Palmarosa
パルマローザ
学名 | ・Cymbopogon martini Wats. var. motia Burk. ・Andropogon martini Roxb. var. motia Burk. |
科名 | イネ科 |
別名 | インディアンゼラニウム、ロシャグラス |
原産地 | インド |
主産地 | インド、マダガスカル、インドネシア |
採油部位 | 乾燥させた地上部 |
採油法 | 水蒸気蒸留 |
採油率 | 1~1.2% |
性状 | うすい黄色~黄色 |
主な成分 | ゲラニオール、酢酸ゲラニル、リナロール、t-β-オシメン、β-カリオフィレン、シトラール、ファルネソール、エレモール、β-ミルセン |
香り | ローズやゼラニウム様の甘いフローラル シトラスとハーバルグリーンの爽やかなニュアンスがある |
揮発性 | ミドルノート |
香り強度 | 中程度 |
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Fragrance 香料
香りの 性質 | トップ、ミドル、ベースすべての性質を持ち、ブレンドにフレッシュ感と持続性を同時に与える |
主な 使用法 | ローズノートの補強 |
使用量 | 目的にあわせて調節 |
注意 | ─ |
パルマローザ精油は、花が咲くまえの全草を水蒸気蒸留することによって得られます。
乾燥させると採油率が高くなるため、刈り取ってから1週間ほど乾燥させて蒸留にかけます。
パルマローザのもっとも主要な生産国はインドですが、マダガスカルやセイシェル諸島産のパルマローザは香りがよりソフトで高品質だとされています。
インドネシアのジャワ産パルマローザは、フルーティ―ノートが強いのが特徴です。
香りの成り立ち
パルマローザ精油の主成分はゲラニオールです。
全体の80~90%を占めており、この成分がパルマローザの香りの核になっています。
- ゲラニオール
甘いローズ様のフローラルで、シトラスのニュアンスがあります。
ローズ系の香料をつくるときには必須の成分。ティー、フルーツフレーバーにも使用されます。- ローズやゼラニウムはもちろん、パルマローザと近縁のシトロネラやレモングラス、ほかにもメリッサ、コリアンダーなどに含まれています。
そしてゲラニオールの香りを、同様にフローラル・シトラスの香りを持つ成分が支えています。
- 酢酸ゲラニル
甘いローズ様。ラベンダーやフルーティーなニュアンスがあります。- ゲラニオールと同様、ローズ、ゼラニウム、シトロネラ、レモングラス、メリッサ、コリアンダーなど。そのほかイランイラン、プチグレン、ネロリなどにも含まれています。
- リナロール
軽いフレッシュフローラル。シトラス、ウッディ、スパイシーニュアンスがあります。
トップノートの成分です。- ローズウッド、ネロリ、ラベンダー、ベルガモット、クラリセージなどに含まれています。
- シトラール
フレッシュで爽やかな、強くて鋭いレモンの香り。
トップノートの成分です。- レモンマートル、レモングラス、リトセア、メリッサ、そのほか柑橘系精油にも含まれています。
そのほかにウッディ、スパイシー、グリーンノートの成分が含まれており、パルマローザの香りに深みと重さを与えています。
- ファルネソール
フレッシュなグリーンフローラル。ウッディニュアンスもあります。
持続性にすぐれている成分。- ネロリなどにも含まれています。
- β-カリオフィレン
ドライなスパイシーウッディ。ピリッとした温かい印象。- ブラックペッパー、クローブ、シナモン、ブラックカラントアブソリュートなどにも含まれています。
- β-ミルセン
甘いバルサム様。スパイシー、ウッディなニュアンスがあります。- ベイ、ジュニパー、マスティック、アンジェリカルートなどに含まれています。
相性のよい香り
- とくに相性がよいのは、ローズとサンダルウッド。
パルマローザの長所を最大限に引き出してくれます。 - イランイラン、ネロリ、ラベンダーは複数の共通成分を持つため相性がよいです。
ローズ系以外のフローラル要素がほしいときに◎。 - ジャスミンとブレンドすると、フルーティーなお茶っぽいニュアンスのあるフローラルノートができます。
- パルマローザと同じ系統の香りとしては、ゼラニウム、シトロネラ、レモングラスが挙げられます。
