Artichoke

アーティチョーク

植物DATA
学名Cynara scolymus L.
科名キク科
別名チョウセンアザミ、グローブ・アーティチョーク
原産地北アフリカ、地中海沿岸
主産地イタリア、エジプト、スペイン
使用部位葉、根、つぼみ
主な成分フェノール酸(クロロゲン酸、シナリン、カフェ酸)、苦味質(シナロピクリン)、フラボノイド配糖体(スコリモサイド)、フィトステロール(タラキサステロール) / leaf

アーティチョークは「すべての野菜の中でもっとも美味しい」といわれることもあり、その豊かな風味とクリーミーな食感は、さまざまな料理に独特の味わいを与えてくれます。

一方で、うろこに覆われた見た目のインパクトと、一体どこを食べていいのやらよくわからない不思議さによって、なかなかミステリアスな存在でもあります。

個性的でめずらしい植物を栽培してみたいなら、アーティチョークはぴったり!
葉を使ってお茶をつくれば、健康にも役立ちます。

香料 | アロマテラピー | ハーブ | 料理 | 園芸

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Herb therapy ハーブセラピー

作用強肝、利胆
適用消化不良、食欲不振、肝臓ケア
注意キク科アレルギーの人は注意。

アーティチョークをハーブとして使うときには、主にが用いられます。
をいっしょに使うこともあります。
これは、アーティチョークの成分であるシナリンシナロピクリンが、に多く含まれるため。

ハーブティーやチンキをつくって飲むのが一般的です。

アーティチョークの葉
ハーブティーに使われるアーティチョークの葉


一方、つぼみにはカリウムイヌリンが豊富です。
食材として食べるか、スムージーにして飲むとよいでしょう。

料理でつぼみを茹でたら、茹で汁を濾して飲むこともできます。
これは葉や根より苦みが少なく、飲みやすいお茶になります。

健康のために役立てる

  • 肝臓のはたらきを助け、胆汁の分泌をうながします
    • ダンディライオンをブレンドすると香ばしい味になり、肝臓ケアの力もアップします。
    • ジンジャースペアミントとのブレンドは、飲みすぎた翌朝のドリンクにぴったり。
  • 苦み成分が味蕾を刺激し、唾液や胃酸の分泌をうながします
    • ペパーミントフェンネルシナモンオレンジピールなどをブレンドすると胃腸ケアの力が増し、香りもよくなります。
    • カモミールマロウブルーをブレンドすると胃の炎症をやわらげ、味はまろやかになります。
      見た目も華やかに!

美容のために役立てる

  • スタイル維持のために飲むお茶として理想的です。
    • 燃焼スパイス(ジンジャーシナモンなど)、巡りをよくするマテローズマリーをブレンドするとさらに◎。
  • つぼみのお茶は、体内の水分バランスを調節したり腸内環境を整えたりするのに役立ちます。

ハーブティー

淹れ方ドライリーフ小さじ山盛り1杯に熱湯200ml。
フタをして5~10分。
液色ベージュ
風味苦み、えぐみ
  • 飲みやすくするには、甘さを足そうとするよりも、爽やかで強い香りのハーブをプラスしたほうがうまくいきます。
  • ピリッと風味豊かなスパイスをあわせるのもオススメです。
  • レモン果汁を足してもよいです。

ハーブとしての歴史と伝承

  • ギリシア・ローマ時代から、アーティチョーク(当時はカルドン)は、肝臓のはたらきを助ける目的で利用されていました。
  • また、アーティチョークの根を水で煮たものは、胃や子宮に良いとされていました。
  • 中世になると、アーティチョークは男女の魅力を増長させ、奥手な人を大胆にする力があるという評判が広まりました。

Cooking 料理

風味ほのかな苦味と甘み、クリーミーでホクホクした食感
主な特徴主にイタリア料理の食材として、さまざまにアレンジされる

アーティチョークは、野菜の中でもっとも美味しいものの1つといわれています。

ギリシア・ローマの時代から、美食家はアーティチョーク(当時はカルドン)のつぼみと茎を、茹でたり焼いたりして好んで食べていました。

古代ローマでは「アーティチョークがなくて困る」ということがないように、ラセルの根(残念ながらいまでは絶滅。ガーリックで代用される)とクミンを加え、ハチミツを溶かした酢に漬けて貯蔵していました。

食べるのに少し手間はかかりますが、美味しくて栄養が高く、カロリーは低いというすばらしい食材です。
とくにヨーロッパやアメリカで人気があります。

アーティチョークの絵画
“Still life with artichokes in a silver gilt wine cistern and other silver objects” 1647 by Alexander Adriaenssen

