりのよい場所が望ましいですが、多少の日陰なら大丈夫。
- ほとんど土壌を選びません。
肥えた土がよいですが、窒素が多すぎると花がつきません。 - 根づくまでは、水枯れさせないように注意します。
- 弱った植物の近くにカモミールを植えると元気が戻り、再び強く育つようになると昔からいわれてきました。
カモミールにはほかの植物を癒す力があり、よく「植物の医者」とよばれます。
購入と保存
- 4~5日くらいの保存なら、キッチンペーパーなどに包んでフタつき容器に入れ、冷蔵庫へ入れます。
- 花を乾燥して保存すれば、一年中使えます。
- 乾燥するときは、香りの揮発をできるだけ少なくするために、温度が高くなりすぎないように注意しましょう。
様々な用途
- 葉にも香りがあるため、昔から香りの芝生としても人気です。
「踏みつけるほどよく育つ」といわれるほど生命力が強いため、足で踏んで地面を這うように成長させたり、短く刈り込んだりして、芝生のように育てます。 - 野生の草花をあつめた、素朴な花束にも欠かせません。
- カラフルなハーブ(カレンデュラ、ボリジ、ラベンダーなど)や、爽やかな香りのハーブ(レモンバーム、ローズマリー、ミント類など)をあわせましょう。
名前の由来・伝説
- 学名の「Chamaemelum」は、ギリシア語の「kamai(大地の)」と「melon(リンゴ)」の組みあわせである「chamaimelon/カマイメロン」からきています。
花と葉に、強いリンゴの香りがあることからつけられた名前です。 - 古い学名の「Anthemis」は、ギリシア語の「anthos(花)」に由来します。
- 「nobilis」は、ラテン語で「高貴な」を意味します。
古代、カモミールが価値のある植物として崇められていたことがわかります。
近縁種・間違いやすい品種
「カモミール」として一般的によく知られ、よく栽培されるのは、ローマン種、ジャーマン種、ダイヤーズ種です。
香料やハーブとして使うにはローマン・ジャーマン種、染料にするためにはダイヤーズ種が育てられます。
Dyer’s chamomile/ダイヤーズカモミール
学名 | ・Cota tinctoria (L.) J.Gay ・Anthemis tinctoria L. |
科名 | キク科 |
別名 | コウヤカミツレ |
採油法 | 花と葉を水蒸気蒸留 |
精油成分 | キュベノール、ゲルマクレンD、ゲルマクレンD-4-オール、グアイオール、β-カリオフィレン、イソレーデン、δ-カジナ-1,4-ジエン、α-カジノ―ル |
香り | 刺激のある香り |
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「カモミール精油」は、主にローマン・ジャーマン種から採取されます。
その2種類ほど広くは使われないものの、モロッカン種、ケープ種からも精油が採取されます。
Chamomile Moroccan/カモミール・モロッカン
学名 | ・Cladanthus mixtus (L.) Chevall. ・Ormenis mixta Dumort. ・Chamaemelum mixtum (L.) All. |
科名 | キク科 |
別名 | ワイルドカモミール |
採油法 | 花を水蒸気蒸留 |
精油成分 | サントリナアルコール、α-ピネン、ゲルマクレン、ピノカルベオール、ビサボレン、ヨモギアルコール、アルテミシアアルコール、酢酸ボルニル |
香り | 甘い干し草のようなニュアンスのハーバル |
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Chamomile Cape/カモミール・ケープ
学名 | Eriocephalus punctulatus DC. |
科名 | キク科 |
別名 | カモミール・アフリカン |
採油法 | 花を水蒸気蒸留 |
精油成分 | 2-メチルブチル2-メチルプロパノアート、酢酸リナリル、2-メチルプロピル2-メチルプロパノアート、2-メチルブチル3-メチルブタノアート |
香り | 甘いアップル様フルーティ |
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園芸品種
ダブルフラワーカモミール
学名 | Chamaemelum nobile (L.) All. ‘Flore Pleno’ |
別名 | フローレ・プレノ |
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ノンフラワーカモミール
学名 | Chamaemelum nobile (L.) All. ‘Treneague’ |
別名 | トレニーグ |
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