これらとのブレンドは、お互いに単体では出せない複雑さを与え、ほかの香りともなじみやすくなります。 - 柑橘系全般ととても相性がよいです。
なかでもオレンジ・スイート、ベルガモット、レモンは間違いなし! - パルマローザのハーバルグリーンなニュアンスを引き出す精油は、プチグレン、クラリセージ、ローズマリー。
- パルマローザのスパイシーウッディなニュアンスを引き出す精油は、ジュニパー、ローズウッド、パチュリ。
または、ブラックペッパーやジンジャーなどのスパイス。 - パルマローザ+カナンガ+ローズウッド+アミリス+ガイアックウッドの組みあわせは、フローラルウッディな優れたハーモニーをつくります。
これは石けん香料などによく使われています。
ブレンドテクニック
- パルマローザのもっとも一般的な使用法は、ローズやゼラニウムのフローラルノートを補強すること。
- パルマローザは基本的にミドルノートの香りですが、フレッシュなトップノート・持続性に優れたベースノートの成分もすべて持ち合わせています。
そのためブレンドに加えると、トップ~ミドル~ベースのすべてに影響を与えることができます。 - たとえばパルマローザを加えることによって、トップノートにフローラルなボリュームを出したり、重たいベースノートに爽やかな流れをつくったりすることができます。
するとそれぞれがミドルノートとうまくつながり、香りが1つにまとまりやすくなります。
合成香料
パルマローザ精油は香料としてそのまま使用することもありますが、多くの場合、ゲラニオールを製造するための原材料として扱われます。
パルマローザから取り出したゲラニオールは「Geraniol from Palmarosa/ゲラニオールフロムパルマローザ」とよばれ、高品質なゲラニオールとして香水などに使用されています。
しかし現在は安価な全合成ゲラニオールが主流になっているため、パルマローザの需要は減ってきています。
使用されている香水
- Geranium D’Espagne[Spanish Geranium/スパニッシュゼラニウム](Lanvin、1925)
フレッシュなゼラニウムの香り。
中心になっているのは、ゼラニウム、パルマローザ、カーネーション、ペッパーなどのスパイシーフローラル。 - Ciara/シアラ(Revlon、1973)
バニラ、レザー、オポポナックスなどが効いた温かい香り。
イランイランやジャスミンなどのフローラルノートを、パルマローザとローズウッドの組みあわせが引き立てています。 - La Fille de Berlin/ラフィーユドゥベルラン(Serge Lutens、2013)
甘さ控えめなスパイシーローズの、真っ赤な香水。
パルマローザとゼラニウムのグリーンニュアンスと、ハニー、パチュリの重たいノートがローズに深みを出しています。
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香料としての歴史と活用法
パルマローザ精油は安価で大量に手に入るため、ローズ精油の増量剤として使用されてきた歴史があります。
また、天然のゲラニオール供給源としても長いこと重要視されてきました。
もちろんパルマローザ精油そのものも、香料として幅広く利用されます。
たとえば石けん、化粧品、香水のほか、タバコのフレーバーにも使われています。
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Aromatherapy アロマテラピー
作用 | 刺激、鎮静、鎮痙、鎮痛、消炎、解熱、防虫 |
適用 | 菌・真菌・ウイルス対策、消化器系のケア、ストレス、無関心、皮膚の感染症、虫除け |
注意 | まれに皮膚感作の可能性あり |
精神のために役立てる
パルマローザの香りは、レモンのようなさっぱりリフレッシュできる性質と、ローズのようなやさしくいたわる性質の両方を持ち合わせています。
そのため、心が弱っているときや無気力なときには活力を、不安や焦り・苛立ちで心が騒がしいときには安らぎを与え、崩れた心のバランスをとり戻すようにはたらきます。
- 無関心や無気力な状態が続いて、とにかく停滞した雰囲気をスッパリ一掃したいときに。
- 気分を明るく高めるリフレッシュノートをブレンドします。