使い方のコツ

  • つぼみ上部は食べられるところがないので切り落とします。
    苞片(つぼみを覆ううろこのようなもの)についたトゲは、ハサミでカットします。
  • つぼみの中心部は「ハート」とよばれ、やわらかくていちばん美味しい部分です。
    ハート上部のけばだった部分は「チョーク」とよばれ、食べられないので取りのぞきます。(ここは花になる部分)
  • 茎は、やわらかい芯の部分が食べられます。
アーティチョークの断面図
A…苞片
B…チョーク
C…ハート

茹でてそのまま食べる

  • 鍋の水に塩とレモン汁を入れ、上部をカットしたつぼみを20~30分茹でます。
  • 茹でたつぼみは苞片を1枚ずつはがし、下の肉厚な部分を歯でしごくようにして食べます。


料理の食材として使う

  • 料理の食材としてアーティチョークを使う場合は、まず下処理をします。

アーティチョークの下処理

  1. つぼみ上部を切り落とす。
  2. 外側のかたい苞葉をとりのぞく。
  3. 茎のつけ根のかたいガクの部分は、包丁で削ぐようにむく。
    茎は厚めに皮をむく。
  4. チョークをスプーンなどでくり抜く。
  • 下処理したアーティチョークは、一口大に切り分けたり、薄くスライス(縦に)して使ってもよいです。
  • そのままのかたちで、チョークをくり抜いた部分に詰め物をして調理することもあります。
  • 下処理したあとは、変色を防ぐために使う直前までレモン水につけておきましょう。

相性のよい食材

  • ガーリックオリーブオイル
    煮込み料理やオーブン料理、マリネなど、さまざまな料理に使います。
  • イタリアンパセリミントタイム
    イタリアでは、アーティチョークの風味づけにカラミント(「メントゥッチャ」とよばれている)を使いますが、ふつうのミントで代用OK。
  • レモン汁マヨネーズパルメザンチーズ
    これらを使ったディップソースをつけて食べるとおいしい!
  • ブラックオリーブレモンピールパルミジャーノ・レッジャーノ
    アーティチョーク料理におすすめのトッピング。

世界の料理

  • イタリア料理の食材としてよく使われます
    茹でたアーティチョークは、前菜としてもよく出されます。
  • アーティチョークのオイル漬け
    イタリアでは、家庭でつくる保存食。
    下処理したアーティチョークを煮たり茹でたりして、小さいものはそのまま、大きいものは一口大にカットします。
    オリーブオイルを注いで瓶詰めに。
  • カルチョーフィ・アッラ・ロマーナ
    「アーティチョークのローマ風」という意味。
    ローマの歴史ある郷土料理です。
    アーティチョークにみじん切りのカラミントとガーリック、塩コショウをまぶし、オリーブオイルと水で蒸し煮したもの。
  • チナール
    アーティチョークを使った、ワインベースのリキュール。
    名前は、アーティチョークの学名「Cynara/チナーラ」からつけられました。
    味はほろ苦く、食前酒としてよく飲まれます。

アイディア

food

  • うすくスライスして、サラダに入れる。
  • 茹でたての熱々のつぼみに溶かしバターやディップソースの器を添えて、苞片やハートを浸して食べる。
  • フリットや素揚げにして、塩をかけて食べる。
  • 炭火で時間をかけてじっくり焼き、ステーキに添える。
  • チョークをくり抜いた部分や苞片のあいだに、ひき肉、アンチョビ、ハーブ、チーズ、パン粉などを詰めて煮込む。
  • ガーリックやタマネギといっしょに炒めたあとチキンブイヨンを加えて煮込み、スープやリゾットにする。
  • カットしたほかの野菜やキノコといっしょに、塩コショウ、みじん切りハーブ、オリーブオイルをまぶし、オーブンで焼く。
    チーズとパセリをかけて食べる。

簡単レシピ
<アーティチョークパスタ>

  1. フライパンでたっぷりのバターとオリーブオイルを熱し、みじん切りのガーリックを炒める。
  2. お玉2杯の水、塩、イタリアンパセリ、うす切りにしたアーティチョークを加えて煮る。
  3. 茹でたパスタをあえ、パルミジャーノ、ブラックオリーブを散らす。

drink

  • アーティチョークのスムージーは、カロリーも少なくヘルシー!
    柑橘類やパイナップルなどの甘酸っぱいフルーツ、ナッツ、ジンジャー、レモン汁、ミントなどとあわせてミキサーへ。
  • リキュールの「チナール」は、コーラやレモン果汁とあわせてカクテルをつくるのが人気。