たとえばグレープフルーツ、レモン、プチグレン、バジル、ローズマリーなど。 - 生き生きとした生命力がほしいときは、ジャスミンをプラス。
- 気分を明るく高めるリフレッシュノートをブレンドします。
- 気持ちが沈み、なにも希望が持てないような感じがするときに。
- 季節的な落ち込みには、クラリセージとジンジャーをブレンドしてトリートメント。
- 喪失感や孤独感には、ネロリかメリッサをブレンド。
- 「こんな自分だから仕方ない」とか「もう何をやってもムダ」とか思うときには、ローズとのブレンドがいちばん。
- 思考や感情が過敏になり、ちょっとしたことでもすぐ傷ついてしまうようなときには、その過剰な熱を冷ましておだやかに落ち着かせてくれます。
- オーバーヒートした思考や感情を鎮めるには、ラベンダー、メリッサ、ネロリをブレンドします。
パルマローザは、嫉妬や苛立ち、不安、束縛などのむずかしい感情をうまく乗り越えるためにも役に立ちます。
ローズウォーターやドライローズバッドもいっしょにアロマポットのボウルに入れたりバスタブに入れたりしてもいいし、香水をつくって持ち歩くのもオススメです。
- 変化を受け入れることや、手放すべきものを手放すことができるように、安心感と順応力の両方をサポートします。
- 不安を鎮めて安心感をより高めるためには、ローズ、イランイラン、オレンジ・スイートをブレンド。
- 変化やあたらしい状況への順応力をより高めるためには、ローズ、ゼラニウム、レモンをブレンド。
喜びや情熱をとりもどすための精油
だれか大切な人との関係性に失望したり拒絶されたりしたあとで、何に対してもあきらめや隔たりを感じ、無関心になっていくことがあります。
心から満足したり感動したりできず、何かに興味を持つこともむずかしい。
そんな状態が続くと、自分に対してさえ冷淡になり、自分の身のまわりにも無頓着になっていきます。
パルマローザは、心に小さな火が灯るのを助けてくれる精油です。
そのやさしい香りで内側から静かに癒し、本来もっていた愛情や輝きが戻るまでそっと寄り添っていてくれます。
そして準備ができたら、その火の温もりや優しさをだれかと交換しあえるように力を貸してくれます。
身体のために役立てる
- パルマローザは、菌やウイルス対策に役立ちます。
- インフルエンザの時期には、ローズマリー、マートルをブレンドして芳香浴。
- のどの痛みや炎症には、ティートリーをブレンドしてアロマスチーム。
- 泌尿器系の感染症には、ラベンダー、ティートリーをブレンドして座浴。
- 消化器系のケアにも役立ちます。
精神的な問題からくるトラブルの場合は、とくに大きな力を発揮します。- 食欲不振には、オレンジ・スイート、ブラックペッパーをブレンド。
- 下痢には、カモミール・ローマンをブレンド。
美容のために役立てる
パルマローザは「バランスを取る」精油です。
過剰なものを減らし、足りないものは補います。
また、動かして排出する力&鎮めて保留する力の両方を持っています。
そのため、スキンケアや皮膚疾患にはとくによく利用されています。
- 肌の水分や皮脂のバランスを整えるため、乾燥肌にも脂性肌にも有益です。混合肌には理想的。
- 乾燥肌には、ローズをブレンド。
- 脂性肌には、プチグレン、イランイランをブレンド。
- 混合肌には、ゼラニウムをブレンド。
- 肌のコンディションを整えると同時に、皮膚の更新・再成長をサポートします。
- 老化肌には、ネロリ、キャロットシードをブレンド。
- 消炎、再成長サポートなどの作用は、皮膚の炎症や感染症全般に広く役立ちます。
- 湿疹、皮膚炎には、カモミール・ジャーマンをブレンド。
- 水虫などの真菌症には、シナモンをブレンド。
- 肌を保湿する一方で、体内に余分に溜まった水分は排出するようにはたらきます。
- 脚のトリートメントには、ジュニパーをブレンドしましょう。
その他の使い方
- 防虫剤、とくに蚊の忌避剤として定評があります。
フローラルなよい香りなので、虫除けのボディスプレーや網戸用スプレーを手づくりするのもオススメです!- ブレンドするとよい精油は、シトロネラ、レモングラス、ラベンダーなど。
パルマローザの芳香蒸留水は、そのまま化粧水やフェイススプレーとして使うことができます。
パルマローザ精油を加えると、よりパワーアップ!
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Herb therapy ハーブセラピー
ハーブとしての歴史と伝承
パルマローザは、インドで伝統的に使用されてきました。
たとえば以下のような使い方をします。
- ドライハーブは、発熱、消化不良、脱毛症などに使用されます。
- ストレスをやわらげるためには、葉を揉んでバスタブに入れ、入浴します。
- 精油は神経痛、リウマチ痛などに使用されます。
Gardening 園芸
種類 | 多年草 |
背丈 | 3m |
環境 | 日あたりのよい場所、水持ちのよい土 |
STORY
パルマローザは、名前にローズが入っていますが「Rose/ローズ(Rosa spp.)」とはまったく関係がなく、地味な見た目の細長い草です。
しかしその草はすばらしい香りを秘めており、指で軽く揉むと、まさにローズのような華やかな香りがパッと広がります。
パルマローザはインドのガンジス河流域、ヒマラヤ地方などに自生しています。
パルマローザ精油の水蒸気蒸留がはじまったのは18世紀。
ボンベイ(現在のムンバイ)から輸出されるこの精油は「インドゼラニウム油」とよばれ、コンスタンチノープル(現在のイスタンブール)やブルガリアでは、ローズオイルの増量に使われることもあったようです。
パルマローザ精油の大部分を占める「ゲラニオール」という成分は、ローズやゼラニウムのような芳香をもつ価値の高い香料として知られています。
そのため合成技術が発展してからは、もっぱらゲラニオールを分離することがパルマローザ生産のいちばんの目的となっていきました。
やがてゲラニオールが植物からの単離を必要とせずに1から合成できるようになると、香料としてのパルマローザの需要は徐々に減っていきます。
しかし心地よい香りを持つパルマローザ精油はアロマテラピーの分野で人気になり、現在も芳香浴やスキンケア、虫除けなどに幅広く利用されています。
姿かたち
- 細長い茎と葉に、芳香があります。
- 茎の先端がフサ状になり、小さい花をつけます。
- 花は成熟するにつれて、白→黄色→濃い赤色へと変化していきます。
栽培と収穫
- インド北部からネパール、パキスタン、アフガニスタンに至る地域に自生しています。
- セイシェル諸島、コモロ諸島、マダガスカルなどでは栽培されています。
- 多年草ですが、地上部は1年で枯れます。
- 日あたりのよい山の斜面や森の開墾地によく生えています。
- 花が咲くまえに収穫し、葉と茎を乾燥させてから蒸留します。
名前の由来・伝説
- 「Palmarosa/パルマローザ」という名前は、「Palm rose(ヤシのローズ)」からきています。
ローズのようなフローラルな香りを持っているため。 - パルマローザは、インドでは「Rosha/ロシャ」「Rosha grass/ロシャグラス」と呼ばれています。
近縁種・間違いやすい品種
Cymbopogon属の植物は、パルマローザのほかにレモングラスとシトロネラがあります。
- C. martini (パルマローザ)
- C. citratus / C. flexuosus (レモングラス)
- C. nardus (シトロネラ)
この3種は、植物の姿や香り、成分構成など多くの点で似たところがあります。
また、「Cymbopogon martini」にはmotia種とsofia種の2種類があります。
- C. martini var. motia (パルマローザ)
「motia/モティア」は、真珠という意味。 - C. martini var. sofia (ジンジャーグラス)
「sofia/ソフィア」は、安いという意味。
この2種は同じ植物からの変種ですが、名前も香りもまったく異なります。
それぞれ生育に適した環境や高度も異なり、精油はmotia種(パルマローザ)のほうが高品質だとされています。
Ginger grass/ジンジャーグラス
学名 | ・Cymbopogon martini Wats. var. sofia Gupta ・Andropogon martini Roxb. var. sofia Gupta |
科名 | イネ科 |
採油法 | 地上部を水蒸気蒸留 |
精油成分 | d-リモネン、p-メンタ-1(7),8-ジエン-2-オール、p-メンタ-2,8-ジエン-1-オール、p-メンタジエノール、カルボン、(E)-カルベオール |
香り | ドライなウッディローズ調、シトラス、スパイシー |
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