食品フレーバー

  • アーティチョークの葉とそのエキスは、主にアルコール飲料(ビターズやリキュールなど)のフレーバーに使用されます。

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Gardening 園芸

種類多年草
背丈2m
環境日あたりがよく、乾燥した場所。
地中海性気候を好む。

STORY

ーティチョークは古代ギリシア・ローマの時代から、人気の食材であり、貴重なハーブでもありました。

この時代に用いられていたのは、現在食べられているアーティチョークの祖先にあたるカルドン(Cynara cardunculus)で、地中海地域、カナリア諸島、エーゲ海諸島などに野生していました。

現在のアーティチョークは、シチリア島かチュニジアの野生カルドンが進化したものと考えられています。


古代ローマでは「carduus/カルドゥウス」とよばれ重宝されていましたが、その後ローマ帝国が滅びたことにより、調理法や使用法も忘れられていきます。

完全に消え去るのをなんとか防ぐことができたのは、修道院でわずかに栽培が続けられていたおかげです。


そして15世紀になると、フィレンツェのストロッツィ家の紹介によってナポリで本格的な栽培がはじまり、これがアーティチョーク復活のきっかけになります。

アーティチョークは無事人気を取り戻しますが、20世紀初頭には、その人気はいよいよ収拾がつかなくなります。

というのも、シチリアからの移民がアメリカのカリフォルニア州でアーティチョークを栽培するようになり、そこから東部へ出荷されたアーティチョークはマフィアが支配するようになってしまったのです。


これを受けてニューヨーク市長は、アーティチョークの販売・保有の禁止令を出すのですが、「アーティチョーク禁止」などは市民に受け入れられるはずもなく、わずか1週間で解除されてしまいました。



アーティチョークの魅力は、食べて美味しいことだけではありません。

インパクトがあってユニークで美しいそのデザインは、歴史を通して数多くの絵画や調度品のモチーフにもされてきました。

アーティチョークのリトグラフ
“Artichokes” Lithography by Anton Seder

姿かたち

  • ずっしりとした巨大なつぼみは、頑丈なうろこに覆われています。
    そのつぼみが開いて現れるのは、びっくりするくらいに鮮やかな紫色のとげとげしい花!
  • 紫~青紫色の花は直径20cm近くあり、見た目は巨大なアザミのよう。
    実際は数百の管状花があつまってできた頭状花序です。
  • つぼみをがっしりと覆っているトゲの多いうろこのようなものは「苞葉(ひとつひとつは苞片)といいます。
    これは、つぼみを包むように葉が変形した部分。
  • 苞片のやわらかい部分と、つぼみの中心(底)にある「ハート」の部分を食べることができます。
  • 大きな葉の色は、緑がかったグレー。
    鋭い切れ込みがあり、しなやかな皮のような質感。
  • 人の背丈よりも大きく育ち、とがった葉を周囲にめいっぱい広げます。
  • プリニウスは『博物誌』の中で、当時人気だったアーティチョーク(カルドン)のことを、「大地の怪物」とよびました。
    「われわれは獣たちでさえ食べようとしないものを栽培している」といっています。

栽培と収穫

  • 植えつけ、栽培、収穫はすべて手作業で行われます。
  • 夏の盛りから終わりにかけて開花しますが、ほとんどはつぼみのうちに収穫され、食用にされます。
  • 収穫のピークは3月下旬~5月。

購入と保存

  • つぼみはふっくらと丸くて、重いものを選びます。
    苞片のひとつひとつが大きくて締まっているものがよいです。
  • 冷蔵庫で最長1週間保存できます

名前の由来・伝説

  • 学名のCynara/キナーラ」は、ラテン語の「canina/カニナ」に由来します。
    これは苞片についたトゲが、犬の歯(canine)に似ているため。
  • 「アーティチョーク」という名前は、アラビア語の「アルカルチェフ(巨大なアザミ)」からきています。
  • スペインでは「アルカチョーファ」、イタリアでは「カルチョーフィ」とよばれています。

近縁種・間違いやすい品種

キクイモ(Helianthus tuberosus)は「エルサレムアーティチョーク」の別名をもちますが、まったく無関係の植物です。


古代ローマで「carduus/カルドゥウス」とよばれていた植物は主に下記の2種です。

Cardoon/カルドン

カルドンの花
学名Cynara cardunculus L.
科名キク科
  • 現在のアーティチョーク(Cynara scolymus)の原種にあたります。
  • とくに茎が食用として好まれます。

Golden thistle/ゴールデンシスル

ゴールデンシスルの花
ゴールデンシスルの植物画
学名Scolymus hispanicus L.
科名キク科
別名スパニッシュオイスターシスル
  • ギリシア人は「スコリュムス(黄金のアザミ)」とよんでいました。
  • 開花前につぶして圧搾し、その汁を塗ると脱毛症に良いといわれていました。
  • 根を煮たものは、食用にされました。